今回の南アフリカでのBRICSサミットが世界中の注目を集める画期的な会合であったことは間違いない。 最大の焦点は、ドル覇権即ちアメリカ帝国一極支配に対抗するための新基軸通貨創設がぶちあげられるかどうか、という点であったが、これについては、劇的な転換ではなく漸進的な取り組みの積み重ねが選択されたようだ。 その点について、SPUTNIKでは、ブラジル人ジャーナリスト、ぺぺ・エスコバル(Pepe Escobar)氏の見解を引きながら、報じている。 「エスコバル氏は、サミットではブロックの拡大とともに、人民元、ルーブル、レアル、ルピー、ランドのいわゆるR5と、新たに加わる可能性のある加盟国の通貨を加えた現地通貨を使ったブロック間貿易にも焦点が当てられると予想している。」 「「新BRICS通貨への道は非常に複雑だ」とエスコバル氏は説明し、独立系アナリストの間の「暗黙のコンセンサス」は、少なくとも現時点では、BRICSは実際には共通通貨を必要としないのではないかということのようだと述べた。「例えば中期的には、彼らはある種のトークン、例えばロシアの金に裏付けされた金を裏付けとしたトークンを持つことができる。彼らはユーロのような新しい通貨を必要としない。そして、近いうちに発表される新ユーロのようなBRICS通貨にはならないだろう。」」 https://sputnikglobe.com/20230821/pepe-escobar-brics-plus-sco-super-bloc-vs-us-empire-1112730061.html ともかく、ドル覇権崩壊に向けた着実な一歩が開始された。喜ばしい限りである。 ぺぺ・エスコバル氏は、SPUTNIKの記事の中で、もう一つ興味深い指摘をしている。それはアメリカ帝国に対抗するために「文化的ソフトパワー」の重要性を説いていることだ。 「BRICS+には、「シンクタンク、出版物、ジャーナル、ソフトパワーメカニズム、文化展示会、異文化間および汎文化展示会、映画、演劇、音楽、それらの間で相互作用する文化的ソフトパワーのネットワーク」が必要であり、これには「説明するのに役立つ芸術も含まれる」自分たちの地域の現実をパートナーや世界の他の国々にも伝えるのです」とエスコバル氏は強調した。」 これは、アメリカ帝国に占領統治された日本人の末裔として痛感する事柄だ。 大衆精神史の観点から見るなら、占領期のアメリカ帝国の「文明」に圧倒され、憧憬から、アメリカ帝国への盲目的洗脳が戦後から今日に至る日本の精神史ではなかったか? 映画やエンターテインメント産業等、アメリカ帝国の文化的洗脳は、B層大衆に染み込んでいるように見える。 アメリカはスゴイ!アメリカは正しい!みたいな根拠なきアメリカ帝国肯定の思考様式。日本のB層に染み渡ったこの愚かな自動思考を突き崩すのは、容易ではない。 このアメリカ帝国崇拝の自動思考は、多極化する世界の潮流において、日本を疎外する桎梏となっている。 しかし、BRICSはそこにも風穴を開けるべきだ、というわけである。それぞれの地域、国柄に根ざした「文化的ソフトパワー」の発信、それを戦略的に進めて行くことに異議なしである。 >BRICS加盟国がこのブロックに対する一貫したビジョンを確立できていないため、長い間、世界の政治・経済プレーヤーとしての地位を維持できていない。 一貫したビジョン?それはBRICSには必要だろうか?BRICSの旗印は相互尊重や多様性だと考える。だからこそ、エスコバル氏も次のように述べたのだろう。 「もし彼ら全員がますます緊密に交流するようになれば、彼らは脅威や課題に対処できるようになるだろうが、協力と相互尊重、そしてお互いの主権の尊重の雰囲気の中で、それは「ルールに基づく国際秩序」とは正反対です」とエスコバル氏は要約しました」 「ルールに基づく国際秩序」とは、アメリカ帝国による一極覇権の別名でしかないのだ。そんなものは、この世界には必要ない、と。 少しニュアンスは違うが、大筋同様のことを、MKバドラクマール氏がRTに寄稿している。 https://www.rt.com/india/581593-india-brics-west-world/ 「強力な制度とグローバル・ガバナンスの経験はすべて、共通の価値観と利害の共有に基づく西側諸国の経験であることに間違いはない。皮肉なことに、それが彼らの "ブロック・メンタリティ "の原因でもある。BRICSにはそのような結束力がなく、G7が何十年も行ってきたような世界のアジェンダを設定する能力もない。だからこそインドのような国は、BRICSという共同体が既存の世界秩序を破壊するのではなく、より良い方向に変えていくことを常に期待しているのだ。インドはグローバリゼーションや制度、国際法の崩壊を望んでいない。別の言い方をすれば、インドは既存の秩序の中で、その長所を維持し、短所を解消するようなルールや規範、協力の方法を作り出すことを好むのである。」 BRICS、SCOの発展とアメリカ帝国西側の覇権崩壊を願って止まない。
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孫崎享チャンネル
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今回の南アフリカでのBRICSサミットが世界中の注目を集める画期的な会合であったことは間違いない。
最大の焦点は、ドル覇権即ちアメリカ帝国一極支配に対抗するための新基軸通貨創設がぶちあげられるかどうか、という点であったが、これについては、劇的な転換ではなく漸進的な取り組みの積み重ねが選択されたようだ。
その点について、SPUTNIKでは、ブラジル人ジャーナリスト、ぺぺ・エスコバル(Pepe Escobar)氏の見解を引きながら、報じている。
「エスコバル氏は、サミットではブロックの拡大とともに、人民元、ルーブル、レアル、ルピー、ランドのいわゆるR5と、新たに加わる可能性のある加盟国の通貨を加えた現地通貨を使ったブロック間貿易にも焦点が当てられると予想している。」
「「新BRICS通貨への道は非常に複雑だ」とエスコバル氏は説明し、独立系アナリストの間の「暗黙のコンセンサス」は、少なくとも現時点では、BRICSは実際には共通通貨を必要としないのではないかということのようだと述べた。「例えば中期的には、彼らはある種のトークン、例えばロシアの金に裏付けされた金を裏付けとしたトークンを持つことができる。彼らはユーロのような新しい通貨を必要としない。そして、近いうちに発表される新ユーロのようなBRICS通貨にはならないだろう。」」
https://sputnikglobe.com/20230821/pepe-escobar-brics-plus-sco-super-bloc-vs-us-empire-1112730061.html
ともかく、ドル覇権崩壊に向けた着実な一歩が開始された。喜ばしい限りである。
ぺぺ・エスコバル氏は、SPUTNIKの記事の中で、もう一つ興味深い指摘をしている。それはアメリカ帝国に対抗するために「文化的ソフトパワー」の重要性を説いていることだ。
「BRICS+には、「シンクタンク、出版物、ジャーナル、ソフトパワーメカニズム、文化展示会、異文化間および汎文化展示会、映画、演劇、音楽、それらの間で相互作用する文化的ソフトパワーのネットワーク」が必要であり、これには「説明するのに役立つ芸術も含まれる」自分たちの地域の現実をパートナーや世界の他の国々にも伝えるのです」とエスコバル氏は強調した。」
これは、アメリカ帝国に占領統治された日本人の末裔として痛感する事柄だ。
大衆精神史の観点から見るなら、占領期のアメリカ帝国の「文明」に圧倒され、憧憬から、アメリカ帝国への盲目的洗脳が戦後から今日に至る日本の精神史ではなかったか?
映画やエンターテインメント産業等、アメリカ帝国の文化的洗脳は、B層大衆に染み込んでいるように見える。
アメリカはスゴイ!アメリカは正しい!みたいな根拠なきアメリカ帝国肯定の思考様式。日本のB層に染み渡ったこの愚かな自動思考を突き崩すのは、容易ではない。
このアメリカ帝国崇拝の自動思考は、多極化する世界の潮流において、日本を疎外する桎梏となっている。
しかし、BRICSはそこにも風穴を開けるべきだ、というわけである。それぞれの地域、国柄に根ざした「文化的ソフトパワー」の発信、それを戦略的に進めて行くことに異議なしである。
>BRICS加盟国がこのブロックに対する一貫したビジョンを確立できていないため、長い間、世界の政治・経済プレーヤーとしての地位を維持できていない。
一貫したビジョン?それはBRICSには必要だろうか?BRICSの旗印は相互尊重や多様性だと考える。だからこそ、エスコバル氏も次のように述べたのだろう。
「もし彼ら全員がますます緊密に交流するようになれば、彼らは脅威や課題に対処できるようになるだろうが、協力と相互尊重、そしてお互いの主権の尊重の雰囲気の中で、それは「ルールに基づく国際秩序」とは正反対です」とエスコバル氏は要約しました」
「ルールに基づく国際秩序」とは、アメリカ帝国による一極覇権の別名でしかないのだ。そんなものは、この世界には必要ない、と。
少しニュアンスは違うが、大筋同様のことを、MKバドラクマール氏がRTに寄稿している。
https://www.rt.com/india/581593-india-brics-west-world/
「強力な制度とグローバル・ガバナンスの経験はすべて、共通の価値観と利害の共有に基づく西側諸国の経験であることに間違いはない。皮肉なことに、それが彼らの "ブロック・メンタリティ "の原因でもある。BRICSにはそのような結束力がなく、G7が何十年も行ってきたような世界のアジェンダを設定する能力もない。だからこそインドのような国は、BRICSという共同体が既存の世界秩序を破壊するのではなく、より良い方向に変えていくことを常に期待しているのだ。インドはグローバリゼーションや制度、国際法の崩壊を望んでいない。別の言い方をすれば、インドは既存の秩序の中で、その長所を維持し、短所を解消するようなルールや規範、協力の方法を作り出すことを好むのである。」
BRICS、SCOの発展とアメリカ帝国西側の覇権崩壊を願って止まない。