中庸左派 のコメント

 私がワークシェアリングの必要性を考えるようになったのは、2008年のリーマンショック後、派遣切りが激増し、雇用不安から貧困問題が一気に社会的に噴出した頃でした。年越し派遣村は、世間の耳目を集めたと思います。

 同時に自己責任論もこの頃、巷の言論には溢れていたように思います。フリーターだの、派遣労働者だの、縛られない働き方、などと言って、自分で選択したのだろ、だから自己責任だ、というわけです。

 しかし、終身雇用が真に日本型雇用形式の特徴であたったのかどうかは定かではないが、少なくとも非正規労働者は政策的に増大させられてきた側面があります(「新時代の「日本的経営」」1995年)。自己責任論だけでは片付けられない所以です。 

 一方、日本経済は「失われた20年」と呼ばれる長期経済停滞の中にありました。経済のパイが縮小を続ける中で、派遣切りやリストラが横行する時代が続いていました。人件費抑制のため、海外生産も進められ、産業の空洞化が懸念されていました。
 この時期、輸出依存型の日本経済は円安誘導ばかり進め、一部の輸出産業、大企業だけが円安の恩恵を受け、国全体としては賃金は上がらず、貧しくなっていったのではないでしょうか?
 株主資本主義、即ちリストラによる株価上昇は当たり前のようにもてはやされていました。
 こうして、日本全体として働き続けられない社会を作り続けてきた。その結果、不安定雇用故に将来を見通せず、結婚を考えられず、少子高齢化のスパイラルにはまり込んで抜け出ることができない。それが日本社会の現状だと考えています。

 私が組合活動家として、ワークシェアリングを切望していたのは、そういう社会背景があったからです。新自由主義的思想が流行し、成果主義賃金と能力主義的昇任体系など、労働者を分断して競争させる仕組みを当然視する風潮でもありました。

 私は以上のような奔流に抗う手段こそがワークシェアリングであると考えていました。

 熊沢誠先生が言う「競争の制御」です。

 これは、私の考えですが、正直に言えば、仮に賃金抑制を伴っても、雇用確保を優先するべきだと考えていました。ただ、誤解なきように申し添えると、ワークシェアリング自体は必ず賃金抑制がともなうとか、賃金抑制を前提としている考え方ではありません。

 私のワークシェアリングに対する考え方は、当時の派遣切りの横行等、差し迫った雇用状況の悪化と貧困問題、格差拡大の抑制が念頭にあってのことでした。

 それに当然ながら、労働組合の思想とワークシェアの仕組みを整合させるためには、議論の深化が必要です。しかし、残念ながら、ワークシェアリングに関する労働組合内部での論議は、その後深化することはありませんでした。

 一つだけ、私のイメージに近いワークシェアリングの事例を紹介することが出来ます。

 かなり古い記事ですが、「広島電鉄、若手と非正規「賃上げ」ベテラン社員「賃下げ」」(J-CASTニュース 2009.3.26)

https://www.j-cast.com/2009/03/26038318.html?p=all

 何れにせよ、現状は労働組合として格差是正のためのワークシェアリング論議は全く深まることなく、労働組合の組織率低下、社会的影響力低下は深まるばかり。

 いつものように長くなってしまって恐縮なのですが、連合の芳野会長について、一言。

 芳野氏は「連合の労働運動は、自由で民主的な労働運動を強化、拡大していくというところから始まっている。その点で共産とは考え方が違い、相いれない。現実的にも、連合の組合と共産党系の組合は職場、労働運動の現場で日々競合し、しのぎを削っている」と述べ、あらためて共産党との共闘を拒絶した。(Wikipedia)とのこと。

 確かに、共産党系労組と連合系では「体質」が違う。私は現場活動家としての経験から、そう思います。

 しかし、私に言わせれば、最早そんなこと言っている場合ではないのです。労働組合の目を覆う組織率低下において、共産党毛嫌い論は現場感覚の無さを露呈していると思う。連合系と共産党系で「労働運動の現場で日々競合し、しのぎを削っている」とはカンチガイも甚だしい。実際には、ムダな泥仕合で双方疲弊し、労組離れの一因になっているだけでしょう。今どき、良くも悪くも、連合とか、共産党(系全労連)とか、組合員にはどうでも良いことです。組合員からすれば、何故共に闘わないのか?という素朴なギモンでしょう。  

 それは野党共闘しかり、だと考えています。

 だいたい、労組組織率がダダ下がりなのに、何が、「しのぎを削っている」でしょう?削られているのは、労組組織率です。

 労働者の代表でありながら、芳野会長は共産党への敵対の一方で、自民党にすり寄っている。このバランス感覚の無さは危うい。

No.6 22ヶ月前

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