・科学とは非常識を常識に変えることである
突然ですがこの言葉、私の恩師の元神奈川大学教授・関邦博さんが好んで使っていたもので、僕も好きな言葉です。
昔も今も、その時点では99.9%の研究者に受け入れられないような非常識とされていた説が実は正しかった、ということがよくあります。
ヒッグス粒子(と思われる物質)の発見もその一例です。
ヒッグス粒子提唱の学者「放心状態」、CERNとは皮肉な過去も
ヒッグス粒子を超簡単に説明すると、すべての物質に質量、つまり「重さ」を与える実体といえます。1964年にヒッグス粒子の存在を予見したヒッグス氏は自説を論文にまとめてジャーナルに投稿したものの、これは却下されてしまいました。
そしてこの論文を却下した審査員は、今回ヒッグス粒子と思われる物質を発見した欧州合同原子核研究所(CERN)に所属する研究者だったということです。なんとも皮肉な話です。
そしてもうひとつ、例のヒ素細菌の話。
2011年にDNAにヒ素を材料として使う細菌の発見が報告されました。このあまりにも「非常識な」発見については猛烈なバッシングが巻き起こりましたが、ついに今回、Science誌に反証論文が掲載されました。
僕もこの4月にアトランタで開かれた宇宙生物学会で、この反証論文を出した研究グループの人たちに直接話を聞きました。
ヒ素細菌のDNAにはヒ素がなかったーライバル研究者らが発表
やはりというか、残念ながらというか、2011年のヒ素細菌の論文の主張はかなり黒に近いと思われます。
しかし、だからといって、あの2011年の報告の価値がゼロになるわけではありません。
そんなことが本当にあるかもしれない、我々の常識の及ばない生命体が、まだこの地球上に、そして宇宙には存在するかもしれない。
このヒ素細菌騒動では、そんなロマンを感じ、生命科学に興味を持った子どもたちも多いでしょう。そんな子どもたちが将来、型破りな研究者として活躍してくれるに違いありません。
★クマムシ研究日誌「運命のクマムシ」
私がクマムシの研究を初めて10年以上が経ちました。ここでは、これまでのクマムシ研究生活を振り返りつつ、その様子を臨場感たっぷりにお伝えしていきます。
変な人に勘違いされながらも採取してきたコケや地衣類は、その都度実験室でベールマン装置にかけた。
ベールマン装置
ベールマン装置についてはクマムシトリビアその1でも触れたが、土やコケや地衣類などから微小動物を抽出するための装置である。漏斗の上部にコケやなどの試料を置いて水で浸し、一晩かけて漏斗の下にクマムシを落とす。この方法だと、多量の試料から一気にクマムシを集めることができる。
下にたまった水をシャーレに回収し、実体顕微鏡を覗きながらクマムシを探し、ピペットを使って回収していった。
クマムシがまったく見られないコケや地衣類サンプルもあれば、多量に出てくるものもある。また、数十センチ離れた2地点の一方のコケからはクマムシが多数出てくるが、もう一方のコケからは全く出てこない、ということも多い。コケの中でクマムシは、固まってコロニーのようなって存在しているようだ。
多くのサンプルを調べていて気付いたことだが、センチュウやワムシはコケからほぼ100%出てくるのに対し、クマムシは30%ほどのコケからしか見られないことだ。また、個体数もクマムシはセンチュウやワムシよりも少ない。野外での増殖能力の点において、クマムシはセンチュウやワムシより劣っているのだろう。
また、もうひとつ興味深いことが分かった。
突然ですがこの言葉、私の恩師の元神奈川大学教授・関邦博さんが好んで使っていたもので、僕も好きな言葉です。
昔も今も、その時点では99.9%の研究者に受け入れられないような非常識とされていた説が実は正しかった、ということがよくあります。
ヒッグス粒子(と思われる物質)の発見もその一例です。
ヒッグス粒子提唱の学者「放心状態」、CERNとは皮肉な過去も
ヒッグス粒子を超簡単に説明すると、すべての物質に質量、つまり「重さ」を与える実体といえます。1964年にヒッグス粒子の存在を予見したヒッグス氏は自説を論文にまとめてジャーナルに投稿したものの、これは却下されてしまいました。
そしてこの論文を却下した審査員は、今回ヒッグス粒子と思われる物質を発見した欧州合同原子核研究所(CERN)に所属する研究者だったということです。なんとも皮肉な話です。
そしてもうひとつ、例のヒ素細菌の話。
2011年にDNAにヒ素を材料として使う細菌の発見が報告されました。このあまりにも「非常識な」発見については猛烈なバッシングが巻き起こりましたが、ついに今回、Science誌に反証論文が掲載されました。
僕もこの4月にアトランタで開かれた宇宙生物学会で、この反証論文を出した研究グループの人たちに直接話を聞きました。
ヒ素細菌のDNAにはヒ素がなかったーライバル研究者らが発表
やはりというか、残念ながらというか、2011年のヒ素細菌の論文の主張はかなり黒に近いと思われます。
しかし、だからといって、あの2011年の報告の価値がゼロになるわけではありません。
そんなことが本当にあるかもしれない、我々の常識の及ばない生命体が、まだこの地球上に、そして宇宙には存在するかもしれない。
このヒ素細菌騒動では、そんなロマンを感じ、生命科学に興味を持った子どもたちも多いでしょう。そんな子どもたちが将来、型破りな研究者として活躍してくれるに違いありません。
★クマムシ研究日誌「運命のクマムシ」
私がクマムシの研究を初めて10年以上が経ちました。ここでは、これまでのクマムシ研究生活を振り返りつつ、その様子を臨場感たっぷりにお伝えしていきます。
変な人に勘違いされながらも採取してきたコケや地衣類は、その都度実験室でベールマン装置にかけた。
ベールマン装置
ベールマン装置についてはクマムシトリビアその1でも触れたが、土やコケや地衣類などから微小動物を抽出するための装置である。漏斗の上部にコケやなどの試料を置いて水で浸し、一晩かけて漏斗の下にクマムシを落とす。この方法だと、多量の試料から一気にクマムシを集めることができる。
下にたまった水をシャーレに回収し、実体顕微鏡を覗きながらクマムシを探し、ピペットを使って回収していった。
クマムシがまったく見られないコケや地衣類サンプルもあれば、多量に出てくるものもある。また、数十センチ離れた2地点の一方のコケからはクマムシが多数出てくるが、もう一方のコケからは全く出てこない、ということも多い。コケの中でクマムシは、固まってコロニーのようなって存在しているようだ。
多くのサンプルを調べていて気付いたことだが、センチュウやワムシはコケからほぼ100%出てくるのに対し、クマムシは30%ほどのコケからしか見られないことだ。また、個体数もクマムシはセンチュウやワムシよりも少ない。野外での増殖能力の点において、クマムシはセンチュウやワムシより劣っているのだろう。
また、もうひとつ興味深いことが分かった。
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