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マクガイヤーチャンネル 第161号 【藤子不二雄Ⓐと映画と童貞 その2 『シルバークロス』】

2018/03/07 07:00 投稿

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マクガイヤーチャンネル 第161号 2018/3/7
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こんにちは、マクガイヤーです。

この前iPhoneを6sから8plusに買い換えたのですが、ショップが激混みで半日かかってしまいました。

すごく時間を無駄にしてしまった感があります……



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。


○3月10日(土)20時~

「映画界のメフィストフェレス川村元気と映画ドラえもん」

3/3より『映画ドラえもん』第38作である『のび太の宝島』が公開されます。

本作は『君の名は。』『バケモノの子』などのプロデューサーとして知られると共に、『世界から猫が消えたなら』『四月になれば彼女は』などを書き、小説家としても活躍する川村元気が脚本を執筆した作品になります。

そこで、日本映画界の若き名プロデューサーにしてメフィストフェレスである川村元気と、映画ドラえもんの関係性について迫ってみたいと思います。

アシスタントとして、御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)をお招きする予定です。



○3月24日(土)20時~

「最近のマクガイヤー 2018年3月号」

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定



○4月初頭(日程未定)20時~

「最近のマクガイヤー 2018年4月号」

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定



○4月後半(日程未定)20時~

「『レディ・プレイヤー1』と『ゲームウォーズ』とスピルバーグ」

4/20よりスピルバーグの新作映画『レディ・プレイヤー1』が公開されます。

本作はアーネスト・クラインが2011年に発表したオタクコンテンツのスーパーロボット大戦のようなSF小説『ゲームウォーズ』を原作としています。VR空間を舞台にデロリアンやビバップ号が疾走し、レオパルドンやボルトロンがバトルするさまに、そのスジの読者は狂喜したものでした。

そんな『ゲームウォーズ』が映画化される、それもスピルバーグの手によって! スピルバーグによる有名小説やコミックの映画化は、ガッカリする結果になることもままあるのですが、予告をみる限り誰もが納得する映画化のようです。また、スピルバーグが全作品に渡って追い求めてきたテーマ「大人になること」「Homeを求めること」も当然のように含まれているでしょう。

そこで、これまでのスピルバーグ作品を振り返ると共に、『レディ・プレイヤー1』とその原作『ゲームウォーズ』について解説するニコ生放送をお送りします。



○5月初頭(日程未定)20時~

「『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』はなにがインフィニティなのか」

4/27に期待の新作映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が公開されます。

究極のお祭り映画にしてイベント・ムービーである本作を観ない人なんていないと思いますが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)シリーズもこれで19作品目、ここからMCUに入るのに躊躇している人もいるかもしれません。

そこで、これまでのマーベル映画作品を振りかえると共に、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を100倍楽しめるような放送をお送りします。

ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)を再度お招きする予定です。



○5月後半(日程未定)20時~

「最近のマクガイヤー 2018年5月号」

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定



○6月初頭(日程未定)20時~

「石ノ森ヒーローとしての『仮面ライダーアマゾンズ』」

『仮面ライダーアマゾンズ』はシーズン1、2がAmazonプライム・ビデオで独占配信されている特撮シリーズです。

いわゆる平成ライダー1期のスタッフが『アギト』でも『ファイズ』でも『カブト』でもやれなかった仮面ライダー、あるいは石ノ森ヒーローとしての限界描写を突き詰めたような内容で、自分はおおいに楽しみました。

そんな『アマゾンズ』がこの春『仮面ライダーアマゾンズ完結編(仮)』として、劇場公開されるそうです。それも、これまで意欲作(と自分には思える)春のスーパーヒーロー大戦映画枠を廃止してまで公開する劇場版です。未だ詳細な公開日が発表されていないことが気になりますが、大いに期待しています。

そこで、これまでの『仮面ライダーアマゾンズ』を振り返ると共に、あるいは石ノ森ヒーローとしての『アマゾンズ』に迫りつつ、劇場版を予想するニコ生放送をお送りします。

今度のシロタロスは裏切らないぜ!

(公開日決定に合わせて放送日を変更しました)






○Facebookにてグループを作っています。

観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

(Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。

https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081





さて、今回のブロマガですが、158回に引き続いて藤子不二雄Ⓐについて、具体的には『シルバークロス』について書かせて下さい。


●『シルバークロス』とは

前回、藤子不二雄Ⓐの映画に対する造詣の深さについて書きましたが、映画的魅力の詰まったⒶ作品といえば、初期の名作として評価も高い『シルバークロス』が挙げられるでしょう。


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『シルバークロス』は1960年~63年に光文社発行の月刊少年漫画雑誌「少年」で連載されていました。

「少年」は『鉄腕アトム』『鉄人28号』が連載されていた雑誌です。テレビと少年週刊誌の影響を受けて1968年に休刊しますが、昭和30年代(1955~64年)は「少年画報」と少年雑誌の覇権を争い、一世を風靡していた雑誌です。『愛…しりそめし頃に…』では、「少年」から執筆依頼を受けた満賀と才野が「この雑誌に作品が掲載されるのは魅力的」とスケジュールが詰まっている中で依頼を受けるさまが描かれています。一つのブランドだったわけです。


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「少年」で何度か読み切り作品を描いたⒶは、1959~60年にかけてテレビドラマのコミカライズという形で『怪人二十面相』を連載します。

当時、寺田ヒロオや石森章太郎や藤子不二雄を含むトキワ荘の漫画家たちは辰巳ヨシヒロやさいとうたかおらが描くハリウッド映画やハードボイルド小説の影響を強く受けた青年向け漫画――劇画の脅威をひしひしと感じていたころでした。ただ、青年向けではなく児童や少年向け漫画を描いていた石森や藤子も、映画や小説の影響を強く受けていたという点では同じだったのです。

果たして、ハリウッド映画や冒険小説のようなアクション満載の漫画を、児童や少年向けに描けるものなのか、それも劇画とは違う形で……おそらく(寺田ヒロオを除く)トキワ荘の若き漫画家たちの中にはこのような問いや意識があったのでしょう。

おそらくⒶは『怪人二十面相』のコミカライズで、その答えの片鱗を掴んだのでしょう。Ⓐによる『怪人二十面相』は、白と黒のコントラストのはっきりした絵柄で、原作やテレビドラマの流れを汲むミステリーやアクションの魅力が満載の漫画でした。

『怪人二十面相』のテレビドラマが終了し、今でいうメディアミックスの仕事をやり遂げたⒶが、同じ「少年」で始めたのが『シルバークロス』の連載でした。



●『シルバークロス』「ビッグ5編」の面白さ

人種、宗教、国境を越えて世界平和を守る国際警察「十字警察」、その若き一員シルバークロスは兄貴分であるブラッククロスの補佐を受けながら世界中の悪と戦うのだ……というのが『シルバークロス』の一応のあらすじです。

『シルバークロス』は「QQQ編」、「ビッグ5編」、「イーグルキング編」、「4号兵団編」の4部に大きく分かれています。このうち最大のボリュームを持つのが「ビッグ5編」で、藤子不二雄(Ⓐ)ランド版は、主人公・黒須健二が「十字警察」にスカウトされてシルバークロスになるオリジンストーリーとでもいうべき「QQQ編」を差し置いて、一番最初に収録されていたりします。

この理由は単純です。「ビッグ5編」が最も面白く、また著者であるⒶの力も入っているからです。


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「ビッグ5編」は、夜間のパラシュート降下によるスケルトン帝国への潜入シーンからはじまります。いきなり空挺降下シーンから物語が始まるのは『荒鷲の要塞』から『パトレイバー 2 the Movie』『メタルギアソリッド3』『虐殺器官』に至るまで、冒険小説やアクション映画の類型の一つです。目視されず、レーダー網による警戒も回避し易い10,000m以上の高高度から降下するHALO降下が絵になること、いわゆるリープ・オブ・フェイスを描くこととの相性も良いため、頻繁に描写されます。

特筆すべきは、『シルバークロス』はこのどれらよりも早い1960年に書かれたという事実です。実に引き込まれる導入部です。


当然のように輸送機は撃墜され、潜入した国際警察7人は散り散りになります。主人公シルバークロスがやっと出会えた名も無き国際警察隊員は怪我をしており、降下部隊の捜索のためにやってきたスケルトン帝国戦車隊に撃ち殺されます。

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翌朝、名も無き隊員を埋葬し、朝焼けと共に十字架の前に佇むシルバークロスがシルエットで描かれます。このハードさ! 冒険小説やアクション映画の導入部として100点満点です。



●ドキュメンタリーとしてのⒶマンガ

直後、「悪の組織」であるスケルトン帝国の説明が、なんとニュース映像を模した形式で挿入されます。


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混乱するアフリカに突如できたなぞの国スケルトン帝国!

秘密のカーテンにおおわれたスケルトン帝国から

決死的撮影によって写されたフィルムが

わがワールド・ニュースへ届きました!


昔は暗黒の大陸と呼ばれ

野獣と密林の神秘境とされていたアフリカ……


だが今日のアフリカは黒人の手によって……

次つぎと新しい国がつくられ世界の注目を集めている


そしてここにまたひとつ新しい国が登場した

その名はスケルトン帝国!


しかしこの国は黒人の手によってできたのではなく……

それどころか……


黒人を迫害しまた昔のように奴隷にしようとしているのだ

しかもこの国では…………


おそろしく強力な軍備が秘密のうちにととのえられ

今では国全体がひとつの軍隊となっている!


それは世界の平和をおびやかす力になりつつある

国連では何度も調査団を送り込もうとしたが失敗した


このなぞと恐怖につつまれた秘密帝国を動かすものはただひとり……


それは仮面の独裁者カリギュラ総統である!

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この後、漫画はカリギュラ総統の演説に自然と繋がります。

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背景が黒から通常の白へと変わることから、表現の「形式」が架空のニュース映像から通常のそれに変わったことが読者に示唆されます。

これが1960年、今から50年以上前に描かれた漫画であるということに、今更ながら驚きます。Ⓐの類稀なるセンスに脱帽です。


漫画内で映画やニュース映像を模したシーンを描くのは手塚治虫以来の伝統ですが、本作のようなアクション映画に強く影響を受けた漫画では、効果が何倍にも上がります。まるで『ロボコップ』『スターシップ・トゥルーパーズ』のような、世界観の説明を架空のニュース映像で行っている映画を観ているような気分になるのです。

後年になってⒶは『劇画毛沢東伝』『負けてたまるか 松平康隆』のような、ドキュメンタリーの手法を漫画に持ち込んだような作品を描いていますが、その先駆けのような描写でもあります。

南アフリカとナチスドイツが悪魔合体したかのようなスケルトン帝国の設定は、当時南アフリカでアパルトヘイト政策が強力に推進され、日本でも盛んに報道されていたこと(発表同年にアパルトヘイトに対する抗議行動をきっかけとするシャープビル虐殺事件が起こっています)、ハリウッド映画ではナチスドイツが悪役として描かれがちなことによるのでしょう。



●『シルバークロス』発想のきっかけ

・戦記もののタッチでアクション漫画を描くこと

・鞍馬天狗のような覆面で顔をおおったヒーローが大好きだったこと

Ⓐは以上2点が『シルバークロス』の発想の原点であることを『愛…しりそめし頃に…』の中で明かしています。

 

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