りゃん のコメント

政府の側に、国家公務員一般について(国会職員や裁判所職員は別)、憲法15条に由来する選定権があるのは、民主的統制の観点から当然の原則であり、今回の問題は、学術会議議員については政府の選定権にどれだけ制限が加え得るかの問題である。わかりやすくいえば、司法権の独立と同程度の独立性を学術会議にあたえることが憲法上できるかの問題である。

まず、日本学術会議法第三条は 「日本学術会議は、独立して左の職務を行う。 一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。 二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。」とあるのであり、「独立」の内容は条文上決まっている。人事についての独立は規定されていないのであり、田中優子のいう「 内閣総理大臣の所轄でありながら、『独立して』(日本学術会議法第3条)職務を行う機関」という解釈は拡大解釈である。司法権の独立の場合は三権分立構造からの立論もできるが、学術会議ではそれも無理である。

そうすると、「司法権の独立と同程度の独立性を学術会議にあたえることが憲法上できる理由」は23条の学問の自由からということになるが(田中の言っていることも結局そういうことである)、学術機関とは言えそうもない学術会議に、大学と同じ自治権を与えることは無理であろう。

結局、学術会議側に憲法論上勝ち目はないというのがわたしの所見である。

一方、首相は、動画を見れば、任命拒否について「(省庁再編の議論のなかで学術会議には総合的俯瞰的な活動をもとめることになっているので)総合的俯瞰的活動を確保する観点から判断をした。これに尽きる」と言っているのであり、その直後の「(政府の)法案(に異論を唱えたこと)は関係ない?」という記者の質問に対して「全く関係ありません」と答えている。そうすると、首相が「任命しなかった研究者が安倍政権の法案に反対していたことは「無関係」といった」点だけを強調する報道は首相発言の全体像を伝えていないことになるだろう。ただし、「全く関係ありません」というのは、首相からはそういうほかないだろうが、誰も信じはしない。もちろん安保法制反対運動と関係あるのである。

わたしの考えは、①学術会議は廃止して、学術行政についての諮問機関は別に設ける ②そうなるまえに学術会議は自主解散するのがカッコいい(しかし、そういう力量は学術会議内の活動家にはないだろう)

アカデミー的な組織を求めたければ、民間でつくればいいとおもう。ただし、孫崎さんの引用している「 日本科学者会議」なる組織も、そういうことも目指している共産党系の組織だが、けっこう内紛もあるようで、もしも民間でそういう全国組織をつくって権威をもとうとすれば、その組織は現在の学術会議よりも、さらに非政治的な組織になるほかはないと感じる。

No.9 50ヶ月前

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