りゃん のコメント

この動きは歓迎する。しかし、限界があるだろうとおもう。

きょうの放送で孫崎さん自身が語っていたように、イタリアはムッソリーニを排除したという事情があり、ドイツはNATOの一員という事情がある(これはイタリアも同じ)。日本とは「大きな構造」が違うのだ。

日本もたとえばNATOのような組織をアジアにつくってその一員になれば(あるいはいっそNATOそのもののアジアにおける一員になれば)、ドイツのようになれるかもしれない。地位協定を合法化するために、「大きな構造」があるのだとしても、その「大きな構造」があってはじめて各々の国の地位協定が合法化されているのであり、「大きな構造」がちがえば地位協定が違ってくるのは当然である。

伊勢崎賢治氏などは、「大きな構造」のほうの役割を軽視し、国民の熱意があれば地位協定は改善できるのだと言ってるようにわたしには見受けられるのだが、檄を飛ばすという意味ではそれを高く評価するが、論理的には無理な議論だといつも思ってみている。今回のこの動きも、国民の熱意を高めるという意味があるにすぎないだろう(もちろんそれはたいへん重要なのだが)。

孫崎さんなどが決して言わないのが、フィリピンの例だ。フィリピンは地位協定改定どころか、米軍基地そのものを一時は追い出した。しかし米軍基地がなかった時も比米軍事同盟が解消されたわけではない。どういう「大きな構造」があれば、米軍基地を完全に追い出しても米との軍事同盟を維持できるのか。そして、どういう「さらに大きな構造」ゆえにフィリピンはふたたび米軍基地を国内に置いたのか。研究というほどのこともない。簡単にわかることだ。

孫崎さんのきょうの放送で、孫崎さんはとうとう日本の防衛をどうするかという視点で語ることがまったくなかった。地位協定を改定しても日米関係は悪くならないという主張だけだった。フィリピンがなぜふたたび米軍基地を置いたのかということから学んではいなさそうだ。

日本は9条を改定し、軍事力を高め、日米相互防衛条約を結び、さらには、フィリピン、台湾やオーストラリアなどとNATO的なしくみをつくるなどという「大きな構造」の変化を通じて、国内の米軍基地を減らし、地位協定も改定してゆけると自分は考えている。

No.5 70ヶ月前

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