りゃん のコメント

この問題は、受験生に対する説明義務違反の違法性の問題と、男女平等違反の問題とにわかれる。前者の違法性は明らかである。孫崎さんの引用する文科省もその立場のようにみえる。

しかし、男女平等違反なのだろうか?

孫崎さんは「日本は何時から、男女平等を踏みにじっていい国になったのか。」と糾弾するが、その「男女平等」は、現行の憲法学上すでに機械的・絶対的平等ではないことに注意する必要がある。

【14条の平等は、事実上の差異を考慮して、合理的理由があれば(注)法律上違った扱いが許される相対的平等である】というのが、現行憲法学の到達点である。その考えに立って、「女性専用車両」をはじめ様々な女性優遇策が、合理的な理由があるとして認められてきている。ならば男性優遇策が認められてはならない理由は理論的にはないはずである。

そして実際に「東京女子医科大学」という、女性しか入学を許されない大学が存在している。そうであれば、男性の入学を優遇する大学が許されないかどうかは、合理的理由の有無にかかっているのであって、14条を示せばそれで終わりなのではない。14条は逆に議論の出発点なのである。

孫崎さんの議論は乱暴である。

医療という現実的問題を解決しなければならない責任者のひとびとにとって、男性を優遇するのはやむにやまれぬ事情があった可能性もある。それを男女平等違反として上から杓子定規に糾弾するのは簡単ではあろうが、典型的な役人根性ともいえよう。現場の怨嗟のうめき声があるのかないのか。もう少し、事実を集めてから、判断しても遅くはないだろう。


注)合理的理由の必要性の程度は問題に応じて様々で、それは結局違憲性判定基準のちがいというかたちであらわれる。また、東京医大と受験生とは私人どうしなので、憲法は直接は適用されない。いまは立ち入らないが、こうした問題もあることを指摘しておく。

No.6 76ヶ月前

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