こんにちは、マクガイヤーです。
「『沈黙』と映画監督マーティン・スコセッシ」は如何だったでしょうか?
実は、本ブロマガを書いているのは番組開始前なのですが、きっと良い放送になっていると思います。
マクガイヤーチャンネルの今後の予定は以下のようになっております。
○2月25(土) 20時~
「最近のマクガイヤー 2017年2月号」
いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
詳細未定。
また、2月10日(金)20時より放送予定の「山田玲司のヤングサンデー放送100回『CICADA』発売記念!ゲスト:手塚るみ子」にゲスト出演します。
先日の放送『手塚漫画大バトル』の評判がよく、手塚るみ子様と一緒にお声がかかりました。今から緊張するぜ!
お楽しみに!
番組オリジナルグッズも引き続き販売中です。
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さて、今回のブロマガですが、前々回の続きとしてAmazonプライムで観ることができる『スーパー戦隊』シリーズのお薦め回について独断と偏見で語らせて下さい。
一応、今回で終わりです。
●『侍戦隊シンケンジャー』6話 『悪口王』
これは大方の人に同意してもらえると思うのですが、『スーパー戦隊』シリーズの最高傑作は『侍戦隊シンケンジャー』だと思います。
いや、「思います」じゃないな。
・モチーフの新しさ
・敵味方通じたキャラクターの立ち具合
・それらのキャラクターによる一回一回の面白さ
・更に、一年を通じた物語上の仕掛けの面白さ
・キャストの演技力の高さ
・アクションの充実
……といった点から、「最高傑作は『侍戦隊シンケンジャー』である」と言い切ってもいいでしょう。
とりあえず1話から最終話まで全部みとけ……と言いたいところですが、それも無茶な話だと思いますので、とりあえず観てほしい回を挙げていきましょう。
まず、第6話『悪口王』です。この回には『シンケンジャー』の全ての要素が詰まっていると思うのですよ。
シンケンジャーの前にズボシメシなる怪人が現れます。
この怪人、相手の心の中の真実を見抜き、「最も言われたくない一言」を言うこと――図星をつくことで相手を傷つけダメージを与えることができるのです。それも、精神的ダメージを与えると同時に物理的ダメージも与えられます。言葉の暴力を具現化したような怪人なのですが、「厚化粧」とか「存在感ゼロ」とか「二股同士」とかいった台詞で「図星をつく」と同時に、爆発するのは、まるで『ジョジョの奇妙な冒険』のような面白さと可笑しさがあります。
で、メンバーはそれぞれ「落ちこぼれ」「ファザコン」「一生独身」といった、それぞれのキャラクターを反映した言葉で傷つき、戦えなくなってしまいます。
ですが、メンバーの中で剣技に優れるものの最年少女子ということから最も頼りないと思われていたシンケンイエローのみ、「阿呆」「馬鹿」「どんくさ女」といった悪口を投げられても戦意を喪失しないのです。
「実家で姉に言われ慣れていたから」
というのが理由なのですが、一番頼りない者が最も精神的に強かった――という話なわけですね。
シンケンイエローを演じる森田涼花のキャラクターが120%活かされているのですが、年下女子に剣技で敵わないばかりか、精神力でも負けたことがはっきりするシンケングリーンの反発と和解を、もう一つのドラマとして描いているのも実に良いです。
というのは、自分も社会に出てよく分かったのですが、年下の女子に地位でも能力でも人間性でも負けた結果、ミソジニーに凝り固まって、やっと自分のプライドを保っているおっさんって結構いるじゃないですか。でも、どこかでシンケングリーンのように弱い自分を認め、女子の凄さを認められれば、そんなことにはならなかったわけですよ。未就学児童や小学校低学年をターゲットとした番組として、実によくできてると思うわけです。
更に、シンケンレッドが「大嘘つき」という言葉でダメージを受けることに注目です。
『シンケンジャー』は「身分制」が取り入れられたスーパー戦隊です。現代の侍であり「家臣」であるシンケンジャー達を代々束ねる志葉家の頭首――シンケンレッドに、メンバー全員が「殿」と敬意を払い、絶対服従します。
代わりに、シンケンレッドには敵である外道衆と戦うという重い責任があります。「大嘘つき」という言葉は、若いながらも時代錯誤な「殿」という役割を演じていることを表した「悪口」である――この時は、視聴者全員がそう受け止めていました。
ですが、なんとこれは一年を通じた伏線だったのです。
なんの伏線だったのかについては、放映から7年も経った今となってはWikipediaにもネタバレ警告無しで書かれるほど有名なのですが、敢えて書きません。実際に観ると良いですよ!
●『侍戦隊シンケンジャー』17話 『寿司侍』
身分制、家系、宿命、秘密、男と女のドロドロ(後記)……と、『シンケンジャー』は基本的にシリアスな番組です。
ですが、シリアス一辺倒では一年間やっていけないわけです。
これまでも「梨園で育ったために時代錯誤なシンケンブルー」とか「壊滅的に料理が下手なシンケンピンク」とかいったコメディ要素が番組を彩ってきましたが、ここで新たなコメディリリーフが投入されました。
それも、6人目の戦士として。
追加戦士であるシンケンゴールドは、『侍戦隊』なのに侍ではありません。料理人です。寿司職人です。バンダイのマーケティングで「寿司職人が格好良い」なんて結果でも出たのでしょうか?
変身アイテムは「スシチェンジャー」なる握り寿司を模したガラケー、武器は「サカナマル」なる秋刀魚型の刀です。
第17話では、シンケンレッドと敵怪人との頭脳戦が描かれつつ……美味しい所はすべてシンケンゴールドがもっていきます。サカナマルを座頭市ばりに逆手に持ち、居合いで敵を倒しまくる姿は爽快です。しかも、その居合いシーンがギャバンの蒸着シーンばりに「もう一回みてみよう」なやり方で描かれます。
追加戦士は登場時にものすごく強い描写をされることが多いのですが、本話でもシンケンゴールドはチートな強さをみせつけます。唖然とするシンケンジャーたちがまた最高です。
そのくせ、性格は可愛げたっぷり。こりゃ子供たちに人気出るわー
そして、侍ではないので、身分制のある侍世界では穢多非人というか、任侠者扱いされるのもまた面白いところです。
●『侍戦隊シンケンジャー』25話 『夢世界』
「小林靖子とこうの史代を熱く語る時の年配男子の「俺の彼女」感」
……というツイートをこの前みかけたのですが、『龍騎』といい『電王』といい『タイムレンジャー』といい、東映と特撮ファンは小林靖子に足を向けて寝られないと思うのですよ。
しかし、そんな小林靖子脚本にも弱点があります。それは「敵側のドラマが薄くなる」というものです。
おそらく、小林靖子はこのことに自覚的なのでしょう。作品を経るごとに、敵側のドラマが増えていきました。
シンケンジャーの敵である外道衆――血祭ドウコク、薄皮太夫、不破十蔵それぞれが葛藤や業を背負った敵として描かれますが、特に薄皮太夫は小林靖子作品の中で、一、ニを争う名キャラクターなのではないかと思います。
というのは、25話で明かされる薄皮太夫の過去が、いかにも小林靖子といったものだったからです。
薄皮太夫は元々人間で、「太夫」の名の通り、薄雪という名の花魁でした。
ある時、薄雪は自分を身請けすると言ってくれた武士、新座と愛し合います。しかし、新座は薄汚いヘルス嬢なんかではなく、JJモデルみたいな町娘とくっついてしまいます。
怒り心頭で結婚式に乗り込み、火を放って、自分もろとも新座を焼き殺す太夫。勿論、件のJJモデルも焼死です。
しかし、炎の中にあっても花嫁を探す新座の姿に、薄雪は絶望します。
「最後までわちきではないのか!」
この世だけではなく、あの世においても、新座を他の女と結ばせるわけにはいかない。そんな薄雪の女の情念と怨念と喪女のパワーが、彼女の身を外道衆――薄皮太夫へと転生させたのです。外道の力で、新座の魂も三味線に変わります。だから薄皮太夫はどんな時でも三味線を手放さなかったのです。
……こういったエピソードが、シンケンピンクが垣間見た夢の世界の話として語られるのです。
基本的には薄皮太夫の過去と、それを覗き見してしまうピンクについての話なのに、ブルーとグリーンは夢の中での戦い、レッドとゴールドはロボ戦、イエローは助っ人と、それぞれに見せ場がある脚本が匠の技でした。
更に、薄雪を演じるのは薄皮太夫の声優を務める朴璐美でして、顔出しで熱演しています。
これまでも小林靖子は女戦士を語り手とした「失恋エピソード」をやってきたのですが、こんなに重いのは初めてでした。
そんな薄皮太夫に血祭ドウコクは完全にホレている……のですが、昔の男を忘れられない太夫は、ドウコクのことなど相手にしません。外道衆としての力量はドウコクの方が何倍も勝っているのですが、ドウコクの願いは太夫と愛し愛される関係になることなので、結局何もできないのです。別に太夫を支配したいとかセックスしたいとかじゃないのですね、子供番組だからという理由ではなく。
しかし、何百年経っても新座に対する思いを捨てられない太夫は、ドウコクに自分を斬れと頼み込みます。
「外道に堕ちて数百年。身内にある思いは一向に晴れん。泥のように溜まるばかりだ。斬れ!思いごと全てバラバラに!それこそ骨まで!わちきが望んでいたのはきっとそれだ」
でも、太夫の「女」という性を見透かしているドウコクは、太夫を斬る代わりに、三味線に火をつけちゃいます。
パニックになった太夫は、その場を飛び出します。
●『侍戦隊シンケンジャー』48話 『最後大決戦』
以後、数ヶ月に渡ってなんとか三味線を修復しようと人間界を彷徨う太夫の姿が描かれます。
その途中で、太夫は筋殻アクマロという悪い男、じゃなかった悪い外道衆に騙されてしまいます。三味線の修復と引き替えに、良いように使われてしまいます。
で、色々ありながらも、ドウコクはアクマロから三味線を取り返し、自らの体の一部を使って三味線を修復して太夫に付き返します。
ドウコクが壊したのだから当り前といえば当り前なのですが、その姿をみて薄皮太夫は気づくわけです。
自分の傍に、こんな良い男がいるのを、こんなにも自分を見てくれる男がいるのを忘れてたわ! と。
これが過去の回想エピソードという形ではなく、主人公であるシンケンジャー達の物語と並列で描かれるのです。つまり、現在進行形の恋としてです。
この一連の流れが痛いほど胸に迫ってきます。
というか、多分、小林靖子はあんまりモテなかったのでしょう。いつも柱の影から好きな人を覗き見ていたような人生を送ってきたのでしょう……薄皮太夫は、そんなふうに想像を逞しくしてしまう力のあるキャラクターでした。
●『特命戦隊ゴーバスターズ』3話 『GT-02アニマル、出撃!』
さすがの自分も途中で視聴を放棄してしまった『ゴセイジャー』、『スーパー戦隊』シリーズを長年観てきた人にとってはご褒美のような番組だった『ゴーカイジャー』を経て、東映はシリーズの改革を図ります。
それが『特命戦隊ゴーバスターズ』です。
何が改革かというと、それまで「お約束」とされていたものを見直し、可能な限り合理的な描写や要素を持たせるというものでした。
・変身シーンでのバンク映像の廃止
・ストップモーションを交えた等身大アクションと特撮研究所こだわりのロボ戦が並列で進む
・傷ついたロボットを修理・メンテナンスするために50人の整備員がいる
・超自然的・神話的・伝奇的・ファンタジー的モチーフを廃し、コンピューターウイルス・新エネルギー・スパイ・ワクチンプログラム……といった(比較的)現実寄りなモチーフと理にかなった設定で敵も味方も統一する
・311後の原子力エネルギーを思わせる新エネルギー・エネトロンや、亜空間に家族が飛ばされ生きているかどうかも分からないという(近年の戦隊としては)ハードな設定
こういった改革はマンネリ化を防止するために何度も行われてきましたが、今回は力の入り具合が違いました。戦隊名を「~レンジャー」や「~マン」ではなく、初めて採用する「バスターズ」にする。初期メンバーを3人にし、相棒として3人の着ぐるみ声優キャラをつける……といった点も気合の現れです。
特に気合を感じたのは、メカニック・ロボ戦描写です。おそらく、当初から予算と時間をかけて作ることが決まっていたのでしょう。
特にこの第3話では、素面でのアクションから始まって、メンバー同士のちょっとした諍いと解決、現場での緊張感あふれる作戦打ち合わせ、仲間を思いやる声優着ぐるみバディロイドの愛おしさ、エネルギーが切れた病院でのサスペンス、ウルトラセブンばりの涙が出るような夕景から100万ドルの夜景をバックにしての対決、ゴリラ型のロボットが橋を渡ったり、変形を利用したダッシュで敵を倒したりといった特撮研究所の匠な描写……と、スタッフの気合をビンビンに感じる回でした。
●『特命戦隊ゴーバスターズ』24話 『トレビアンな夏祭り』
しかし、結論から書くと、この改革は受け入れられませんでした。
視聴率は低迷し、玩具は前年より売り上げダウン、Gロッソの観客動員も下がり、2ちゃんにはアンチスレが幾つも立ちました。
『スーパー戦隊』がターゲットとしている小さなお友達も、いい年こいて番組をみている大きなお友達も、結構保守的だったのです。『ブルースワット』の人気が低迷してるのと似ている、と表現するのが的確でしょうか?
この反省からか、翌年の『キョウリュウジャー』は王道感溢れる戦隊となりました。
しかしですね、『ゴーバスターズ』は『ジェットマン』や『キュウレンジャー』のような、可能性溢れる番組だったと思うのですよ。
24話は、ゼロ年代以降に誕生した新しい定型「先生と再会する話」です。これは、おそらく『仮面ライダークウガ』の神崎先生関連エピソードが秀逸だったこと、子供にとって学校の先生は時に親以上の存在であり、大人にとっては子供時代への郷愁をかきたてられることから定番化しました。
で、『ゴーバスターズ』のレッドは、普段つっけんどんで愛想が悪いながらも胸のうちに情熱を秘めているという不器用な性格なのですが、彼を主役として「先生と再会する話」をやると、そんな性格のレッドにも大事にしている世界があり、人間関係があるという、本当に味わいぶかい話になったのでした。
『オーズ』のバッタヤミーの話とこの回で、毛利亘宏の名前を強烈に印象づけられました。『キュウレンジャー』が楽しみや!
●『特命戦隊ゴーバスターズ』30話 『メサイア シャットダウン』
あまり人気の出なかった『ゴーバスターズ』ですが、「改革を起こす」という製作陣の意思は固かったのか、この第30話まで作風にそれほどの変化はありませんでした。
というか、この30話まで盛り上げに盛り上げ、ここでほとんどの謎が解明されてしまいます。
ゴーバスターズたちは敵がいる亜空間に潜入するのですが、再生怪人は出るわ、幹部との先頭はあるわと、大盛り上がりです。
ゴーバスターズたちの両親が生きているかどうかも、敵幹部であるエンターやエスケイプの正体も、ここできっちり判明します。
そして、これまでドラマを引っ張ってきた「両親を救うこと」をあきらめ、大ボスであるメサイアをシャットダウンすることを決断してしまうのです。
「もっと悩んでいただけると思ったんですが……それでも人間ですか!」
というエンターの台詞がたまりません。
というか、ここまで書いてきて、何故『ゴーバスターズ』の人気が低いのかが分かったような気がします。
ゴーバスターズの戦いは、何かを生み出したり、皆を笑顔にしたりするようなものではなく、何かを喪うことを決断するような戦いなのです。彼らが世界を揺るがすようなクライシスに対抗できるのは、何かを手に入れるために何かを喪う決断ができる――家族を取り戻すためではなく、世界を守るために戦うという決断ができる(ようになった)からなのでした。ゼロ年代的決断主義をポスト311的状況で描いたようなスーパー戦隊といったら言い過ぎでしょうか。日曜の朝、それも平成ライダーがすっかりファミリー化した今となっては、重すぎるのです。
等身大アクションとロボ戦の並列描写はこの回で一つの完成型にまで到達します。レッドがロボを操って敵のスーパーロボを倒しつつ、他のメンバーがいつもの最終回ロケ地御御用達である日本加工製紙高萩工場跡地にてスーパー怪人というかラスボスを倒します。まるで最終回のようなテンションです。
実際、製作陣はこの回で第一章の終わりと考えていたようです。
じゃ、プロモーション的に二代目ギャバンと競演する特別回を2回挟み、その後に続く第二章がどんなものかというと――性格が若干温和になったゴーバスターズとエンターやエスケイプたちによる、古式ゆかしい忍者同士の巻物争奪戦……ならぬカード争奪戦というのが、路線変更とそれに伴うドタバタを強烈に想起させるところです。いきなり金とプラチナの宇宙人が現れたりせず、完全なハッピーエンドで終わったりもしなかったので、この程度の路線変更で済んで良かった、という気もしますが。
そんなわけで、5回に渡って連載してきた本シリーズも今回で完結です。Amazonプライムのおかげで『スーパー戦隊』の過去作が気軽に観られるようになって嬉しい限りです……なんて言葉で〆ようとしたら、いつのまにか『ジャスピオン』も『メタルダー』も『ブルースワット』も観られるようになっているではありませんか。
こりゃ、寝られないぜ!!
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平野建太
発 行:株式会社タチワニ
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