岡井 敏著「平和憲法だけで国は守れる」より- 「核禁止条約は国連総会で承認されたが、三年経った二〇二〇年(令和二年)になっても批准国は四十で、条約が効力を発するために必要な五十に達するかどうか危ぶまれている。それに有力国の殆ど全てが背を向けている状態で、条約に実効力が生ずるのか否か。肝腎のことが危ぶまれているのである。 条約の賛成派と反対派とで、悪いのは、もちろん反対派だ。議論をしない。議論をしたら負けると思っているのだろう。彼等はしきりに、世界の現状を維持しているのは、核抑止力であると言う。確かに核抑止力は、核兵器を持たない国に対しては効力があるだろう。力の絶対的格差は厳然としたものだから、核を持たない国は核保有国に立ち向かわない。戦争とはならないのである。しかし問題は、核保有国同士の対立で、これが本質的な問題なのだが、肝心のこの場合、最初から力関係は五分五分なのだ。だから核抑止力なんか何の意味も持たない。実際それは、我々が第四次中東戦争で見た通りだ。何かの手違いで、ロシアは核対決の態勢に入り、アメリカはデフコン3を指令し、発射スイッチを押すか否か、あわや一発の危機になったではないか。核抑止力など、全く無意味になった。こういうことから議論をしないといけないのだ。しかし、そんなことは何故か一切やらない。」
チャンネルに入会
フォロー
孫崎享チャンネル
(ID:18471112)
岡井 敏著「平和憲法だけで国は守れる」より-
「核禁止条約は国連総会で承認されたが、三年経った二〇二〇年(令和二年)になっても批准国は四十で、条約が効力を発するために必要な五十に達するかどうか危ぶまれている。それに有力国の殆ど全てが背を向けている状態で、条約に実効力が生ずるのか否か。肝腎のことが危ぶまれているのである。
条約の賛成派と反対派とで、悪いのは、もちろん反対派だ。議論をしない。議論をしたら負けると思っているのだろう。彼等はしきりに、世界の現状を維持しているのは、核抑止力であると言う。確かに核抑止力は、核兵器を持たない国に対しては効力があるだろう。力の絶対的格差は厳然としたものだから、核を持たない国は核保有国に立ち向かわない。戦争とはならないのである。しかし問題は、核保有国同士の対立で、これが本質的な問題なのだが、肝心のこの場合、最初から力関係は五分五分なのだ。だから核抑止力なんか何の意味も持たない。実際それは、我々が第四次中東戦争で見た通りだ。何かの手違いで、ロシアは核対決の態勢に入り、アメリカはデフコン3を指令し、発射スイッチを押すか否か、あわや一発の危機になったではないか。核抑止力など、全く無意味になった。こういうことから議論をしないといけないのだ。しかし、そんなことは何故か一切やらない。」