今回孫崎さん提示の議論のなかの「相互依存が「武器化」することを避けなければならない」については、実際上無理だとおもいます。 たぶん19世紀ごろであれば戦争になったようなことでも、現在は戦争へのハードルが高いので容易には戦争になりません。しかし国家間の紛争はなくなってないので、相手を自分のおもいどおりにさせる手段として、経済の「武器化」は今後もそうとう長期間残り続けるとおもいます。つまり、紛争がある限り、経済は必然的に「武器化」するのです。 むしろ、このたびの北朝鮮に対して、安保理理事国15カ国のうち、13カ国は制裁に賛成なのに、中国とロシアが反対したことで国連として制裁ができなかったことにみられるように、 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220527/k10013645531000.html 日本の安全保障に大きくかかわる問題でも経済の「武器化」がうまくいかないことにこそ、危機感をもつべきだとおもいます。日本にはたいした軍隊がなく、核兵器もないため、経済を「武器化」するのは日本の防衛にとって重要であり、今後その経済も縮小してゆく日本にとって、ますますその「武器」をみがくことが重要だとおもいます。ときどき、「日本にしかできない技術を持ち続け、日本を必要とおもわせ、バランサーになる」という論者があらわれますが、その方の議論も、有り体にいえば、「いざとなれば」経済を「武器化」することを前提にしています(その方がどうおもっていらっしゃるか知りませんが)。 経済の「武器化」に反対、というのは、核兵器をもち軍事力もじゅうぶんで、軍事侵略もできる大国の側の論理です。その大国の侵略を許せば、それを見た同じような別の大国がほかの地域で侵略します。こういう国々に対して hot war をできれば避けつつたたかう、とくに弱者にとって重要な手段が経済の「武器化」です。 ただし、経済を「武器化」するにあたって、国際的に一定の規範をつくる努力は必要だとおもいます。ザックリ言えば、とくに大国の側が、安全保障にかかわらない些少な問題で経済を「武器化」するのは認められないでしょう。 その観点からみると、>>3で例示した中国のオーストラリアに対する制裁は強い疑問が残るものでした。中国の学者がまず中国のやり方を批判してこそ、その中国の学者の議論の説得力は増すだろうとおもいます。 一方で、このたびのロシアは軍事手段にうったえる前に、もっと経済的な方法を「緻密に」考えればよかったはずです。ロシアも依存を「武器化」してやるぞとおもったのでしょう(西欧はガスが必要なのでロシアの軍事侵攻に反対できないと考えただろうということ)。 しかし、はっきりと言う人は少ないのですが、2014年からずっと軍事侵略をつづけ、クリミア等を実質的に自国とした上で、さらに領土を求めて新たに大規模な軍事侵攻をし、弱者でもないのにガス供給の停止を持ち出すというのは、あまりにも理がなく、西欧の神経を逆なでする行為でした。
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今回孫崎さん提示の議論のなかの「相互依存が「武器化」することを避けなければならない」については、実際上無理だとおもいます。
たぶん19世紀ごろであれば戦争になったようなことでも、現在は戦争へのハードルが高いので容易には戦争になりません。しかし国家間の紛争はなくなってないので、相手を自分のおもいどおりにさせる手段として、経済の「武器化」は今後もそうとう長期間残り続けるとおもいます。つまり、紛争がある限り、経済は必然的に「武器化」するのです。
むしろ、このたびの北朝鮮に対して、安保理理事国15カ国のうち、13カ国は制裁に賛成なのに、中国とロシアが反対したことで国連として制裁ができなかったことにみられるように、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220527/k10013645531000.html
日本の安全保障に大きくかかわる問題でも経済の「武器化」がうまくいかないことにこそ、危機感をもつべきだとおもいます。日本にはたいした軍隊がなく、核兵器もないため、経済を「武器化」するのは日本の防衛にとって重要であり、今後その経済も縮小してゆく日本にとって、ますますその「武器」をみがくことが重要だとおもいます。ときどき、「日本にしかできない技術を持ち続け、日本を必要とおもわせ、バランサーになる」という論者があらわれますが、その方の議論も、有り体にいえば、「いざとなれば」経済を「武器化」することを前提にしています(その方がどうおもっていらっしゃるか知りませんが)。
経済の「武器化」に反対、というのは、核兵器をもち軍事力もじゅうぶんで、軍事侵略もできる大国の側の論理です。その大国の侵略を許せば、それを見た同じような別の大国がほかの地域で侵略します。こういう国々に対して hot war をできれば避けつつたたかう、とくに弱者にとって重要な手段が経済の「武器化」です。
ただし、経済を「武器化」するにあたって、国際的に一定の規範をつくる努力は必要だとおもいます。ザックリ言えば、とくに大国の側が、安全保障にかかわらない些少な問題で経済を「武器化」するのは認められないでしょう。
その観点からみると、>>3で例示した中国のオーストラリアに対する制裁は強い疑問が残るものでした。中国の学者がまず中国のやり方を批判してこそ、その中国の学者の議論の説得力は増すだろうとおもいます。
一方で、このたびのロシアは軍事手段にうったえる前に、もっと経済的な方法を「緻密に」考えればよかったはずです。ロシアも依存を「武器化」してやるぞとおもったのでしょう(西欧はガスが必要なのでロシアの軍事侵攻に反対できないと考えただろうということ)。
しかし、はっきりと言う人は少ないのですが、2014年からずっと軍事侵略をつづけ、クリミア等を実質的に自国とした上で、さらに領土を求めて新たに大規模な軍事侵攻をし、弱者でもないのにガス供給の停止を持ち出すというのは、あまりにも理がなく、西欧の神経を逆なでする行為でした。