国際法を無視した中国の西方海域侵奪、ミサイルと核実験を重ねる北朝鮮の瀬戸際政策

と隣邦の動きにキナ臭さを増すなか、安倍政権の強気な対応がめだつ。

 それでいいか、と自問する国民世論のなかにも、戦後70年間の営為を忘れて、幕末改憲

派の主張を受け入れそうな流れが露わになっている。

 そんな国民の気を引き戻し、世界情勢の冷静な分析と深層考察がいかに重要かに気付か

せてくれるのが本書である。

 国際情報戦の真っただ中に長年身を置き、一触即発の修羅場を体験してきた筆者が、本

書中に披露する秘話やデータはその一つ一つが貴重だが、それらを基にして得られた結論

が安倍政権の目指す方向とは真逆であることは。読者にとって意外そのものだ。

 著者によれば、「テロとの戦いがテロを誘発」し、「集団的自衛権こそが平和を壊す」ので

あり、「日本の軍事力が実は無力」なのだ