今回のアメリカ帝国下院の政局の評価は、ウクライナ支援への影響が大きい、即ち支援の限界が一層近づいたのではないか、という見方がかなり強いし、私自身もその点を期待している。 例えば、Indian PunchlineのMK バドラクマール氏の見解は、「今後、ウクライナ戦争への支持はさらに低下することが予想され、特にクレムリン指導部が最終的にウクライナ軍へのノックアウトパンチを決めたり、ロシア軍にドニエプル川を越えてキエフとオデッサを占領するよう命令したりすれば、西側諸国全体のウクライナ支持が崩壊する可能性すら否定できない。」であった。 https://www.indianpunchline.com/war-fatigue-complicates-wests-aid-to-ukraine/ もっとも、いやいやそうとも言えないのでは?みたいな記事は、アルジャジーラが書いている。 https://www.aljazeera.com/news/2023/10/4/is-global-support-for-ukraine-waning しかし、スロバキア、ポーランドの政治状況、さらにはここに来て、対立が激化してきたアメリカ帝国の政党間対立がウクライナ支援に確実に影響することは間違い無いだろう。 この間のケビン・マッカーシー下院議長の解任については、及川幸久氏の動画による解説が分かりやすくて面白いので紹介したい。 及川氏は、アメリカ帝国内のUnipartyの問題に関する下院共和党保守強固派による抵抗が顕在化してきた点に注目していた。 このUnipartyという概念は、謂わば、DS、軍産複合体、戦争屋みたいなアメリカ帝国を牛耳る一部の特権エリートを議会政治において表現したもののようである。 つまり、共和党も民主党も裏では談合してツルンでいる、同じ穴のムジナだ、と。だから、マッカーシーはバイデンを弾劾にかけないし、ハンターバイデンを議会で喚問しないし、トランプの違法な訴追に何も言わないのだ、と。 要は与野党なんて、実質的には存在しない。「統一党」があるだけだ、と。そして、マッカーシー解任は共和党強固派によるUnipartyに対する怒りの抵抗だ、と。Unipartyに関しては、以下の記事が参考になる。これ自体、アメリカ帝国政治の分析視角として、重要な論点だろう。勿論、日本には、これまで、そもそも民主主義は存在しないから、アメリカ帝国も同じだった、というハナシだ。 https://www.politico.com/magazine/story/2017/11/17/steve-bannon-populist-ralph-nader-215839 及川氏の動画は下記。上記に加えて、大変興味深いのは、下院議長にトランプ氏を、という声が高まっている、という報告。どういうことか、実現の可能性は?については動画を参照されたい。 https://youtube.com/watch?v=1u_5D1jVguM&si=UgNAdweMJpAVr7Ia 及川氏の動画で、加えて気になるのは、アメリカ帝国の長期金利が上がっている、ということだ。この点は、田中宇氏も同様の指摘をしている。 長期金利の上昇は、アメリカ帝国国債の買い手が減少しているから、利息を上げて買い手を募っている状態。別の言い方をするなら、アメリカ帝国に対する信認の低下を意味する。だから、金利上昇によりアメリカ帝国の借金返済は国家破綻、債務不履行の問題に影響する。 そもそも、基軸通貨性をよいことに、ドルによって、アメリカ帝国が無限に借金を出来るなんて、素朴にオカシイ。経済の当たり前を考えるなら、極端なハナシ、無借金が理想だろう。 アメリカ帝国経済の不滅を言う、お目出度い「経済通」を、私はアマルティア・センの言葉を流用し、「合理的愚か者」と呼びたい。 世界の政治経済に永遠不滅はあり得ない。アメリカ帝国の、政治経済の上での自滅はいつか?それを予測することが、真の知性だろう。
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今回のアメリカ帝国下院の政局の評価は、ウクライナ支援への影響が大きい、即ち支援の限界が一層近づいたのではないか、という見方がかなり強いし、私自身もその点を期待している。
例えば、Indian PunchlineのMK バドラクマール氏の見解は、「今後、ウクライナ戦争への支持はさらに低下することが予想され、特にクレムリン指導部が最終的にウクライナ軍へのノックアウトパンチを決めたり、ロシア軍にドニエプル川を越えてキエフとオデッサを占領するよう命令したりすれば、西側諸国全体のウクライナ支持が崩壊する可能性すら否定できない。」であった。
https://www.indianpunchline.com/war-fatigue-complicates-wests-aid-to-ukraine/
もっとも、いやいやそうとも言えないのでは?みたいな記事は、アルジャジーラが書いている。
https://www.aljazeera.com/news/2023/10/4/is-global-support-for-ukraine-waning
しかし、スロバキア、ポーランドの政治状況、さらにはここに来て、対立が激化してきたアメリカ帝国の政党間対立がウクライナ支援に確実に影響することは間違い無いだろう。
この間のケビン・マッカーシー下院議長の解任については、及川幸久氏の動画による解説が分かりやすくて面白いので紹介したい。
及川氏は、アメリカ帝国内のUnipartyの問題に関する下院共和党保守強固派による抵抗が顕在化してきた点に注目していた。
このUnipartyという概念は、謂わば、DS、軍産複合体、戦争屋みたいなアメリカ帝国を牛耳る一部の特権エリートを議会政治において表現したもののようである。
つまり、共和党も民主党も裏では談合してツルンでいる、同じ穴のムジナだ、と。だから、マッカーシーはバイデンを弾劾にかけないし、ハンターバイデンを議会で喚問しないし、トランプの違法な訴追に何も言わないのだ、と。
要は与野党なんて、実質的には存在しない。「統一党」があるだけだ、と。そして、マッカーシー解任は共和党強固派によるUnipartyに対する怒りの抵抗だ、と。Unipartyに関しては、以下の記事が参考になる。これ自体、アメリカ帝国政治の分析視角として、重要な論点だろう。勿論、日本には、これまで、そもそも民主主義は存在しないから、アメリカ帝国も同じだった、というハナシだ。
https://www.politico.com/magazine/story/2017/11/17/steve-bannon-populist-ralph-nader-215839
及川氏の動画は下記。上記に加えて、大変興味深いのは、下院議長にトランプ氏を、という声が高まっている、という報告。どういうことか、実現の可能性は?については動画を参照されたい。
https://youtube.com/watch?v=1u_5D1jVguM&si=UgNAdweMJpAVr7Ia
及川氏の動画で、加えて気になるのは、アメリカ帝国の長期金利が上がっている、ということだ。この点は、田中宇氏も同様の指摘をしている。
長期金利の上昇は、アメリカ帝国国債の買い手が減少しているから、利息を上げて買い手を募っている状態。別の言い方をするなら、アメリカ帝国に対する信認の低下を意味する。だから、金利上昇によりアメリカ帝国の借金返済は国家破綻、債務不履行の問題に影響する。
そもそも、基軸通貨性をよいことに、ドルによって、アメリカ帝国が無限に借金を出来るなんて、素朴にオカシイ。経済の当たり前を考えるなら、極端なハナシ、無借金が理想だろう。
アメリカ帝国経済の不滅を言う、お目出度い「経済通」を、私はアマルティア・センの言葉を流用し、「合理的愚か者」と呼びたい。
世界の政治経済に永遠不滅はあり得ない。アメリカ帝国の、政治経済の上での自滅はいつか?それを予測することが、真の知性だろう。