りゃん のコメント

岡崎氏はなぜ「汚い」と言ったのだろうか。孫崎さんは訳文のせいだと書いているが、想像をさそうところである。

最近、飯山陽という学者が、「イスラム2.0」という概念を提出している。同名の著書もある。アマゾンの内容説明には

ウェブにアップされた『コーラン』「ハディース」。一部の宗教エリートのものだった知識や解釈が、翻訳・検索機能により容易に直接触れられるようになる。原点回帰がすすむイスラム教徒の価値観は、SNSにより極めて早く広範囲に、そして心に深く刺さるものとなり拡散されていく。ヨーロッパでは「同化しない」イスラム教徒たちが、「移住」と「多産」によりイスラム化をすすめる、「静かなるジハード」が進行し問題となっている。

とある。

この概念をわたしなりに補足すると、
1、イスラム教では、ずっと長い間、啓典や重要な宗教文献を読んで解釈し指導するのは、イスラム法学者などの宗教エリートの仕事だった。
2、イスラム教には、非常に攻撃的、他者否定的な部分がある。たとえば日本でも「悪魔の詩」を訳した助教授が、おそらくイスラム原理主義者によって、殺害される事件がおきている(同様な事件は各国で起きている)。しかし、そういう部分はおおむね宗教エリートによって穏やかに解釈し直され(悪くいえばごまかされ)てきた。イスラム教が平和的だというイメージはそこに負う点がおおきい。
3、最近のネットの普及により、たとえばヨーロッパに移住したトルコ人のこども世代(当然コーランを原文で読むようなチカラは一般にない)も、ネットの検索機能などを使いつつ、コーランやハディースに、何が書いてあるかを、自分に読める言葉で知ることになる。かれらはコーランやハディースを読んだとはいえないかもしれないが、コーランやハディースに何が書いてあるかを、宗教エリートのフィルターなしに知ることになる。
4、かれらの一部はイスラム原理主義的になり、たとえば「イスラム国」に自発的に参戦するようになる。
5、目を転じると、キリスト教でも16世紀に宗教改革がおき、印刷術の普及とともに、民衆が直接聖書の内容を知ることになった。その影響はひとことではいえないが、ひとつ重要なことは、それが平和でなく対立の先鋭化をもたらし、有名なだけでもドイツ農民戦争だとか、30年戦争だとかにつながるのである。
6、岡崎氏の目からみれば、イスラム原理主義の攻撃的、他者否定的な部分が「汚い」とみえたのかもしれない。しかし当然ながら、イスラム原理主義者からみれば、岡崎氏のようなのが「汚い」のである。

飯山のイスラム2.0が正しければ、「イスラム国」などは、今後のイスラム世界の大変動の、ほんのはじまりなのかもしれないとおもう。もしかしたら、今後100年200年といった時間軸で世界史へのインパクトを与えるものは、米国や中国ではなく、イスラム世界かもしれない。

わたしはいつも、中国はウイグルをいじめすぎているとおもっている。しかし、若者を無理に死刑にして臓器を抜き取るようなビジネスまではじめているようでは、もはや手遅れであろう。

No.11 52ヶ月前

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