中庸左派 のコメント

>種間競争が,群集の構造を決める上で普遍的に重要とはいえないことを示している.今西の直観によるすみわけ理論は,その意味では真実に迫っていたといえるのかもしれない

 今西錦司さんのお名前も棲み分け理論も、浅学故に知りませんでした。

 しかし、一方のダーウィンの進化論がその後に、社会ダーウィニズムという社会理論の下敷きになったことは、物の本により知っており、ナチズムによる人種主義や優生思想を派生させたと理解していました。
 その延長に市場原理主義とか、新自由主義といったアメリカ帝国型の現代資本主義のあり方も位置づけられるのではないか、と考えています。
 もっとも、マルクス主義も資本家が労働者搾取により階級闘争を激化させ、資本家自らは墓穴を掘り、やがて労働者階級が階級闘争に勝利し、社会経済の実権を握り、人類の最高の社会形態としての共産主義社会が必然的に成立するという理論でしょうから、「棲み分け」とか、「共存」の理論とは遠いな、と感想します。

 学生時代、私はとにかく○○打倒!という言葉をよく使ったものでした。(最も使用頻度が高かったのは「米帝打倒!」かもしれません)

 ともかく、今は中庸の精神をモットーに「打倒」とか、「競争」とは比較的縁遠く生活出来ております。その意味で「棲み分け」という理論、或いは概念は、私としてはとてもシックリくるものです。

>今西のすみわけ理論は,競争を完全に否定する〜しかし「すみわけは互いの相補的共存によってなり立っている」として,共存する他種の存在を重視する

 私自身は誰もが働き続けることが出来る社会を理想として、組合活動家時代はそれをテーマに取り組んできましたから、競争や独り占めを最も忌み嫌う問題として見てきました。

 それは、もう一段大きな次元で言うならば、覇権や支配の否定という考えです。

 その観点から国際社会を見るならアメリカ帝国による一極覇権は大変問題があり、私にとっては忌み嫌うべき問題です。

 最近、クレイグ・マレーというイギリスの元外交官で学者であった方の中国に関する文章を読みました。題して「なぜ中国が敵になるのか」

https://www.craigmurray.org.uk/archives/2023/03/why-would-china-be-an-enemy/

「現在の中国ほど、経済支配のレベルを達成した国家が、その経済的資源を増やすために軍事的な領土獲得の資金源として経済力を利用しようとしなかった例は、歴史上容易に思いつくことはありません。

 その点で、中国はアメリカ、イギリス、フランス、スペインなど、かつての著名な国よりもはるかに平和的である。

 この簡単な質問を自分に投げかけてみてください。アメリカは海外にいくつの軍事基地をもっていますか?そして、中国にはいくつの海外軍事基地があるのか?

 アメリカには750から1100の海外軍事基地があります。中国は6~9カ所です。

 中国による最後の軍事侵略は、1951年と1959年のチベットの占領である。それ以来、私たちはアメリカがベトナム、カンボジア、韓国、イラク、アフガニスタン、リビアを大規模な破壊をもって侵略したのを見てきました。」

「中国には、60年以上にわたり、他国を攻撃したり侵略したりした記録がまったくありません。」

 国際社会における「棲み分け」とは、多極社会ではないかな、とイメージしています。勿論、ブロック化した冷戦の再来ではなく、共存の意味において。少なくとも、アメリカ帝国のご都合主義的一極覇権であってはならないと考えます。

 さて、社会理論としての「棲み分け」を考えた時に、それは格差固定化であってはならない、とも考えます。例えば、正規非正規の格差は勿論、教育格差は貧困の固定化に繋がります。親ガチャという言葉があるようですが、大学進学率は一定の所得や社会的階層により、固定化される傾向が否めません。貧困の連鎖が「棲み分け」であってはなりません。

 人間社会の棲み分けは、共存は勿論、選択の自由を前提とした入れ替え可能性、出入り自由なある種の脱固定化も必要ではないかな、と考えます。そのためには税財源による積極的な社会政策を願って止みません。

 その観点からも、転職によるステップアップを鼻にかけてビジネスエリートを気取り一般勤労層を蔑むようなヒトが失業したり、病気になったり、事故にあったり、人生の困難に直面して、無一文になったとき、セーフティネットが彼を暖かくサポートしうる社会、それが私の理想であります。

No.9 19ヶ月前

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