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映画『女の子よ死体と踊れ』朝倉加葉子監督にインタビュー

2015/11/09 21:30 投稿

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朝倉加葉子監督


ニューウェーブ・アイドルグループ、ゆるめるモ! 主演の山奥で死体と遊ぶ100の方法映画『女の子よ死体と踊れ』。

今回は本作を手がけた朝倉加葉子監督にインタビューして参りました。


【大きな画像や動画はこちら】

和製スラッシャー映画クソすばらしいこの世界』で血染めのデビューを果たした監督が『女の子よ死体と踊れ』で描こうとしたもの、ゆるめるモ! のメンバーの魅力なぜブラックメタルなのか? などについて伺っています。一部ネタバレがありますので、ご注意ください。


監督が語るゆるめるモ!

監督の思う、ゆるめるモ! の魅力とは?


――本作をいわゆる「アイドル映画」として観る人は多いかと思うのですが、脚本・監督する上で何か特別に意識したことはあるのでしょうか?

朝倉加葉子(以下、朝倉):アイドル映画というものは観ていましたし、好きな作品もあるんですけど、自分で作りたいと思ったことはなかったので、本当にどうしようかなとは思いました。

やっぱり、ゆるめるモ! がちょっと変な人たちなので(笑)、彼女たちをいわゆるアイドル映画の方に寄せちゃうとつまらなくなる気がして、彼女たちの変さ、面白さに私の方から近づいていったほうがきっと映画としても今までにない面白いものになるんじゃないか? そういう作りの中でできることは何か? を考えつつ、作りました。

役名があって、学生の役をやってもらうとか別の役になってもらうということをしても、あんまり彼女たちの魅力は伝わらない気がしたんですよね。


――ゆるめるモ! のメンバー一人一人のキャラクターで脚本を転がしていった部分もあるのでしょうか? 彼女たちの一番の魅力はなんだと感じましたか?

朝倉:先に転がりそうな土台を組んで、さらに彼女たちだったらこういうことができるだろうというものを乗せていきました。

いつ会っても、ゆるめるモ! のみんなはちゃんと自分の人生を生きている人たちなんだなと感じますね。やっぱり人間的な中身がそれぞれ非常にある人たちだし、「私たち、ゆるめるモ! ですから」とか「私たちアイドルですから」とか色んな自称の仕方はあると思うんですけど、全然そこに逃げていないですよね。

地に足も付いているし、楽しいライブも、他の人たちと同じように日常的につまらないこともある中で、いつも逃げていないと凄く思います。

『逃げろ!!』という曲があったり、ライブでは「みんなのハートをゆるめにきました!」という定型文があったりするんですけど、本人たちはわかりやすい癒し系って感じでもないですよね(笑)。嘘をついてない。だから、リアリティがあるのが彼女たちの魅力だと思います。


――監督が女性だからこそ撮れた彼女たちの魅力があるのではないかと思うのですが、「ここを見てほしい」というポイントはどこでしょうか?

朝倉:女性の監督だから撮れるもの、というのが存在するのかは私にはわかりません。ただ、今ふと思ったのは、『女の子よ死体と踊れ』には恋愛要素が一切ないんです。

誰もが異性を好きになったり、お付き合いしたりといったことが人生ではあるわけですけど、本当に人と付き合えるのって自分の問題にある程度の決着が見え始めてからで、そこで初めて他人を受け入れられる姿勢ができると思うんです。

自分のことで忙しい時って、相手がいてもいなくても実際には付き合えていないし、付き合えない。これには個人差があって、中学生で成立する人もいるし、大人になっても出来ない人も恐らくいます。その「人と付き合える段階」の前の人たちの映画を作ろうと思ったので、そこを見てほしいですかね。

私はやっぱり同性なので、ゆるめるモ! のみんなを性の対象で見ることはありません。だから、自分の問題に片がつく、つかない時期というのに興味がいきました。そこが少女、女の子が揺れる一番最後の時期だという気がしていて、そこから先は、大人の揺れ方になるんじゃないかなと思うんです。



死体復活はブラックメタル

あのはブラックメタルの儀式で蘇る


――死者を蘇らせる場面で他にも方法はある中、なぜブラックメタルの儀式を採用したのでしょうか?

朝倉:普通そうですよね、やっぱり他にもありますよね(笑)。

私は全然メタルには詳しくないんですけど、北欧のブラックメタルの人たちは本気の悪魔崇拝やペイガニズムの思想を持っているじゃないですか。不謹慎な話ですけど、その本気度がちょっとかっこいい......と言うと語弊があるのかもしれませんけど、すごいなと思っていて。

私たちが今ここにいる日本から、北欧にあるブラックメタルまでの遠さ、あそこにいるんだったら悪魔を信じていてもおかしくないと納得してしまう遠さが非常に気持ちがいいと感じました。

きっと現在のアメリカにも本気の悪魔教の人は俄然いると思うんですけど、アメリカへの距離は今となってはファンタジーではなくなっていて、それに比べると北欧のブラックメタルは私にとって全然ファンタジーになり得るなあと。

後は、やっぱり6人女の子がいるので、1人はゴスっ娘を入れたいと思ったんですね。でも日本でゴスっ娘をやるのは難しいので、ある程度かっこ良くしてあげたくて、そういう意味でも彼女が北欧のブラックメタルを好きだと良い感じのゴスっ娘になるかなと思って、採用しました。


――儀式で逆再生されるブラックメタルの楽曲は本作用に作ったのでしょうか?

朝倉:そうですね、オリジナルです。劇伴のゲイリー芦屋さんに、メイヘムとかを聞いてもらって「これの逆再生の曲を作ってもらえないでしょうか......」とお願いしてみました(笑)。

そうしたら、ゲイリーさんが「逆再生の音が次第に劇伴に乗り替わるような曲にしましょう」と提案してくださったので、少しずつ入ってくるんですよね。リフの要素が残りつつ劇伴が盛り上がるというような構成にしてくださいました。



見上げるゆるめるモ!

※本作にUFO発見のシーンはありません


――儀式に限らずオカルトの要素が多いように感じたのですが、監督が好きなオカルトものはなんでしょうか? 実際にオカルトな体験をしたことはあるでしょうか? ちなみに、ゆるめるモ! のメンバーさんのうち2人はUFOを見た経験があります

朝倉:マジですか!? 羨ましい。私はUFOを見たことはありません(笑)。

Xファイル』は大好きですし、日本の作品だと『エコエコアザラク』も大好きですね。後は『エクソシスト』なら2、『REC/レック』なら2とか、オカルト度が突然上昇するとそれだけでテンションがぶち上がります


――『クソすばらしいこの世界』の後半もそうでしたが、本作でもそれまでの流れからは想像しにくい「えーっ!」となるようなオカルトな飛躍が突然起きます。あのような演出は入れたくなって入れているのでしょうか?

朝倉入れたくなっちゃうんですよね(笑)。弱点なので、気をつけたいんですけど......。

観る分にもそういう飛躍が好きなので、私はいつもイケてると思って入れているんですけど、後から周りの人たちから「なんであんなに飛躍するの?」と言われて、(うつむきながら)また飛んでましたか......となります。

野放しにすると飛び放題になってしまうので、「まあいいか」と思ってもらえるラインにおさめるのが最近の目標です。


――本作には何通りもの死ぬ描写だけでなく、殺す描写もいくつか登場します。そういったシーンをゆるめるモ! の皆さんに演じてもらうのは、イメージもあるので難しい面もあったのではないかと思うのですが、すんなり決まったのでしょうか?

朝倉:最初に企画を、脚本のおおもとを作っていた時に、最後にブチ殺すのはけっこうヘビーだと思ったんです。だからどういう風に持っていけばいいのかはけっこう悩みました。あんまり陰惨な話にはしたくなかったですしね。

でも、ゆるめるモ! と会って話をしているうちに全然イケるな、心配ないと思いました(笑)。だからそのまま、どうぞどうぞと。

彼女たちはふざけているようで、そうでもないけど、やっぱりふざけていたのかな? という塩梅がちょうどいいと思いますね。


――ゴア表現や残酷なシーンはほぼありませんが、車で轢くシーンはけっこうひどくて、さすがだなと思いました。

朝倉:やりたくなっちゃいますよね、やっぱり(笑)。

死なないとなると「あっ、なんでもできちゃう。いっちゃえいっちゃえ!」という気になります


――トランスフォーマーだったらバラバラにしてもOK方式ですよね?(笑)

朝倉まさにそれです。気に入っていただけたようで良かった(笑)。



あの(死体)

あのは自分で死ねるのか?


――本作のクライマックスであり、ゆるめるモ! のメンバーの皆さんも印象的だと言っていた、輪になって踊るシーンはどのようなことを意識して作り上げたのでしょうか?

朝倉:あのちゃんが死んで、その後からは彼女が生きているかもしれなかった1日をやろうというのが、あのシーンなんです。

最初はどこかの浜辺でみんなが楽しそうに過ごしているといったシーンを想定していたんですけど、物理的に浜辺に行く時間がなかったり、天気の問題もあったりしたので、あったかもしれない1日、あのちゃんが生きていて、こういうことになっていたかもしれない時間、現実とはちょっと違ってしまっている楽しい日をやるんだったら、逆にどこでやるのかな? と考えていきました。

でもだんだん撮影が進むに連れて、その1日をどう表現するかを考えた時に、なんとなく普段の彼女たちということではなく、もう一段上げてしまってというか、楽しい1日を自分たちも楽しんでいるけど、それを見ている彼女たちも同時にいる、といった感じにしたくなったんです。

死んでしまったあのちゃんの方の世界に近づいていっていることでもあるのかもしれないし、生きているみんなにあのちゃんが近づいていっていることでもあるのかもしれない。でも、そういう楽しい時間を上手く作りたいと思いました。それで踊りを押し出しつつ、戯れている姿も入れるというバランスにしています。

ちゃんとした理屈がついているわけではないので、「なんで踊ってるんだろ?」というシーンではあります。でも現実感がないからこそ美しい、というような要素があってもいいのかなと思ったんですね。失敗したらどうしよう? と本当にドキドキしながらやってみて、ああいうシーンになりました。


――本作は映画として、ホラー以外の選択肢はあったのでしょうか?

朝倉一番最初から「ホラー映画で」と言われていました。アイドルが出演するホラーというのは昔からありますし、それをゆるめるモ! でやろうとはなっていましたね。ただ、ホラー度合いに関しては応相談でした。

私もあまりキツイもの、女の子がめちゃくちゃひどい目に遭って泣きじゃくるといった映画にはしたくなかったですし、女の子が6人もいるので、青春部分を押し出していった方が面白いなと思って提案したら、全然その方向で良いとのことだったので、一番最初の企画の段階からはホラー要素はじょじょに減っていったと思います。


――元々アイドルになじみはあったのでしょうか? アイドル映画で好きな作品はなんでしょうか?

朝倉:なじみはそんなにないですね。

映画を好きになってから、映画好きの見方をするようになってからですけど、薬師丸ひろ子さん、原田知世さんといった面々が出演していた角川映画は好きです。やっぱり娯楽の黄金期という感じがして、熱狂しました。

後は、昔の藤純子さん(現、富司純子)の映画は好きですね。例え刺青の入った姐さん役を演じていたとしても、アイドル映画にしか見えないのがすごいです。


――本作を製作する上で何か連想した作品、リファレンスにした作品というのはあるのでしょうか?

朝倉:今回は難しかったんですよね。なかなかリファレンスにしようがないなと思って(笑)。

直接的には何も入れていないんですけど、みんなで死体を見に行ったり、それを誰にも見つからないように隠す努力をしたりして、死というものを実感する、死を身近に感じるといった方向性は、『リバーズ・エッジ』がいいなと思って、ああいう設定にしています。

死体は恋愛物になりますけど、『マネキン』のような人間だけど人間ではない感じにしたいと考えて、作りました。

後は、『アリゾナ・ドリーム』のジョニー・デップが街角を歩いていると前からピラルクがやってくるというシーンが印象的で、そういう「ちょっと夢なのかもしれない、ちょっとリアリティはないけど、それほど突飛なことは起きていない世界にいる」というフィクション度に設定したいなとは思いましたね。


――前作の『クソすばらしいこの世界』に続き、『女の子よ死体と踊れ』もタイトルの響きが耳に残りますが、タイトルはどのように発想しているのでしょうか?

朝倉:『クソすばらしいこの世界』の時は、プロットの段階から『What a Wonderful World(この素晴らしき世界)』に「FUCK」をつけて歌うんだと書いていたので、『クソすばらしいこの世界(仮)』で出したんですよ。

でも製作の途中でさすがに「クソ」とかつけるのはダメかなと思って、そろそろタイトルを本当に決めたほうがいいですよね? って相談したら「これでいきましょう」と言われて、失敗したー......と思いました(笑)。

でも、そのタイトルのおかげで話題になったり、皆さんが注目してくれたりしたので、ありがたいなとは感じています。なので、その時はタイトルには迷いませんでした。

その一方で今回は全然タイトルが出てこなかったんですね。ずっと「ゆるめるモ! のホラー映画」という意味で「ゆるホラー」と、タイトルですらない名前で呼んでいて、いざタイトルを決めようとなった時に私は『神様は見てないふり』がいいと言ったんですけど、ボツになりました......

そこから「死体」という単語を入れたほうがいいという話になり、紆余曲折を経て『女の子よ死体と踊れ』になったという感じです。けっこう難産でしたけど、今となってはこのタイトルで大正解だなと思っています。


――最後に、本作はどのような人たちに見てほしいでしょうか?

朝倉:私は10代くらいの頃、人生すごいつまんねぇなあ......と思いながら生きていて、このままだったらどうしよう? と感じていました。

そういう気持ちになることって誰でもしばしばあるはずで、それはなかなか共有できないものなんですけど、そこから自分で自分の人生をどういう風に作っていくのか? どういう風に作っていかないといけないのか? と考えるのが人生なんじゃないのかな? と思っているんです。

『女の子よ死体と踊れ』は全然その解決になる映画ではないんですけど、ちょっと気晴らしになる要素はあると思っているので、今ちょっと人生つまらないなあと感じている人たちに見ていただけたら嬉しいです。


『女の子よ死体と踊れ』は10月31日(土)よりシネマート新宿、11月14日(土)よりシネマート心斎橋、名古屋シネマスコーレ、12月5日(土)より仙台・桜井薬局セントラルホール、12月12日(土)より広島・横川シネマ、12月19日(土)より福岡・中洲大洋映画劇場ほか全国順次公開!



配給:日本出版販売
©2015 YOU'LL MELT MORE!Film Partners


映画『女の子よ死体と踊れ』公式ホームページ
朝倉加葉子(@asskrash)[Twitter]
メイヘム[Wikipedia]
リバーズ・エッジ (漫画)[Wikipedia]

スタナー松井

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