中庸左派 のコメント

 根本的に言うなら、何が「偽」であるか、どうかは単純には決めつけられない。

 特に政治的社会的事案については、政府見解や新聞報道が、絶対的に正しいとは言い切れない。政治的社会的事案に関するものは、たとえ、権威ある機関、報道機関の見解であっても、一つのの見方に過ぎない、という程度のリテラシーは必要だ。

 例えば、以下の読売記事。

>中国は台湾向けに、「米国が台湾有事を起こそうとしている」といった情報を拡散した。台湾の世論に米国離れをもたらす意図があるとみられる。偽情報は、安全保障上の脅威となっている。
 
 具体的にいつダレが書いたどんな「情報」なのか示されていない。

 従って、これは、「台湾有事」の問題を取り上げている点から、明らかに政治的事案についての「見解」や「評価」に関する論評の類だ。だから、そもそも「情報」拡散というより、「論評」拡散とでも言うべきであろう。

 論評であるなら、様々な議論があって良い。にも関わらず、恰も唯一の「正解」があるかの書きぶり。これ自体、あり得ない、という意味で「偽」情報である。

 台湾有事に関して言うなら、そもそも一つの中国論に立つなら、台湾統一は中国の内政問題に過ぎないのだから、台湾有事は存在しないだろう。

 他国、例えばアメリカ帝国等の介入があって初めて、台湾有事となる。これが、論理的筋道だと考える。従って、アメリカ帝国による介入から台湾有事が起こりうるという論評はあって良い。実際、私はこの見解である。

 このように、あり得るシナリオや論評を、「あり得ない!」と切って捨てるのは、政治的バイアスである。その意味で「偽」と言って良い。

 次に、以下の事例。
 
>ウクライナがミサイルでザポリージャ原子力発電所を破壊しようとしている、とウクライナを非難する内容で、岸氏が投稿した形を装っていた。それを在英ロシア大使館が拡散していたことを日本政府が発見し、削除させた。

 「岸氏が投稿した形を装って」とあるから、これは「事実」に関する事柄だ。そうした「事実」がないのに、「装った」なら、明白な偽情報だ。

 以上のように、論評なのか、事実なのかハッキリさせず、ゴチャゴチャにして「偽情報」問題を論じることはギロンとして粗雑過ぎる。

 新聞はよく、結果に反する憶測記事を書くではないか。その意味からも、自らを顧みることなく、「偽情報」を論じることは不遜である。

 このような意味から、「陰謀論」や「偽情報」と決めつけている者達を、先ずは疑うことが大事だ。

No.6 19ヶ月前

このコメントは以下の記事についています

継続入会すると1ヶ月分が無料です。 条件を読む

孫崎享チャンネル

孫崎享チャンネル

月額
¥110  (税込)
このチャンネルの詳細