中庸左派 のコメント

>NATOへの加盟は、国家主権と支配エリートによる無期限の権力保持との交換である。これが、あらゆる政治政権がブロックに参加したいという願望の秘密だ。

 この問題はグローバリズムと主権国家の関係を考える上での重要な論点だろう。

 EUは経済的枠組みで、NATOは政治的軍事的枠組みであろうが、いずれにせよ、加盟国の主権の制約であることは間違いないだろう。

 政治経済という個別利害の領域をある意味で棚上げすることにより、EUやNATOは命脈を保ってきた。

 しかし、現実にはNATOの親分アメリカ帝国が更に君臨していたので、欧州の意向とは別に、核の傘に守られたいという幻想の下、アメリカ帝国の影響圏として、アメリカ帝国への隷従という側面も有していた。

 EU、NATO諸国はアメリカ帝国の影響圏に過ぎず、所詮アメリカ帝国に支配されているだけであった。しかも、EU内部の主権も制約されたままに。

 ここには、欧州の一般市民にとって、二重の矛盾があると考えている。

 一つは主権を放棄した国家のエリート層と、一般市民との乖離という問題。もう一つは、強大な軍事力を背景にした欧州エリート層のアメリカ帝国に対する隷従という問題。

 欧州一般市民には、手の届かない天井が二つあるカンジではなかろうか?

 そして、国民主権が空論化して、アメリカ帝国と一部欧州エリート層のみにより、勝手に紛争や戦争が正当化され、一般市民はただ巻き込まれるだけの存在に成り下がった。

 そんな構図に見える。

 その意味では、フランスの「内乱」や、ドイツでの「極右」と言われる勢力の台頭は、主権を奪われた一般市民による反旗という構造的現象ではなかろうか?

 EUもNATOも、欧州一般市民の不満を強引に抑え込むための口実のような機能しかない、とするなら、最早存在意義はどのあたりにあるのであろうか?

 ウクライナでの戦争において、EU、NATOの歪みが露わになって来ていると考えている。その最大の要因は、親分アメリカ帝国による覇権への執着であろう。

 アメリカ帝国は欧州での覇権をテコにして、ロシアを弱体化出来ると見誤った。ウクライナはアメリカ帝国や欧州の政治経済力軍事力があれば、ロシアを抑え込めると小賢しい発想により、見誤った。

 ウクライナはNATO加盟が事実上不可能になった。これは、ロシアに対して敗北を認めたに等しいのではないか?結果的に、弱体化したのはアメリカ帝国とNATO、EUであった。その結果、欧州に亀裂が入り、瓦解が始まることを、個人的には期待している。

 多極化が進み、グローバリズムに鉄槌が下されることに期待をしているからである。

 一言付け加えるなら、同盟という名の隷従は日米同盟も同じだ。日本の支配エリートのアメリカ帝国への服従と引き換えに、日本統治を任されたエージェントのようなものが、官僚機構でしかないように見えるのは気のせいではないだろう。

 正直、長年、日本人をやってきた。だからこそ、言える残念な結論、日本に「自浄」は期待していない。やはり、アメリカ帝国とともに、自滅しかないのではないか?

No.7 15ヶ月前

このコメントは以下の記事についています

継続入会すると1ヶ月分が無料です。 条件を読む

孫崎享チャンネル

孫崎享チャンネル

月額
¥110  (税込)
このチャンネルの詳細