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マクガイヤーチャンネル 第115号 2017/4/17
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こんにちは。結局今年は花見に行かなかったマクガイヤーです。


仮に花見に行ったとしても、どうせ花粉症でなにも楽しいことなんてないさ、食べられない葡萄は酸っぱいのさ、と思うことにしております。



マクガイヤーチャンネルの今後の予定は以下のようになっております。


○4月29日(土)20時~

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

『仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦』

『レゴバットマン』

『ハードコア』

『ムーンライト』

『はじまりへの旅』

『ゴースト・イン・ザ・シェル』

『T2 トレインスポッティング』

『アイデンティティ・クライシス』

その他、気になった映画や漫画についてお話しする予定です。



○5月4日(木)20時~

「クトゥルフ神話と『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』」

3/4より『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』が公開されております。

この映画、最近の大長編ドラえもん映画の中でみても面白いばかりか、どうみてもクトゥルフ神話の一編である『狂気の山脈にて(狂気山脈)』をネタ元にしているのですよ。

そこで、大長編ドラえもん映画とクトゥルフ神話双方の視点からみた『のび太の南極カチコチ大冒険』について解説致します。

是非とも映画本編を視聴した上でお楽しみください。


○5月後半

「最近のマクガイヤー 2017年5月号」

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定





お楽しみに!



さて、今回のブロマガですが、科学で映画を楽しむ法 第4回として、『攻殻機動隊』(と『シャブ極道』)について書かせて下さい。

『攻殻機動隊』は、原作は89年、映画は95年と、どちらも20年以上前に発表された作品です。テクノロジーやサイエンスの面から含めて、散々っぱら色んなところで語られ尽くされたので、今更ここで書くつもりも無かったのですが、状況が変わりました。



●実写版『攻殻機動隊』――『ゴースト・イン・ザ・シェル』への違和感

先週4/7にハリウッド製の実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』が公開されました。


00年代以降、CGIが発達&チープ化し、「絵に描いた餅をそのまま動かせる(押井守)」ようになりました。漫画やアメコミを実写化する作品も増えてきました。『アベンジャーズ』のような成功作もあれば、『ドラゴンボール』『進撃の巨人』のように失敗したものもあります。

日本漫画に限っていえば、失敗作が多いわけです。だから、『ゴースト・イン・ザ・シェル』もそれほど期待していなかったのですが、実際に観てみてびっくりしました。まさかこんな映画が今作られるとは……というくらい、古びた映画だったのですよ。


以下、

原作漫画を『攻殻機動隊』

95年に発表されたアニメ映画を『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』

実写版を『ゴースト・イン・ザ・シェル』と表記します。


『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』や、サイバーパンクというムーブメントのオリジンの一つである『ブレードランナー』に、ものすごくレスペクトを捧げた映画のようにみえます、少なくとも外見上は。

映画の冒頭で少佐は高いビルの上から飛び降りますし、光学迷彩に身を包んで水没した未来の香港みたいなところで追いかけっこしますし、電脳と電脳を繋いでダイブしますし、最後はでっかい多脚戦車と戦い、ハッチを無理やりこじ開けようとして義体の腕がもげたりします。

でも、似ているのは外見だけです。

草薙素子の中身はティーンエイジャーのように余裕が無く、敵はネットという海で誕生した知性体でも多国籍企業と官僚が結びついたシステムでもなく分かり易い悪の大企業の社長で、最後は「恋人や家族や職場の中での愛が大事」みたいな分かり易いにもほどがある結論に着地していたりします。『ゴースト・イン・ザ・シェル』の監督であるルパート・サンダースは、『攻殻機動隊』のビジュアル面にしか興味が無かったのでしょうか。



●『ゴースト・イン・ザ・シェル』不評の理由と問題点

『ゴースト・イン・ザ・シェル』は本国アメリカでもの凄く評判が悪いです。Rotten Tomatoesでのtomatometer(https://www.rottentomatoes.com/m/ghost_in_the_shell_2017/)は46%、IMDbは(http://www.imdb.com/title/tt1219827/)10点中6.8点(4/16現在)、最終的に6000万~1億ドルの損失を出すと推定されているそうです。

配給会社は不入りの原因を「キャスティングに関する議論が(映画の)レビューに影響を与えた」、すなわち、主人公である草薙素子を含むキャストの多くを白人化したホワイトウォッシングが話題になりすぎたことが原因だと思うと話しています。

http://jp.ign.com/ghost-in-the-shell-live-action-movie/12648/news/


しかし、それはアメリカでの不入りの原因ではあっても、この映画が時代遅れでつまらないものであることの原因ではないと自分は思うわけですよ。


『攻殻機動隊』でも『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』でも、キャラクターの人種や性別は曖昧です。多くの人間が脳を「電脳化」し、義手や義眼ならぬ「義体」に電脳化された脳を移植した社会では、外見がうら若き美女でも、中身はババァであるかもしれません。

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実際に、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』における公安9課のメンバーの名前はほとんどが偽名で、草薙素子の中身は男か女かすらも分からないわけです(押井守は「個人的設定」として48歳くらいを想定していると語っています)。

主人公の外見が白人であっても、全く構わないわけですよ。

士郎正宗の絵柄は実に80年代オタク漫画的で、スレンダー+巨乳+童顔という『攻殻機動隊』の草薙素子のルックスに比べると、現在32才のスカーレット・ヨハンソンはムチムチ、セルライトたっぷり、おまけに猫背で、こんなの漫画やアニメの中の美少女じゃないやい!……という意味でのミスキャストというなら話は分かりますが、この視点で文句を言っている人は少数派でしょう。


自分が文句を言いたいのは別の点です。

テクノロジーの発達により、名前も性別も自己同一性すらも曖昧になった世界で、「ならばどう生きるか?」が大きなテーマの一つだった作品が、日本人のSK-2じゃなかった桃井かおりママや昔の恋人に再会できて一安心! みたいな映画に翻案されるというのは、テーマとして後退していると思うわけですよ。

……いきなりこう書いても何がなんだか分からないかもしれませんので、順に解説していきましょう。