りゃん のコメント

さっそく何か本を注文しようと調べてみたところ、全卓樹教授が物理学者であることに軽くとまどいつつ、下のブログをみつけたので休憩時間に読んでみた。
http://mathenv.kochi-tech.ac.jp/2018/07/28/galam1/

まず、このモデルは 【二つの状態1(賛成)と0(反対)をとることのできるエージェントが N 人いる系を考える。N は非常に大きいとする】 という前提をおいている。なので、「中国中央政治局常務委員会」はモデルの対象外であった。

注意すべきだとおもったのは、浮動型を
【グループ内多数決に従って、多数派の状態へとアップデート】
する型と定義していることだ(①)。

孫崎さんの記事では(あるいはもともとの日経記事がそうなのかもしれないが、読んでないのでわからない)、浮動型を【多数の意見に左右される】としか書いていない。たしかに間違いとはいえない書き方だが、【多数決に従って、多数派の状態へとアップデート】と明確に書いておらず、誤解の生じる書き方だとおもう。(わたしは誤解していた)。

もうひとつ注意すべきは、【系は r 人のエージェントからなるグループにランダムに分割される】(ブログ記事はr=3といういちばん簡単な場合で考察)、【グループ内 r 人での意見の多数決をとって、各エージェントは新状態に変化する】というテクニックを用いていることだ(②)。

①②の前提があれば、固定型(孫崎さんの記事では確信者と表現されている。またつねに賛成する固定型とつねに反対する固定型の二種類が想定できる)の二種類のうち一方がじゅうぶんに大きければ、最終的に多数決の結果が多いほうの固定型になってしまうというのは、自分には直感的に明らかに感じられる。

ただし、具体的に「じゅうぶんに大きければ」というその数値の大きさを計算した点、そして、その大きさがそれほど大きくはないということを明らかにした点が新しいのだろう。

あと、「懐疑型」という型を想定し、これの存在が「実質的に固定型の力を増す手助けになっている」というパラドキシカルな結果を導くという点を指摘しているのも新しく感じる。

ただ、現実の世論を分析するにあたっては、やはり①②の想定がかなりテクニカルに感じてしまった。もちろんモデルであるから、かまわないのだが。

暫定的な結論として、アマルティア・センの自由主義のパラドックスを最初に聞いた時ほどは、(今まで世論力学を知った範囲では)感心しなかった。ガラムとの共著論文を読めば、「民主主義を強く信じていた人々にすくなからぬ動揺を与えた」という、その動揺を追体験できるのかもしれないが、その元気がない。

No.21 40ヶ月前

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