中庸左派 のコメント

>ウクライナ問題をめぐり、日本には極めて異常な言論空間ができていた。

 安倍発言の黙殺は異常な言論空間の文脈だと考えている。

 個人的に、ロシアによる特別軍事作戦に関する報道において、不可解だと考えていることの最大の点は、「アゾフ」=ネオナチの扱いである。

 それまでウクライナに特異な極右民族主義問題として世界中で「事実」認定されていた筈のアゾフが、単なるフーリガンに過ぎないとか、むしろ英雄だとか、矮小化され、希釈されていった。ゼレンスキーがユダヤ人なのだから、ウクライナに民族主義がはびこるわけがない、とか。

 この点に違和感を禁じえない。何故なら、私はユーロマイダンのクーデターも、露系ウクライナ人の迫害も、ドンバス地方への砲撃、攻撃即ち内戦も、アゾフに象徴されるネオナチ極右問題を要素として加味するなら、その筋道をスッキリ説明できると考えているからである。

 ウクライナのネオナチ問題は、ロシアが言う通り、特別軍事作戦において無視出来ない要因であった、と私は考えている。

 こうしたアゾフ等の問題については、ルポライター清義明氏による「論座」『ウクライナには「ネオナチ」という象がいる~プーチンの「非ナチ化」プロパガンダのなかの実像【上】【中】【下】』が詳しい。

https://webronza.asahi.com/national/articles/2022032200001.html?page=1

https://webronza.asahi.com/national/articles/2022032200002.html?page=1

https://webronza.asahi.com/national/articles/2022032200003.html
 
 昨年2月の開戦当初には、アゾフ、NATO東方拡大、ドンバス砲撃=内戦等のロシア側の主張が、日本の主流権威筋メディアにおいても、散見されていたように思われる。

 しかし、「ブチャ虐殺」報道以降からであろうか、ロシア悪玉糾弾論がメディアや巷間を席巻し始め、大本営発表のような色に染め上げられた印象を持っている。

 しかし、語られなくなり、隠蔽された「事実」にこそ、真に考える素材としての「真実」がある、と私は考えている。

 アゾフは明らかに「隠蔽」され、変わりに「英雄」としてウクライナ聖戦正当化のシンボルにさえなった。

 上記、清氏の記事の引用。

「なんと公安調査庁がこの存在を取り上げている。公安調査庁の2021年度版の「国際テロリズム要覧2021」に、「極右過激主義者の脅威の高まりと国際的なつながり」と題したレポートがある。」「2014年,ウクライナの親ロシア派武装勢力が,東部・ドンバスの占領を開始したことを受け,「ウクライナの愛国者」を自称するネオナチ組織が「アゾフ大隊」なる部隊を結成した。同部隊は,欧米出身者を中心に白人至上主義やネオナチ思想を有する外国人戦闘員を勧誘したとされ,同部隊を含めウクライナ紛争に参加した欧米出身者は約2,000人とされる」

 開戦当時、私もこの公安調査庁のHPを見ていて、暫くして削除されたことに、強烈な違和感をもった。情報操作を垣間見た印象であった。

 その後、日本の主流権威筋メディアでは、アゾフは英雄に祭り上げられ、更に後、そうした情報操作が浸透した結果故であろうか、私は酒宴における戦争談義にて、先輩から、「ゼレンスキーはユダヤ人だ!ウクライナの極右問題などたいしたことはない!それより、ロシアはけしからん!ウクライナは戦争に勝たなければならぬ!なにをいうか、バカモノ!」と一喝されたのであった。(後期高齢者である先輩の勢いに気圧され、反論の余地なく、圧倒されたのであった)

 しかし、隠蔽され、語られないアゾフ=ウクライナネオナチの問題について、以下に清氏の記事から、再び引用しておきたい。

「・ウクライナでは極右・ネオナチと呼ばれる勢力が政権や行政や司法に関与していること。

 ・その極右勢力が軍事化したのみならず、国軍勢力の中核におり、「世界で唯一ネオナチの民兵が正式に軍隊になった」国であること。

 ・その様々なセクトが一般人への軍事訓練などを続けながら勢力をウクライナの政治から文化まで拡大しつつあったこと。

 ・彼らは民主主義的な価値観を肯定しておらず、さらに政権のコントロールを必ずしも受け入れておらず、将来的に民主主義への敵対勢力となる可能性があること。

 ・世界の極右やネオナチのハブ的存在になっており、ISのように世界的にネットワークを広げて、コントロール不能になることすら考えられること。

 ・またウクライナの過去のナチス協力をめぐる「歴史修正主義」がウクライナを席巻しており、すでにイスラエルをはじめ、関係する国々から強く批判されていたこと。」

 さて、最近、アメリカ帝国の機密文書が漏洩し、大騒ぎになっている。一応、アメリカ帝国空軍の若い兵士が犯人となったようだが、主流権威筋メディア以外は信用していないように見える。何故、CIA作成と思しき文書まで、一兵士がリークできるか?とか。

 Moon of Alabama(4月14日)では、「私の勘」として、この事件の意図について、次のようにかいている。

 「「リーク」は「情報コミュニティ」のある高い地位、おそらくCIAかDNIからもたらされる。昨日逮捕された若い兵士は、何らかの方法でそれを公表するために利用された。最初のリーク元は、イギリスのパートナーサービスに連絡して、『狩り』を開始した。その結果を公表するために、イギリスの子会社であるBellingcatが利用された。

リークの目的は2つあった:

ウクライナのスライドが公開されたことで、自ら始めたウクライナ戦争をどう継続・停止させるか見当もつかないバイデン政権は、そこでの戦争が敗北し、ウクライナが降伏しなければならないことを認めることになる。
第二の目的は、監視の強化、すなわち「情報機関」の雇用拡大を推し進めることである。これまでのところ、この計画はうまくいっている。」

 リーク目的が、戦争停止のための情報操作なら、それはそれで良い。「ブチャ虐殺」のような戦争継続のための情報操作より、マシというもの。

 今回のロシアウクライナ戦争で特徴的と言えることは、当事国でない我が日本において、戦争を支持する世論が容易く形成されたことだと考えている。そして、それは、隠蔽やストーリーの変更、洪水のような大本営発表により情報操作によって行われた。

 自分なりの立ち位置や、切り口といったものがないと、B層として、戦争継続正当化にはまり込んでいく。恐ろしくも愚かなことである。

No.2 18ヶ月前

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