ところで、現代世界の基本になっているのは、西欧近代の編み出した政治体系であるが、その基本には、まず「権利」がある。たとえばBlack Lives Matter運動では、黒人は黒人の権利を主張する。非黒人の権利は、極端にいえば知ったことではない。皆がそうすれば、結局は調和するのだとか、もっといえば、そうするのが義務だ(たとえばイェーリング「権利のための闘争」)とすら考える。 もちろんそれだけではうまくいかないので、政治哲学レベルではさまざまな正義論が語られる。「権利」が日本人にはなんとなく身の丈にあわない服のような感じが(明治以来だいぶたつのにまだ)するのに対して、正義論のほうは、仏教的な背景と適合するのか、日本人にも受け入れられやすいし、日本人もある種の正義論を語る(たとえば宮沢賢治「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」)。そしてある種の日本人は反米以外の正義論を語らないし、中国は、多くの日本人にはわかりにくい正義論しか語らない。
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孫崎享チャンネル
(ID:13458971)
ところで、現代世界の基本になっているのは、西欧近代の編み出した政治体系であるが、その基本には、まず「権利」がある。たとえばBlack Lives Matter運動では、黒人は黒人の権利を主張する。非黒人の権利は、極端にいえば知ったことではない。皆がそうすれば、結局は調和するのだとか、もっといえば、そうするのが義務だ(たとえばイェーリング「権利のための闘争」)とすら考える。
もちろんそれだけではうまくいかないので、政治哲学レベルではさまざまな正義論が語られる。「権利」が日本人にはなんとなく身の丈にあわない服のような感じが(明治以来だいぶたつのにまだ)するのに対して、正義論のほうは、仏教的な背景と適合するのか、日本人にも受け入れられやすいし、日本人もある種の正義論を語る(たとえば宮沢賢治「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」)。そしてある種の日本人は反米以外の正義論を語らないし、中国は、多くの日本人にはわかりにくい正義論しか語らない。