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マクガイヤーチャンネル 第123号 2017/6/12
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おはようございます。マクガイヤーです。

地域のお祭りの手伝い――夕方から真夜中にかけて立ちっぱなしで綿飴を作り続けるというハードデューティがあったので、全身が痛いです。でも、綿飴を手渡した子供、特に幼女がアホみたいに喜んでいる姿をみると、一年に一回くらいこういう善行をしておけば天国に行けるような気もする今日この頃です。



マクガイヤーチャンネルの今後の予定は以下のようになっております。


○6月24日(土)20時~

「サバイビング・ジブリ ジブリ・サバイバーとしての米林宏昌と『メアリと魔女の花』予想」

7/8より元スタジオジブリ現スタジオポノックの米林宏昌監督による期待の新作『メアリと魔女の花』が公開されます。

米林監督といえばカオナシのモデルで有名ですが、「麻呂」という仇名をつけられつつも、後進を育てられないことで有名なスタジオジブリで『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』という長編作品をしっかり形にして発表できた稀有な監督でもあります。

そしてこの二作には、あまり知られていませんが、スタジオジブリについてのメタ的な意味が込められてもいるのです。

そこで、『借りぐらしのアリエッティ』、『思い出のマーニー』の秘められた意味について解説しつつ、『メアリと魔女の花』について予想したいと思います。

是非とも『借りぐらしのアリエッティ』、『思い出のマーニー』を視聴した上でお楽しみ下さい。



○7月15日(土)20時~

「『ハクソーリッジ』と天才変態監督メル・ギブソン」

6/24よりメル・ギブソン久々の監督作である『ハクソーリッジ』が公開されます。

本作は2017年の第89回アカデミー賞において録音賞と編集賞を受賞しました。これまでどう考えても落ち目だったメル・ギブソンにとっての復活作なのですが、『ブレイブハート』『パッション』『アポカリプト』といったこれまでのメル・ギブソン監督作を観ていた我々には分かっていたことです。

メル・ギブソンが、稀代の変態にして天才映画監督であることを……

そこで、俳優・監督としてのメル・ギブソンについて振り返りつつ、『ハクソーリッジ』について解説したいと思います。

是非とも『ハクソーリッジ』を視聴した上でお楽しみ下さい。



○7月29日(土)20時~

「最近のマクガイヤー 2017年7月号」

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。


詳細未定



○8月前半(日時未定)20時~

「しあわせの『ドラゴンクエスト』」

7/29に『ドラゴンクエスト』シリーズ久しぶりのナンバリングタイトルにして非オンラインタイトル『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』が発売されます。

『ドラクエ』といえば「国民的ゲーム」の冠をつけられることが多いですが、『ポケモン』『妖怪ウォッチ』『マインクラフト』といったゲームを越えたコンテンツが席巻し、ゲームといえば携帯ゲームである現在、事情は変わりつつあるようです。

そこで、これまでの歴代作品を振り返りつつ、ドラゴンクエストの魅力に迫っていきます。



さて、今回のブロマガですが、映画『LOGAN/ローガン』について書かせて下さい。

あちこちで絶賛されている本作ですが、期待に胸をはちきれんばかりに観にいったら、予想以上に面白かったです。

いや「面白い」じゃないな。自分のようなおっさんには、胸にぐっとくる名作でした。

ただ、この映画は女性、特に『タラレバ娘』の倫子のような女性にとっては、どのように評価されるのか気になってもしまいます。


●アメコミ映画の名作とは?

現在のアメコミ映画は、世界中のシネコンでしっかりとお金を稼ぎまくる、ドル箱のジャンルです。

ですが、興行収入が高い映画が「良い映画」というわけではありません。中には「何故これを作ったんだ?」というダメコミ映画もあります。

アメコミ映画の内容を一言でまとめてしまうと「スーパーヒーローがヴィラン(悪役)と戦う」になりますが、奇想天外なヒーローが、これまた奇想天外なヴィランと戦っても、現実離れしすぎていて、面白くもなんともないわけです。どんなに大金をつぎ込んでも、ヒーローでもヴィランでもない我々観客が感情移入できる個人的なあれやこれや――人生における普遍的問題とか、日々の生活にのしかかってくるあれやこれや――エンターテインメント映画なりの社会問題とかが含まれていないと、完全に絵空事になってしまうわけです。

アメコミ映画でこの問題を上手く解決したのは、近年では『アイアンマン』『ダークナイト』『ウィンターソルジャー』あたりになるでしょうか。いずれも、「アメコミ映画」というジャンルの枠を飛び越えるような傑作でした。


●おっさんと老い

おっさんは誰でもそうだと思うのですが、本作におけるウルヴァリンことローガンの姿は、全然他人事に思えないわけです。

ヒュー・ジャックマンは、X-MENの映画シリーズ全作(『デッドプール』でもカメオ出演)でウルヴァリンを演じているのですが、本作の彼は、格好良く敵を切り刻んでいたこれまでの(ダーク)ヒーローとは異なる姿です。常に咳き込み、何かを読む時には老眼鏡が手放せず、チンピラとの喧嘩でもやっとのことで辛勝です。ヒーローとしてのウルヴァリンの武器は治癒能力(ヒーリング・ファクター)と拳から飛び出る爪なのですが、傷の治りが遅く、一回飛び出た爪はきちんと格納できません。これまでヒーリング・ファクターのおかげで酒に酔えなかったウルヴァリンが、塒に帰るや否や冷蔵庫からビールを取り出し、半ばアル中になっているような描写さえあります。

一応、「アダマンチウムの毒がまわった」という理屈づけがありますが、このような描写が意味するのはずばり「老いたウルヴァリン」です。若い頃に持っていた健康な身体も、何でも成し遂げてやるという気力も、今のウルヴァリン……というヒーローの座から降りた男、ローガンにはないのです。


●おっさんと介護

ローガンがこのような姿になった原因は、「老い」だけではありません。仲間のミュータントはメンターともいえるプロフェッサーXとキャリバンの2人を除いて、皆死に絶えてしまいました。そのうちの一人、プロフェッサーXは90を超え、完全に痴呆症です。ウルヴァリンとキャリバンはプロフェッサーXの介護をしているのですが、キャリバンもおっさんで、陽の光を浴びると火傷してしまうひきこもりのため、ウルヴァリンが外で働いてお金を稼ぐと共に、老体に鞭打って力仕事もしなくてはなりません。つまり、擬似家族における老老介護の様相を呈しているわけです。

いま、四十代や五十代の日本のおっさんにとっては、全然笑えないシチュエーションです。アメコミ映画に限らず、アメリカ映画は30代、40代のおっさんを普通に主人公にしますし、「滅び行くおっさん」というテーマも(後述する『シェーン』だけでなく)、何回も繰り返されてきました。

しかし、老老介護というのはなかなかアメリカ映画に出てきません。アメリカの出生率は(2008年に若干減少したとはいえ)未だ先進国でトップの1.86で、高齢化社会とは程遠いからです。


●ノー・カントリー・フォー・オールド・ローガン

ローガンはプロフェッサーXの薬を買うために、Uberでそれなりの高級車の運転手をして日銭を稼いでいるのですが、(作品世界では)最底辺に近い生活をしています。

なぜ最底辺と分かるのかというと、ウルヴァリンのリムジンに乗ってくる客が全員バカそうな富裕層だからです。つまり、この世界は経済的に発展した結果、現実よりも貧富の差が進んでいて、貧困層には高級車の運転手か売春のような富裕層のための肉体サービス業くらいしか仕事がないのです。おそらく、中流層には自動運転タクシーみたいなものがあって(劇中でも長距離輸送用の自動運転車が出てきました)、貧困層は型遅れの自分で運転する車に乗っているのです。

で、ローガンは「娘」であるX-23と共に、メキシコからアメリカを横断して未だ自由が残るとされるカナダを目指すロード・ムービーとなっているのですが、劇中における富裕層や追っ手は全員白人で、虐げられる者はアフリカ系やメキシコ系(やミュータント)というのも象徴的です。今回、ローガンを追うヴィランは「ドナルド・ピアース」という、原作ではれっきとしたX-MENの敵なのですが、現実に第45代アメリカ大統領を誰が務めているかを鑑みるに、「ドナルド」の名を持つ敵を選んでしまったのが偶然とは思えません。そういえばローガンのリムジンを利用する客たちは、共和党大会でおなじみのUSAコールを大合唱していました。

ローガンの部屋はおっさんの一人暮らしらしく雑然とし、日本刀のような過去の思い出の品がゴミのように置かれています。最もショックなのは、寝る前に自分の掌を自分で傷つけることでしょう。アダマンチウムの弾丸を常時携帯していることと合わせて、これは自傷行為そのもののように思えます。


予告編で使われていたジョニー・キャッシュによる(カバーですが)hurtの歌詞はあからさまです。

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『Hurt』

I hurt myself today

To see if I still feel

I focus on the pain

The only thing that's real

The needle tears a hole

The old familiar sting

Try to kill it all away

But I remember everything


今日、おれは自分を傷つけた

まだ感じるかどうか確かめたくて

痛みに神経を集中する

これだけが唯一の真実

突き刺した針が穴を穿つ

古く懐かしい傷を

すべてを消し去ろうとしても

おれはすべてを覚えている

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つまり、ローガンは死に場所を探しているわけです。

今すぐ自殺しないのは、自分の面倒をみてくれたプロフェッサーXに対する恩や責任があるからです。





(この後ネタバレ)