りゃん のコメント

憲法理論的には、事実を素直にみるなら米国こそが現行日本国憲法の憲法制定権力であり、憲法制定権力は憲法の上位にあって憲法に縛られないというだけのことだ。この構造を脱するには、(仮に一言一句同じ憲法をふたたびつくることになっても)一度は現行憲法を否定することを通じて憲法制定権力を否定しなければならない。こういう身もふたもない構造から、目をそらしてはいけない。目をそらすから、いつまでもこの構造を脱することができないのだ。

当時の日本人の心情をおもうなら、日本国民は死力を尽くした総力戦をおこない、国際法違反の大殺戮を受けてへとへとになって敗戦し、その結果米国に支配され日本国憲法を与えられたのである。その米国が、日本国憲法に違反した行為を日本に強制したからといって、ようやく終戦をむかえたばかりの当時の日本人に、掃海程度のことを、「日本国憲法を盾に米国にあくまでも抵抗すべきだ、そうしないからダメなんだ」、などと一応今までは安定した生活を送ってきた後世のわたしにはとても言えない。そういうのは、とんだ思い上がりに感じる。

国際政治的にいうなら、戦争は、金日成が野心をもって南へ侵略したのが発端であり、半島の動乱は日本の安全保障にも直ちに結びつくのであり、そこは今でも看過できない。そして当時は金日成の侵略に対して国連軍が組織されて日本は国連軍の一翼として参加したのであり、国連軍参加は現行憲法違反なのかどうかも本当は議論のあるところだし、戦争の結果南は国を維持できて、その後いまのように発展できた。伊藤一彦の議論は、いかにも北朝鮮(および主体思想派が支配している現在の韓国)から見た議論に感じる。まあ、そういうものを、ありがたがってきたのが、日本のアカデミズムなのだろう。

一般論だが、時代がかわったあとで、前時代の議論をみると、役に立つものもある。しかしある種の神学だとか、ある種の儒教だとかの議論は、どう議論しようと結論が決まっていて、特に議論の仕方に興味があるのでなければつまらないものも多い。

No.10 40ヶ月前

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