豊洲新市場予定地の,2年間の地下水モニタリング期間の最終モニタリング結果を受けた専門家会議の記者会見を,IWJの録画で全編を通して興味深く視聴した.結果は専門家会議も驚く程の「汚染物質濃度の急上昇」の検出が公表された(ただし暫定値扱い→後で取り消せる余地残す). どうしてこのような急激な変化が生じたのか平田座長も首を捻り,”採水時の試験水中への懸濁土粒子の混入による影響”をそのひとつの可能性として挙げ,原因究明のため追って採水分析の追加確認調査の実施となった. 確かに「採水方法」と「地下水管理システム稼働による揚水の影響」は原因究明のポイントだろう.ただし「採水方法」による影響は学術的に微細に考えればその通りだが,今回の採水分析を請け負った指定調査機関(環境省が技術力など認め許認可)も,基本的には土壌汚染対策法のマニュアルに基づいて実施しているであろうし,また注目を集めている豊洲の案件だから,それ程雑な仕事はしていないだろう.分析も慎重を期しているだろうから採水分析誤差は小さいと推察する.むしろ後述するように過去にしがらみがなければ,しっかりとした仕事をしていると考えた方が当たっているように思える. 今回の,この不可思議な現象を多少の知識を有する者として個人的に若干の推察をして見た. 1.地下水管理システムの揚水井を稼働させたことで地下水の流動が生じ,地下水採取の観測井の中に汚染地下水が流入した可能性. <推察等> 当然考えられる現象.この事は汚染物質が地層(土壌)中・地下水中に環境基準を超える量でまだ残留している事を示唆しているし,常識的に考えればこの濃度の汚染地下水が検出されたのであれば,地層中の地下水のこの状態はこれから長期間続く筈.まともな採水分析をすれば次回も同様の汚染物質の検出が容易に推察される. 2.今回の地下水モニタリング分析は都の責任者の説明によれば,これまでモニタリングを実施して来た会社と交替して,新規の会社が入札の結果請け負ったとの事.採水分析会社の内訳は大別すると以下の様だ.第1回~第8回までは「土壌汚染浄化対策工事」を請け負ったゼネコン会社,もしくはその関連会社がモニタリング分析を実施している. 第1回~第3回 1社で実施 (「土壌汚染浄化対策工事」請負会社もしくは関連会社) 第4回~第8回 2社で実施 (「土壌汚染浄化対策工事」請負会社もしくは関連会社) 第9回(今回) 1社で実施(新規の会社,関連性は不明) <推察等> 「土壌汚染浄化対策工事」を請け負った会社もしくはその関連会社が,汚染浄化の効果を確認証明する採水分析まで実施したとなると,浄化工事の施工結果的にも心情的にも,地下水モニタリング結果は環境基準を超えないことが望ましいと考えてしまい易い.もし環境基準を超えてしまうような結果が出れば浄化工事の再実施の可能性が生じてしまう. 平田座長が汚染濃度の急上昇の原因に「採水方法」と「地下水管理システム」の点に目を付けたのは妥当な所だろう.特に「採水方法」の確認はこの分析結果のスタートの部分なので重要だ.室内分析の過誤はデジタル・アナログの個々の分析波形を見ればすぐにわかる簡単な問題だが,採水の現場部分は見えにくい部分だ. 第1回目の専門家会議で,平田座長が土壌汚染浄化工事を受けた地下水モニタリングの結果がとても良い事だった事に驚いていたシーンが印象的だった.しかしあまりにも「土壌汚染浄化対策工事」がうまく行っている事が気にかかる.均質一様ではない地下土壌汚染の浄化工事はなかなか難しいのが実際の所だ.前回かその前かの専門家会議で,一般参加の方から”観測井に水を注入していた”ような発言を聞いた記憶がある.何時の時点での出来事なのかその場では証言されていなかったが,無いとは思うが第1回~第8回の採水で,採水前に数ヶ月放置していた観測井内を洗浄(不純物を除去)の目的で清浄な水を注入し,その後に採水のような疑義も残ってしまう. 今後の採水分析ではクロスチェックを行うことになったが当然だろう.ただし,一般参加した日本環境学会元会長の「畑 明郎」氏ほか参加者が要請したように,採水分析クロスチェックのメンバーに市民側が推薦する学術者や分析機関の第三者を立会・入れることが,豊洲新市場予定地の浄化工事結果などの信頼性高めることになる筈だし市民・都民も納得出来る一番良い方法だろう.しかし平田座長は,都の身内機関の東京都環境科学研究所を入れることには積極的だが,市民側の要請には消極的・否定的だ.せっかくの小池氏の開かれた都政との公約を閉じようとしている様にも見えてしまう.何か不都合なことでもあるのだろうか?.(2017年1月15日)
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豊洲新市場予定地の,2年間の地下水モニタリング期間の最終モニタリング結果を受けた専門家会議の記者会見を,IWJの録画で全編を通して興味深く視聴した.結果は専門家会議も驚く程の「汚染物質濃度の急上昇」の検出が公表された(ただし暫定値扱い→後で取り消せる余地残す).
どうしてこのような急激な変化が生じたのか平田座長も首を捻り,”採水時の試験水中への懸濁土粒子の混入による影響”をそのひとつの可能性として挙げ,原因究明のため追って採水分析の追加確認調査の実施となった.
確かに「採水方法」と「地下水管理システム稼働による揚水の影響」は原因究明のポイントだろう.ただし「採水方法」による影響は学術的に微細に考えればその通りだが,今回の採水分析を請け負った指定調査機関(環境省が技術力など認め許認可)も,基本的には土壌汚染対策法のマニュアルに基づいて実施しているであろうし,また注目を集めている豊洲の案件だから,それ程雑な仕事はしていないだろう.分析も慎重を期しているだろうから採水分析誤差は小さいと推察する.むしろ後述するように過去にしがらみがなければ,しっかりとした仕事をしていると考えた方が当たっているように思える.
今回の,この不可思議な現象を多少の知識を有する者として個人的に若干の推察をして見た.
1.地下水管理システムの揚水井を稼働させたことで地下水の流動が生じ,地下水採取の観測井の中に汚染地下水が流入した可能性.
<推察等> 当然考えられる現象.この事は汚染物質が地層(土壌)中・地下水中に環境基準を超える量でまだ残留している事を示唆しているし,常識的に考えればこの濃度の汚染地下水が検出されたのであれば,地層中の地下水のこの状態はこれから長期間続く筈.まともな採水分析をすれば次回も同様の汚染物質の検出が容易に推察される.
2.今回の地下水モニタリング分析は都の責任者の説明によれば,これまでモニタリングを実施して来た会社と交替して,新規の会社が入札の結果請け負ったとの事.採水分析会社の内訳は大別すると以下の様だ.第1回~第8回までは「土壌汚染浄化対策工事」を請け負ったゼネコン会社,もしくはその関連会社がモニタリング分析を実施している.
第1回~第3回 1社で実施
(「土壌汚染浄化対策工事」請負会社もしくは関連会社)
第4回~第8回 2社で実施
(「土壌汚染浄化対策工事」請負会社もしくは関連会社)
第9回(今回) 1社で実施(新規の会社,関連性は不明)
<推察等> 「土壌汚染浄化対策工事」を請け負った会社もしくはその関連会社が,汚染浄化の効果を確認証明する採水分析まで実施したとなると,浄化工事の施工結果的にも心情的にも,地下水モニタリング結果は環境基準を超えないことが望ましいと考えてしまい易い.もし環境基準を超えてしまうような結果が出れば浄化工事の再実施の可能性が生じてしまう.
平田座長が汚染濃度の急上昇の原因に「採水方法」と「地下水管理システム」の点に目を付けたのは妥当な所だろう.特に「採水方法」の確認はこの分析結果のスタートの部分なので重要だ.室内分析の過誤はデジタル・アナログの個々の分析波形を見ればすぐにわかる簡単な問題だが,採水の現場部分は見えにくい部分だ.
第1回目の専門家会議で,平田座長が土壌汚染浄化工事を受けた地下水モニタリングの結果がとても良い事だった事に驚いていたシーンが印象的だった.しかしあまりにも「土壌汚染浄化対策工事」がうまく行っている事が気にかかる.均質一様ではない地下土壌汚染の浄化工事はなかなか難しいのが実際の所だ.前回かその前かの専門家会議で,一般参加の方から”観測井に水を注入していた”ような発言を聞いた記憶がある.何時の時点での出来事なのかその場では証言されていなかったが,無いとは思うが第1回~第8回の採水で,採水前に数ヶ月放置していた観測井内を洗浄(不純物を除去)の目的で清浄な水を注入し,その後に採水のような疑義も残ってしまう.
今後の採水分析ではクロスチェックを行うことになったが当然だろう.ただし,一般参加した日本環境学会元会長の「畑 明郎」氏ほか参加者が要請したように,採水分析クロスチェックのメンバーに市民側が推薦する学術者や分析機関の第三者を立会・入れることが,豊洲新市場予定地の浄化工事結果などの信頼性高めることになる筈だし市民・都民も納得出来る一番良い方法だろう.しかし平田座長は,都の身内機関の東京都環境科学研究所を入れることには積極的だが,市民側の要請には消極的・否定的だ.せっかくの小池氏の開かれた都政との公約を閉じようとしている様にも見えてしまう.何か不都合なことでもあるのだろうか?.(2017年1月15日)