p_f のコメント

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ロシアや中国といった他の世界的大国とは異なり、米国は、カーターが提案したように、ハマスに統治の機会を与えるというアイデアを決して受け入れなかった。それどころか、どの米国政府もハマスとの関わりを拒否し、ハマスをテロ組織と見做しながら、パレスチナの政党を完全に無視し、ガザ内で続いている状況に対する解決策を打ち出すことはなかった。実際、米国政府は、ヨルダン川西岸地区を部分的に支配しているファタハの主流派支部を除いて、パレスチナの主要な政党や運動を全てテロ組織と見做している。

オスロ合意の最初の合意である原則宣言は、30年以上前にホワイトハウスの芝生の上で署名された。この合意は5年間で紛争を解決するはずだったが、米国が真に中立的な和平仲介者として機能しなかったために失敗した。ドナルド・トランプ米大統領の政権時代、ワシントンはアラブ諸国とイスラエルとの間の正常化協定の推進を通じて、二国家解決を完全に放棄した。国連が二国家解決によって解決すべきと合意しているパレスチナ国家問題は、重要視されず、パレスチナ人が持つ唯一の交渉材料であるアラブ・イスラエル正常化は議題から外され始めた。

2018年、パレスチナの政党は国交正常化にどう対応したのか。彼らは圧倒的に非暴力闘争を選択し、ガザではハマスが「帰還大行進」を支持した。抗議者の大半は平和的だったが、ニュースになったのは、国境フェンスで破壊行為や反イスラエル的な攻撃を行ったパレスチナ人の比較的小さなグループだった。これに対し、イスラエル軍は数百人のパレスチナ人を殺害し、1万人近くを負傷させた。デモに関する国連の人権報告書によれば、イスラエル側では、兵士や民間人の死者は一人もいなかったが、イスラエル軍の狙撃兵は女性、子ども、ジャーナリスト、障害者、医療従事者を標的にした。何十万人もの非武装のパレスチナ人デモ隊が、ガザとイスラエルの間の分離フェンスに向かって行進したとき、米国はどう反応しただろうか?米国は彼らのことは無視して、アラブ・イスラエルの正常化を追求し続けた。

バイデン政権下では、二国間解決も二の次にされ、パレスチナ人の苦境は取るに足らないものとして無視された。この2年間、特にヨルダン川西岸地区で、過去20年間では見られなかったレベルにまで着実にエスカレートしている暴力の解決策を模索する代わりに、バイデンはよそ見をし、代わりにサウジアラビアとイスラエルの正常化を追求することを選んだ。サウジアラビアとイスラエルの間の協定は、今年初めに中国が仲介したイランとサウジアラビアの和解を崩壊させる可能性もあり、更にワシントンをイエメンとの あからさまな対立に引き摺り込む可能性もある。バイデンは就任当初に掲げた外交公約の履行を目指す代わりに、イラン核合意の復活やイエメン戦争の終結という考えを放棄した。彼はまた、パレスチナの国家樹立という大義に致命的な打撃を与えようと決めた。

ハマスがガザでやったようなことは、米国がこの地域に対してある程度理性的なアプローチを追求していれば、決して起こらなかっただろう。占領地での緊張の高まりを緩和するための政治的プランを米国が提示していれば、防げた可能性さえある。しかし そうはせずに、米国政府はガザの武装勢力の大義を完全に取り除こうとする一方で、彼らを大目に見ることに決めた。何のために?バイデンが「中東に平和をもたらした」と主張し、2024年の大統領選挙で民主党を勝利に導くために利用できる派手な写真撮影だ。現在の紛争の所為で、いずれにせよ、正常化は直ぐには議論の対象にはならないようだが、それはハマスの攻撃がイスラエルだけでなく、米国にも打撃を与えたことを意味するだろう。

イスラエルがガザと戦争状態にある今、米国は何をしているのか?一方を非難しながら、イスラエルに武器を与え、イスラエルがとる如何なる行動にもゴーサインを出している。当初、モスクワや北京が停戦を求めたのとは対照的に、ワシントンは停戦を促すことさえ拒否した。ホワイトハウスは、現在の暴力を引き起こした自らの役割を認めようとせず、今日私たちが目にする恐ろしい戦争を引き起こしたのと全く同じレトリックと政策決定を続けている。

No.5 11ヶ月前

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