中庸左派 のコメント

 この問題を考える上では、西側の約束違反とプロパガンダの問題を考慮するべきだろう。

 Moon of Alabama 7月15日付は「AP通信、黒海の穀物取引の数字を隠蔽」と題して、この問題を取り上げている。

https://www.moonofalabama.org/2023/07/ap-obfuscates-the-real-grain-deal-numbers-.html#more

 この記事によると、「「先進国」と表示されている国の合計は1,410万4,113トン、「発展途上国」の合計は1,871万3,339トンである。

穀物の「半分以上」が発展途上国に供給されているというAPの主張は、技術的には正しい。しかし、発展途上国/発展途上国という分類は、数十年前の世界貿易機関協定に基づいていると思われるが、中国、トルコ、そしていくつかの豊かな国までもが「発展途上国」としてリストアップされている。

WTOの規則で「発展途上国」であることが疑問視されている中国は、ウクライナから合計796万3950トンの大麦、小麦、ひまわり製品を最も多く受け取っている。トルコは合計328万9155トンで3位である。

中国はウクライナの農産物の長期的な顧客である。トルコは特別なケースで、輸送を容易にし、多額のリベートを受け取り、入手した農産物のほとんどをより高い世界市場価格で転売している」

「「発展途上国」であるトルコや中国も「高中所得国」である。実際、オマーン、アラブ首長国連邦、サウジアラビアのように「発展途上国」でありながら「高所得国」である国もある。

穀物の半分以上が『発展途上国』に供給されているというAP通信の主張は、技術的には正しいが、実際の数字を難読化するだけで、実際には何の役にも立たない。

「後発開発途上国」8カ国(うち7カ国は「低所得国」)へのウクライナの穀物輸出総量は、わずか189万6077トン、全体の6.8%に過ぎない。一方、「高所得」の「先進国」であるスペインは、ウクライナから合計5,980,657トンの穀物を輸入しており、これは全体の19.4%に相当する。

「発展途上国」の「低所得国」であるエチオピアの1億1600万人が合計28万2760トンを受け取る一方、「先進国」の「高所得国」であるオランダの1780万人は、豚用のトウモロコシ飼料を中心に192万649トンを購入した。」

 要するに、この協定により低所得国が受取る穀物は元々少なすぎた、と。

 それと、もう一つは、ロシアが国際的な貿易の決済機構から締め出されている問題だ。これにより、ロシアは自国の肥料や穀物を輸出出来ない状態になっていると主張している。

Moon of Alabama 7月13日付「穀物取引の悪巧み」では、この点を詳報している。

https://www.moonofalabama.org/2023/07/grain-deal-shenanigans.html

 ロシアに対する経済制裁をまずは解除するべきだ。

 そもそも、ウクライナは穀物生産量は低下するだろう。その時、ロシアの生産能力が必要となるはずだ。

「S&Pグローバル・コモディティ・インサイツの穀物分析責任者、ピーター・マイヤー氏は、ウクライナ産が減り、ロシア産が増えたことで、世界の利用可能な小麦在庫は2021年と同じであり、流通するには十分な量があると述べた。」

https://www.csmonitor.com/text_edition/World/2023/0713/Food-and-fertilizer-Russia-poised-to-backtrack-on-Ukraine-grain-deal

 食糧を兵器化したのは、西側も同罪だ。現に機能しないウクライナの穀物生産より、ロシアの経済制裁を解き、ロシアの穀物生産力に頼ることが合理的解決策だ。

No.4 15ヶ月前

このコメントは以下の記事についています

継続入会すると1ヶ月分が無料です。 条件を読む

孫崎享チャンネル

孫崎享チャンネル

月額
¥110  (税込)
このチャンネルの詳細