りゃん のコメント

ことし(2019年)米露間の中距離核戦力全廃条約が失効させられた。そもそもこの条約はは1987年にレーガンとゴルバチョフの間で調印されたものである。その背景には、1975年にソ連が長射程、高命中精度等の特徴を持つSS-20ミサイルを東欧に配備したのをきっかけに、1984年から米国が、西独・伊・イギリスに中距離核戦力システムを配備しはじめ、西欧が核戦争の緊張につつまれたという事情がある。1978年ごろから米国から日本に導入されたP3Cについては、このように米ソ冷戦構造に西側諸国・東側諸国全体がまきこまれたという事情が背景にある。なお、この時期に日本を含めて世界中に反核運動が盛り上がったが、ソビエト崩壊時に流出した文書で、反核運動にはソ連の工作が背景にあったことが証明されているという。

P3Cはいきなり中曽根が導入したのではなく、もともと国産開発案もあったが、田中角栄がそれを廃して、米国から調達する道筋をつけたものである。田中はこれに関して、ロッキード社から5億円を受け取っている(いわゆるロッキード事件。なお、メインはトライスター導入の謝礼)。また、中曽根・竹下というのちの首相経験者はじめ十人規模の自民党政治家にもなんらかのカネが配られたと推測されるが、明るみにはなっていない。

P3Cはのちに日本でライセンス生産されるようになり、装備も更新され、現在では業務も対潜哨戒だけでなく、広く哨戒業務となり、不審船対策等にも活躍している。さきごろ韓国軍にレーダー照射されたのもP3Cである。もともと周囲を広い海にかこまれ、その海自体が日本の軍事戦略上の要諦であり、日米戦争時にも制海権を失ったことが沖縄や本土への被害をもたらした。

P3Cについては、日本の対米従属の一点のみで論じるのは、議論不十分の誹りを免れないであろう。
①米ソ冷戦構造の中で、西側の一国である日本として、当時の社会主義をどう位置付けるのか、また、西側諸国から脱落することが、当時の日本になにを意味したか、②そもそも日本は、米国には関係なく海の哨戒業務がかかせないが、国産でゼロから開発するには、武器輸出を禁じられていた日本ではカネがかかりすぎると見られていたこと、③日本は米国に敗戦したのであり、政権政党の政治家たちが米国の影響をうけるのは、当時としては避けられないこと(いまでは、与党にも米国だけでなく朝鮮半島や中国の影響を強く受けている政治家がいるが)。等々の事情も考えるべきであろう。

No.5 60ヶ月前

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