おはようございます、マクガイヤーです。
前回の放送「映画界のメフィストフェレス 川村元気と映画ドラえもん」は如何だったでしょうか?
しおり先生がノリノリで、まさにネ申回でしたね。
なんだかしおり先生の心の闇を垣間みてしまったかのような感もありますが……
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
○3月24日(土)20時~
「最近のマクガイヤー 2018年3月号」
いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○4月14日(土)20時~
「最近のマクガイヤー 2018年4月号」
・最近の選挙
その他詳細未定ですが、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○4月28日(土)20時~
「『レディ・プレイヤー1』と『ゲームウォーズ』とスピルバーグ」
4/20よりスピルバーグの新作映画『レディ・プレイヤー1』が公開されます。
本作はアーネスト・クラインが2011年に発表したオタクコンテンツのスーパーロボット大戦のようなSF小説『ゲームウォーズ』を原作としています。VR空間を舞台にデロリアンやビバップ号が疾走し、レオパルドンやボルトロンがバトルするさまに、そのスジの読者は狂喜したものでした。
そんな『ゲームウォーズ』が映画化される、それもスピルバーグの手によって! スピルバーグによる有名小説やコミックの映画化は、ガッカリする結果になることもままあるのですが、予告をみる限り誰もが納得する映画化のようです。また、スピルバーグが全作品に渡って追い求めてきたテーマ「大人になること」「Homeを求めること」も当然のように含まれているでしょう。
そこで、これまでのスピルバーグ作品を振り返ると共に、『レディ・プレイヤー1』とその原作『ゲームウォーズ』について解説するのニコ生放送をお送りします。
アシスタントとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)を再度お招きする予定です。
○5月3日(木)20時~
「『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』はなにがインフィニティなのか」
4/27に期待の新作映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が公開されます。
究極のお祭り映画にしてイベント・ムービーである本作を観ない人なんていないと思いますが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)シリーズもこれで19作品目、ここからMCUに入るのに躊躇している人もいるかもしれません。
そこで、これまでのマーベル映画作品を振りかえると共に、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を100倍楽しめるような放送をお送りします。
ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)を再度お招きする予定です。
○5月後半(日程未定)20時~
「最近のマクガイヤー 2018年5月号」
いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
詳細未定
○6月初頭(日程未定)20時~
「石ノ森ヒーローとしての『仮面ライダーアマゾンズ』」
『仮面ライダーアマゾンズ』はシーズン1、2がAmazonプライム・ビデオで独占配信されている特撮シリーズです。
いわゆる平成ライダー1期のスタッフが『アギト』でも『ファイズ』でも『カブト』でもやれなかった仮面ライダー、あるいは石ノ森ヒーローとしての限界描写を突き詰めたような内容で、自分はおおいに楽しみました。
そんな『アマゾンズ』がこの春『仮面ライダーアマゾンズ完結編(仮)』として、劇場公開されるそうです。それも、これまで意欲作(と自分には思える)春のスーパーヒーロー大戦映画枠を廃止してまで公開する劇場版です。未だ詳細な公開日が発表されていないことが気になりますが、大いに期待しています。
そこで、これまでの『仮面ライダーアマゾンズ』を振り返ると共に、あるいは石ノ森ヒーローとしての『アマゾンズ』に迫りつつ、劇場版を予想するニコ生放送をお送りします。
今度のシロタロスは裏切らないぜ!
(公開日決定に合わせて放送日を変更しました)
○Facebookにてグループを作っています。
観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。
https://www.facebook.com/groups/1719467311709301
(Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)
○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。
https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081
さて、今回のブロマガですが、前回ニコ生の補講のようなものを書かせて下さい。
●深夜じゃないTVのアニメシリーズは映画化されるという風潮
現在、テレビのゴールデンタイムで放映されているアニメは『ドラえもん』、『クレヨンしんちゃん』、『ポケットモンスターシリーズ』、『スナックワールド』の4作品のみです。夕方6時台まで幅を広げると、『妖怪ウォッチ』や『名探偵コナン』が入ってきますが、80、90年代に比べると番組数が激減しました。
そして民放で放映されるほぼ全てのアニメ作品は定期的に「劇場版」として映画作品を製作します。『スナックワールド』も『パズドラ』も『プリパラ』も映画になりました。親子二世代が劇場に入り、関連グッズも売れる「TVアニメの映画化」は、それほどデカくてカタいシネコン時代におけるプログラム・ピクチャーなのです。もっといえば、テレビ局側は、映画化で一稼ぎしなければ自分の局でアニメを放送する意味がないと考えています。
例外は、作者や版権元の意向が絡んでいそうな『ちびまる子ちゃん』や『サザエさん』、作品としてまだ新しい『リルリルフェアリル』や『ベイブレードバースト』くらいです。とはいっても、過去の『ベイブレード』アニメや『ちびまる子ちゃん』は何度か映画化されてますし、アニメ化される前の実写映画『サザエさん』は2シリーズ計13作品も作られた正統なプログラム・ピクチャーでした。
●『のび太の宝島』の商品性
映画『ドラえもん のび太の宝島』は、そんなTVで放映されているアニメシリーズの映画化としては100点満点の商品です。鼻からスパゲッティならぬカルボナーラや、「宝探し地図」の使い方、『のび太の結婚前夜』の台詞を引用する長澤まさみ等、過去作への目配せはばっちりです。スティーヴンソンの『宝島』を下敷きとするのは『南海大冒険』に続いて二回目ですが、映画版にふさわしいスケールの冒険が展開され、「未来人の登場」「レギュラー5人とゲストキャラクターとの交流」「しっかりした物語性(ただしゲスト側の)」といった、抑えるべき点はきっちりと抑えられています。
星野源が主題歌と挿入歌を唄い、どちらもしっかり歌詞が映画の内容にフィットしている点は、さすが若き名プロデューサー川村元気(が脚本書いただけでなくその他の点でも働いた)だけのことはあります。
21世紀に入ってからの邦画シネコン時代において、川村元気がどれだけ時代と寝て、どれだけ意識が高く、どれだけ悪魔的な名プロデューサーであったかは、是非とも今回のニコ生放送をご参照下さい。
もっといえば、シルバー船長の思いや動機を全て台詞で説明させるのも、ビビやガガといった悪役キャラがなんだか(タイムボカン三悪に源流を持つ)90年代アニメチックな「憎めない悪役キャラ」なのも、マリアさんの食堂がジブリアニメチックなのも、シネコンに親子連れで来るマイルドヤンキーファミリー客には高評価ポイントでしょう。
おそらく、この脚本で怒る関係者などおらず、藤子プロも小学館ドラえもんルームもシンエイ動画も子供と一緒に観に来た親世代も、全員笑顔といったところなのではないでしょうか。
――ただし、自分のような初期作品原理主義的な五月蝿いファンと、メインの観客である子供を除いては。
●F作品としての『のび太の宝島』
藤子・F・不二雄作品として『のび太の宝島』を観た場合、最も気になるのが「地球生体エネルギー」という疑似科学的エネルギーの扱いです。
いったい、吸い取りすぎてしまうと地球を破壊してしまう「地球生体エネルギー」とは何でしょうか?
これが地熱エネルギーならまだ分かります。地熱発電は世界中で利用されてますし、23世紀の進んだテクノロジーで小島ほどの船さえ動かせる……という説明がつくのならば納得です。
「地磁気エネルギー」であっても、百歩譲って理解できます。地磁気を用いたフリーエネルギーはオカルトの世界ですが、後述する『魔界大冒険』のような作品内での手続きを経ることで、オカルト的疑似科学テクノロジーを基盤とした異世界を描くのはSFの魅力の一つであり、F作品の魅力の一つです。
ですが、「地球生体エネルギー」は、全く理解できません。いかにも、ドラえもんたちとシルバー船長の対立を描くために、シルバーたちのエクソダスと現在の地球をトレードオフするという状況――すなわち地球の大ピンチというシチュエーションを作るために、吸い取りすぎてしまうと地球を破壊してしまうという都合の良い設定の架空エネルギーを泥縄的にこしらえたようにみえてしまうのです。
こういうのがやりたいなら、『魔界大冒険』の魔法や『宇宙開拓史』のガルタイトのように、前半から「地球生体エネルギー」を出して、それが時空海賊たちの生活や活動に深く根ざしていることをしっかり描き、世界観のベースに組み込んだ上で出さなくてはなりません。それがSFの魅力であり、Fの描くスコシフシギ作品の魅力だったはずです。
川村元気は取材に対して
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「(略)僕は、先生のコピーロボットにならなれるかもしれない、と考えました。てんとう虫コミックスの短編と『大長編ドラえもん』を全部読み、インタビューも片っ端から読んで、いま先生がドラえもん映画を作るとしたらどんなものから着想して何を伝えようとするか、コピーロボットになったつもりで先生の頭の中をたどってみようとしました」
https://www.asahi.com/articles/ASL2X72TPL2XUCVL029.html
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……と答えているのですが、そのコピーロボット壊れてるわ! と大いにツッコミたいです。
●『のび太の宝島』の作品性
もう一つ気になるのは、果たして『ドラえもん』のメイン観客である子供たち――幼稚園から小学生くらいまでの子供たちが、この映画をみて楽しむことができるのかという問題です。
分かりやすさ、という問題ではありません。その意味では、大泉洋じゃなかったシルバー船長が時空海賊を作った動機から家族への思いまで全部台詞で説明してくれる本作のストーリーは本当に分かりやすいです。2250年から2295年へのタイムトラベルもしっかり西暦が画面に大写しにされます。ドラえもん誕生(2112年)よりも未来のテクノロジーでできた物質なので、通り抜けフープが使えない!……なんて小憎らしい演出まで着きます(こういうところは本当に上手いです)。
気になるのは、そのシルバーがきちんと台詞で説明してくれる、地球を犠牲にして宇宙のどこかへ逃げ出そうという理由、というか思いです。シルバーは23世紀の未来人で、45年後の未来では地球が滅びてしまっていることをタイムトラベルで知ってしまっていたのです。このまま滅びるか、地球を犠牲にしてでも脱出するか……葛藤した末にシルバーは後者を選びました。
このどうしようもない思いをシルバーは「大人にはなにかの犠牲を払わねばならない時があるんだ」というような台詞で説明します。ご丁寧にも、星野源による挿入歌「ここにいないあなたへ」まで鳴り響きます。
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ここにいないあなたへ
潮の路が燃えている
物心 幾月 すべてを飲み干して
目の前の未来を必ず掴み取る
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つまりこれは、シルバーが亡妻に向けて「すべて(地球)を犠牲にしても未来をつかみとる」という思いを唄った、シルバー視点での歌詞なのです。
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