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マクガイヤーチャンネル 第305号 2021/1/6
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新年あけましておめでとうございます。マクガイヤーです。

今年はあまり正月休みが無かったのですが、ドラマをイッキ観したり、実家にちょっとだけ帰ったりと、それなりに充実した休日を過ごせました。


先日の放送「最近のマクガイヤー 2021年1月号」は如何だったでしょうか?

その後の夜勤のせいでなにも覚えていませんが、ちゃんと話したいことを話せたような気がします。



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



〇1月17日(日)19時~「『チェンソーマン』と新しいジャンプ・ビルドゥングス・ロマン」

「週刊少年ジャンプ」に連載されていた藤本タツキの『チェンソーマン』が97話で完結を迎えました。と同時に、アニメ化と第二部の連載が発表されました。この発表の数日前に『このマンガがすごい!2021』オトコ編の1位も受賞しました。

当チャンネルで扱った『僕のヒーローアカデミア』、ベテランがタッグを組んだ『Dr.STONE』、劇場版が歴史的大ヒットとなった『鬼滅の刃』、『鬼滅』の次にヒット作になると言われている『呪術廻戦』……いま、ジャンプが何度目かの黄金期を迎えています。過去のそれらと同じく、「いま」という時代に合わせた形で。

その最たるものが『チェンソーマン』であるのではないでしょうか。


そこで、いかにもジャンプらしい面と、まったくジャンプらしくない面を併せ持った本作品の魅力について、藤本タツキの前作『ファイアパンチ』も参照しつつ、解説するようなニコ生を行います。


ゲストとして声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)をお迎えしてお送り致します。



〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

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合わせてお楽しみ下さい。




さて、今回のブロマガですが、『ラヴクラフトカントリー』について書かせて下さい。


●『ラヴクラフトカントリー』観ました

年末年始、観よう観ようと思っていてずっと観れなかった映画やドラマを観ておこうと思っていたのですが、『クイーンズ・ギャンビット』にしようか『ソウルフル・ワールド』にしようか思案した挙句、結局『ラヴクラフトカントリー』を観ることにしました。

何故かというと、2020年12月31日23時59分で、Amazonプライムから入会するスターチャンネルでは配信停止になってしまうからです。

なんでも、アメリカでの新作映画ネット配信のあおりを受けているからだとか(https://news.yahoo.co.jp/articles/06e09ab73b50e708289a6ca0e2c0513a92bc076f)、HBO Maxが日本でサービス開始するからとか言われています。

Amazonで配信終了したとしても、今後どこかのサービスで配信すると思うのですが、少なくとも数か月は簡単に観られなくなりそうなので、急いで観ることにした次第です。締め切りがないとやる気が出ないタイプです。



●最近のアメリカTVドラマ

観始めたのが12/30夜、毎年観てる『笑ってはいけない』は録画することにして、ギリギリ年内に全10話を観ることができました。特に『インディ・ジョーンズ』な第4話からの勢いが凄まじく、『トワイライト・ゾーン』のように人種的立場が入れ替わる第5話、韓流ドラマとジュディ・ガーランドが重ね合わせられた第6話……と、目を離すことができませんでした。

特に、「ヒッポライタ」という名前の意味がしっかりと意味を持つことになる第7話は驚天動地の内容で、黒人少年ボボことエメット・テイルがフィーチャーされる第8話や『ウォッチメン』とは異なる形でタルサ暴動を描く第9話へと続く名エピソードでした。

『ウォッチメン』を観た時も思ったのですが、近年のアメリカのドラマは後半になるとそれまで脇役かと思ってた人物がいきなり主役の回になり、脇役人物の視点で回想しつつもメインストーリーが進み、最後はそれまでの登場人物が集結して大盛り上がりのエンディングを迎えるという構成をとることがよくあります。小説でいうところの連作形式みたいなものなのですが、同じ配信であっても、2時間前後の映画の形式でこれをやることは困難で、多様な人物の多様な立場における多様な行動を一つのテーマに沿ってまとめあげることで、えもいわれぬ感動が生まれるのが最大の魅力です。これは『マンダロリアン』も同じでしたね。



●『ラヴクラフトカントリー』とラヴクラフト要素

それほどラヴクラフトにもクトゥルフにも詳しくないのですが、本作の作り手がラヴクラフトやクトゥルフを始めとする幻想文学、ひいてはジャンルものの映画や小説やコミックが大好きな一方、ラブクラフトが持っていた(その時代を生きていたマジョリティとしての白人相応の)人種差別性――ユダヤ人や有色人種や異教徒や、それらとの混血に対する嫌悪――に納得できず、このことが発想の根幹にあることはよく分かります。

特に1、2話は、クトゥルフものの代表作の一つとされる『インスマスを覆う影』で描かれた自らの祖先を調べると古の怪物との混血であったという恐怖とその裏返しの情景や選民意識を踏まえて作られているのが分かります。これらは、原作は異なるのですが同じラヴクラフト原作の『ヘモグロビン』でもしっかり描かれていて、誰もが考えるラヴクラフトらしさであるのでしょう。その上で『ラヴクラフトカントリー』は、白人奴隷主による黒人奴隷レイプや、奴隷貿易による蓄財すなわち人種的搾取といった歴史的事実と重ね合わせているのがキモなわけです。

冒頭の主人公の台詞「作家本人とその作品とは別のものだよ」はこれから描こうとしようとするテーマをよく表していますが、すっかりくたびれたおじさんが貴重な本を読める嬉しさに小躍りする第二話冒頭、殺し殺される関係の民族に属する二人が文学や映画をきっかけに心を通わす第6話、「主婦」がかなわなかった芸術や音楽や冒険の夢を叶える第7話は圧巻です。

……まぁ、話が進むに連れて、あまりラヴクラフトが関係なくなっていくのですが、そこら辺は作られるかもしれないシーズン2以降を楽しみにしたいと思います。ショゴスが「古のもの」の奴隷だったネタはショゴス・ロードを出すなどして、もっと深掘りされると面白そうだと思うのですが、本作の狙いはラヴクラフトネタの深掘りとは別のところにあるのだと思います。