りゃん のコメント

少し歴史のはなしをします。

清朝が東トルキスタンを征服したのは1759年のことです。日本でいえば喜多川歌麿、伊能忠敬や杉田玄白といった人々が生きていた時代と重なります。つまりわりと最近のことです。
しかもその後もいろいろあり、1860年代、1870年代には東トルキスタンにはイスラム教の神政王国がうちたてられ、清朝から独立しています(英雄ヤクブ・ベクのことは以前に一度ここに書かせていただいたことがあります)。日本でいえば明治維新のあとに及びます。つまりごく最近のことです。

ウイグルのひとびとには、この、わりと最近まで自分たちは「中国」ではなかった、ごく最近も独立国であったという記憶が強く残っています。

また、注意すべきは、東トルキスタンを支配したのは、「清朝」であったということです。「清朝」は満州族とモンゴル族が連合してつくられた帝国で、漢族は被支配民族にすぎませんでした。

上に書いたイスラム教の神政王国を平定したあと、1882年に清朝ははじめて「新疆省」を置き、漢族を統治に関与させます。漢族が東トルキスタンの支配に関与したのは清朝ではこれがはじめてです。これはかなり重要なことで、同様なことが起きたモンゴルやチベットでも漢族の支配をきらって独立運動が高まります。

そしてその後清朝の滅亡(1912年)、「中国」の内戦や日中戦争をへて、漢族が本格的に東トルキスタンの支配を強めたのは、20世紀半ばからです。

補助線として沖縄のことを考えてみます。琉球王国は1879年に沖縄県の設置によって最終的に崩壊し、その後日本支配が確立します。その後も平坦ではありませんが、少なくとも、日本が(漢族がウイグルでやっているような)沖縄人の大規模な強制収容所をつくって強制労働させたり、女性に強制不妊手術を受けさせたり、移植臓器を摘出したりしたことはありません。日本人と強制的に混血政策をすすめたこともありません。米軍基地問題はありますが、日本は全体としては沖縄に対して今でも多額の予算を振り向け、沖縄の伝統文化を守ることを奨励するなど融和的な支配に徹しています。

民族としては、(漢族とウイグル人とはちがい)日本人と沖縄人とは外見も似ていて、DNA的にもほぼ同じ、ことばも古い琉球語と古い日本語とにかなり共通した点が認められるそうです。

それでも、今現在でも、「沖縄戦のときの(真実が那辺にあるか不確かなような)日本軍の蛮行」「日本の沖縄侵略」「沖縄独立」が取りざたされます。中共、韓国、北朝鮮からの勢力がなにやら不穏な動きをしているという話題はしょっちゅうあります。米国はもちろん沖縄の歴史についてなにもかも承知のことでしょう(ペリーは日米修好通商条約が結ばれる前に琉米修好条約を結んでいます)。

つまり何を言いたいかというと、ウイグルで起きているのは、ウイグル人に即していうなら、テロではなく独立運動であり、それがおきるだけの歴史的背景もあれば、現実に漢族は侵略レベルの弾圧をしているということです。ここまでは、米国など外国は関係なく、ウイグル人と漢族との問題です。ここは非常に大事です。
ですがしかし、そこに外国勢力が絡んでくるのも国際社会の当然の結果ということです。

孫崎さんは、米国議会にケチをつけていますが、失礼ですが、まちがっているとおもいます。中共が本気でウイグルを自国の内政問題ととらえるなら、ウイグル産品を輸出よりも数倍の値段で中共の中央政府が買えばいいだけのことです。

この件はもう少しだけ続きがあるので、書ければ今晩また書きます。

No.14 34ヶ月前

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