というわけで、第二回の放送が終わりましたが、如何だったでしょうか?
今回は「センター試験の『生物』を解いてみよう」というお題にかこつけて、自然科学そのものについて解説する回でしたが、しまさんのおかげで分かりやすい回になりました。
それでも、打ち上げにて、岡崎フラグメントについては誰一人理解して貰えなかったということが判明しました。精進が必要ですね。
また、色々と質問も寄せて頂き、ありがとうございます。
答えられるものについては次回のブロマガで回答しますね。
さて、自分が自然科学の面白さに初めて触れたのは、大学の研究室でした。生物学について学びたくて進学したのですが、一年次の講義は高校の授業の延長線上にあるようなものばかりで、サークル活動ばかりに熱中していました。付属高校から進学した同窓生の中には「行ける学科の中で最も偏差値が高いからここを選んだ」なんて奴もいて、この学部のこの学科に行きたいがためにちょっと偏差値を落として入学した自分は、イライラしていたことも記憶に残っています。
ところが、二年次になって専門的な講義が増えると、途端に面白くなりました。どうみても変人としか思えない教授陣が、自分の専門について熱く語るさまに、たまらない面白さがありました。高校の時の、学校学習指導要領に管理された講義には無い魅力がありました。
その中でも、スキンヘッドで、愚地独歩と山田五郎を足して二で割ったようなI教授の講義に、特に惹きつけられました。
I教授が拘っていたのは、専門用語の発音でした。たとえば「リソソーム」と呼ばれる細胞小器官があります。これを英語で書くと”lysosome”になるのですが、英語では「ライソザイム」と発音しなくてはなりません。それも、「ラ」にアクセントを置いてです。
「日本の医学・生物用語はドイツ語の影響が強いので、英語がスタンダードとなっている国際学会で日本のカタカナ専門用語は通用しない」
「専門用語が一つ分からないと、いつまでも気になって講演内容全体が分からなくなる」
「だから研究室の日常会話でもリソソームではなくライソザイムと発音すべきである」
などと言うのです。パックンマックンのコントで少年マガジンを「少年Magazine」と英語のイントネーションで発音するというネタがありましたが、教室は劇場と同じような笑いに包まれていたものです。
こんなこともありました。一年次の末にオウム真理教の地下鉄サリン事件が起こったのですが、I教授は自然科学を学んだ学生がカルト宗教にハマることが許せなかったのでしょう、すぐさまネタにし、講義のところどころで「論文書くぞ・論文書くぞ・論文書くぞ」、「実験するぞ・実験するぞ・実験するぞ」、「おれはインコ心理教を信じている」とネタにしたのです。
ところが、ある時期を境にぱったりと辞めてしまいました。後で理由を聞くと、何を誤解したのか、生徒の嫌がらせか(I教授は講義中の私語に厳しく、名指しして教室から追い出すのですが、それを逆恨みする生徒もいました)、「オウム真理教のことばかり喋っている教授がいる」と警察に通報した学生がいたそうです。「最近の学生は冗談が通じない」I教授は苦笑していました。今だったらTwitterで炎上しそうな話です。
そんなこんなで、すっかりI教授に魅了された自分は、三年次の研究室配属でI教授の研究室を選びました。その理屈っぽい言い回しや笑いのセンス、何よりも、自分の能力の全てを自分なりにコントロールしようとする姿勢に惹かれたのです。
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