おはようございます。マクガイヤーです。
今年も一年、本チャンネルをお楽しみいただきありがとうございました。
来年も頑張りますのでよろしくお願いいたします。
先日の放送「Dr.マクガイヤーのオタ忘年会スターウォーズ2020」は如何だったでしょうか?
しまさんの仰るように、スターウォーズをあまり知らない人が『マンダロリアン』を観たらどう思うのか、気になるところではあるのですが、とりあえずマンダロリアンのヘルメットは買ってしまおうかどうか悩んでるこの頃です。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
〇1月4日(月)18時~「最近のマクガイヤー 2021年1月号」(いつもと時間が異なりますのでご注意下さい)
・『無頼』
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
〇1月17日(日)19時~「『チェンソーマン』と新しいジャンプ・ビルドゥングス・ロマン」
「週刊少年ジャンプ」に連載されていた藤本タツキの『チェンソーマン』が97話で完結を迎えました。と同時に、アニメ化と第二部の連載が発表されました。この発表の数日前に『このマンガがすごい!2021』オトコ編の1位も受賞しました。
その最たるものが『チェンソーマン』であるのではないでしょうか。
そこで、いかにもジャンプらしい面と、まったくジャンプらしくない面を併せ持った本作品の魅力について、藤本タツキの前作『ファイアパンチ』も参照しつつ、解説するようなニコ生を行います。
ゲストとして声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)をお迎えしてお送り致します。
〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
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合わせてお楽しみ下さい。
さて、今回のブロマガですが、前回の続きとして、ウルトラシリーズにおけるにせウルトラマンの流れと『ウルトラマンZ』について書かせて下さい。
●漫画版での人間ウルトラマン
「人間」としてのウルトラマンには、もう一つの流れがあります。漫画版のウルトラマンです。
皆さんも、ネットで一度か二度は「酒を飲んで酔っ払う帰ってきたウルトラマン」の姿をみかけたことがあるかもしれません。
これはコロコロコミックに連載されていた『ウルトラ兄弟物語』の1シーンになります(https://bunshun.jp/articles/-/12618)。
『ウルトラマンレオ』の終了後、テレビでのウルトラシリーズは一旦休止しますが、版権収入のために漫画や雑誌展開というかたちでウルトラマンの物語は、(主に小学館で)続いていました。それが内山まもるの『ザ・ウルトラマン』、やかたおか徹治の『ウルトラ兄弟物語』、居村眞二作の『ウルトラ超伝説』『決戦!ウルトラ兄弟』といった作品群になります。
これらはいずれも人間態がほとんど登場せず、宇宙を舞台とした和製スペースオペラ的作品です。人間が悩んだり苦しんだりしないので、人間のようなウルトラマンが悩んだり苦しんだりヤケ酒を飲んだりするわけですね。
その後、再放送や雑誌・書籍での盛り上がりを受けて、『ザ・ウルトラマン』とほぼ同名のアニメ『ザ☆ウルトラマン』が製作されました。内容は全く違いますし、人間がウルトラマンに変身する話ですが、沢山のウルトラ一族(ウルトラ人)が出てきたり、宇宙を舞台にスケールの大きな冒険譚が語られるスペースオペラ的展開は共通しています(『ヤマト』の影響を受けた面が大きいですが)。
『ウルトラマン80』の放送後に雑誌と漫画展開を基にした『アンドロメロス』が夕方10分の帯番組で映像化されました。また、ウルトラマンタロウが少年から青年へと成長する姿を描いた映画『ウルトラマン物語』が公開されました。これらは、人間が全く登場しないこと、悩んだり苦しんだりするウルトラマンや敵の宇宙人の声を声優が演じることといった点で、漫画で描かれた「人間ウルトラマン」のコンセプトを映像化したものになります。
平成ウルトラマンの成功により、この路線は途絶えたかに思えたのですが、円谷プロの身売り――円谷一族の経営撤退と、低コストによる製作がコンセプトの一つであっただろう『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』を経て、その映画版である『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』で復活することになります。『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』はウルトラマン(メビウス)とベムラーとの闘いから始まることから、新たなウルトラシリーズの第一作として作られたものですが、俳優ではなく声優が「本体」であるウルトラマンゼロが主役の一人として登場すること、内山まもるが特別出演することから、漫画『ザ・ウルトラマン』のような映画を作ろうというコンセプトは明らかです。実際、監督の坂本浩一や脚本・製作の岡部淳也はそのようなことをコメントしています。また、その後製作された『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』はこのコンセプトを更に推し進めたものであり、『ミラーマン』、『ファイヤーマン』、『ジャンボーグA』に登場したヒーローや怪獣・宇宙人をモチーフとするキャラクターが登場し、声優が「本体」であるキャラクターが大幅に増加しました。
また、『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』には、シリーズ初の(ウルトラの星出身の)悪のウルトラマンとしてウルトラマンベリアルが登場します。ベリアルのキャラクター性の強さ、インパクトの強さにより、現在まで末永く活躍するキャラクターとなったのですが、「悪のウルトラマン」を「にせウルトラマン」の一バリエーションと捉えると、感慨深いです。
●二つの路線の融合作としての『ウルトラマンサーガ』
本流の映像作品と漫画作品の流れをくむ映像作品、二つの流れで「人間化」していったウルトラマンですが、これが遂に一つとなったのが2012年に公開された映画『ウルトラマンサーガ』です。観る前は「遂に円谷プロもAKBに頼ることになったのか」という偏見たっぷりだったのですが、正真正銘の傑作でした。
前述の通り、ファンが作り手となった平成ウルトラマン以降の作品に登場するにせウルトラマンには作り手の屈託があるわけですが、当のウルトラマンそのものにもある種の「ニセモノ感」を感じてしまいます。
『サーガ』に登場するのはダイナ、コスモス、そしてDAIGOが変身することになるゼロなわけですが、島田紳助の遺児である「おバカタレント」にして親学サポーターに、史上初めて視聴者に侘びを入れたウルトラマンに、「うぃっしゅ!」だけでバラエティー番組を乗り切るテレビタレントなわけです。更にこの時期のAKBは飛ぶ鳥をも落とす勢いで、CDはおろか、菓子でもコーヒーでも家庭教師でも、どんな商品でも彼女たちが宣伝すれば売れると言われていました。
しかし、本作はそのような先入観や悪い意味でのタイプキャストによる陳腐化を、(おそらく製作陣の)知恵と志で跳ね除けていたのです。
まず、世界観が良いです。
ほとんどの人が消失した世界というのは、前年の震災を反映したものですが、ここで子供たちのために偽の守護者――ヒロインを演じ続ける少女たちの姿は、当然のように現実のAKBの姿に重なります。『DOCUMENTARY of AKB48』を観るとよく分かるのですが、AKBに限らず近年のアイドルは、彼女や彼らたちが自覚的にアイドルを演じていることに対して、ファンも運営側も自覚的です(ジャニーズを除く)。本作では、しっかり女優として開眼した秋元才加の姿がみられます
また、『サーガ』は作り手が「にせもの」と「ほんもの」の区別にこれまで以上に自覚的です。
ウルトラの国で長老の如く相談しているウルトラマンやウルトラセブン――黒部進や森次晃嗣といったオリジナルキャストの面々が演じる彼らは、まごうことなき「ほんもの」として描かれます。また、ウルトラマンタロウがいないことがその反証のようにも思えます。おそらく、『大決戦!超ウルトラ8兄弟』の時と同じく、篠田三郎はオファーを断ったのでしょうが、石丸博也の声で登場させることはしません。
本作の主人公であるところのタイガ青年は『ダイナ』世界の住人なのですが、このちょっと前からウルトラマンシリーズはマルチバース設定をとっているので、『ダイナ』世界はウルトラの星があるオリジナル世界とも、『ウルトラマンサーガ』でAKBたちが住む世界とも違います。誤解を恐れずにいってしまえば、『ダイナ』世界は、昭和ウルトラマンもおらず、震災の直接的被害も受けなかった、テレビの前の「おれたち」が住む世界です。帰マンによる「すべての平行世界を守ることは無理です」という台詞は象徴的です。東北の人たちが津波で現われた家を去り、避難所で眠れぬ夜を過ごしていたころ、自分の布団で寝ていた「おれたち」は、まるで別の世界にいたようではなかったでしょうか。あるいは、計画停電の闇に包まれていた時、煌々と電気が灯っていた東京に住んでいた「おれたち」は、まるで別の島宇宙に住んでいたようではなかったでしょうか。
そんなタイガ青年が『ウルトラマンサーガ』世界に降り立ちます。そこは苦しんでいる女と子供しかいない寓話的世界です。「実験」と称し、定期的に怪獣を送り込むバット星人を演じるのは東国原英夫ことそのまんま東です。ウルトラマンキングの声を小泉純一郎がアてていたことには馴染めなかった自分ですが、そのまんま東は最高です。311の時、その場限りの人気取りやパフォーマンスに終始していた政治家たちは、まるでバラエティー番組でその場限りの笑いをとりにゆくことだけに熱心な芸人のようではなかったでしょうか。芸人が政治家を演じているようではなかったでしょうか。不気味な胎動をあげ、むくむくと成長してゆくゼットンが象徴するものは明らかです。
『ウルトラマンサーガ』世界に降り立つ男たちは全員ウルトラマンです。史上初めて暴力事件を起こしたウルトラ主人公が、怪獣を優しさの光で落ち着かせる、穏健派のウルトラマンに変身する。ものすごーく無理して「皆のアニキ」を演じる羞恥心の生き残り――「おバカタレント」と言われていた男が、「伝説のウルトラマン(これもまた「ニセモノ」にすぎないのですが)」に変身します。『ダイナ』のエンディング・テーマが、放映当時よりも意味のある使い方をされます。「世界は終わらない」という放映時は大仰すぎて寒く聞こえた歌詞が、心に刺さるように響くのです。
そして、タイガ青年を演じるのは、これ以上薄っぺらい男がいたのかというくらい薄いキャラクターを演じている、テレビタレントのDAIGOです。ここには『レスラー』や『ブラック・スワン』と同じ効果が発生します。
パニックに陥り、「助けて、ウルトラマン!」と叫ぶタイガ青年に対し、ウルトラマンゼロ本体である宮野真守が発する台詞が熱いです。
「しっかりしろ、今はおまえがウルトラマンだ!」
今はおれが、「おれたち」が、こんなに薄っぺらくて、こんなに「ニセモノ感」に溢れるおれたちが、ウルトラマンなのです。
●ニュージェネレーションヒーローズのにせウルトラマン
かなり気合の入った映画を作りつつも、社会的なブームやムーブメントをおこせなかったウルトラシリーズですが、バラエティー番組のようでありつつ日常に非日常が闖入する特撮作品の本質的おもしろさを追求した『ウルトラゾーン』や原点回帰である『ネオ・ウルトラQ』を経て、念願のテレビシリーズのウルトラマンである『ウルトラマンギンガ』が始まります。
『ウルトラマンギンガ』は舞台のほとんどが小学校とその周辺という、製作現場の辛さを想像させるものでしたが、本作で主役のウルトラマンと同じ力を持ち、対となる存在であるダークルギエルが作品を通しての敵として設定されたこと、本作が後に新世代のウルトラマンシリーズである「ニュージェネレーションヒーローズ」の第一作と定義されたことは、興味深いです。
以後、ニュージェネレーションヒーローズでは、『ウルトラマンX』を除いて、ウルトラマンとほぼ同じ力を持つ存在が作品を通しての敵役や悪役やライバルキャラとして設定されることになります。
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