銀河帝国がいかにお金持ちだったかわかりますねー。
残念ながらアメリカ合衆国の「ノー」の一言によって宇宙の塵と化したデス・スター建造計画ですが、政府がやってくれなきゃ自分で作ればいいってもんです。
とはいえ、米国が出した「ノー」には色々ちゃんとした理由があります。「デス・スターを建造しない理由」リストに真っ先に挙げられているのが、その巨額の建造費用。その驚きの価格の詳細は以下より。
なんでもデス・スターを建設するには、85京ドル(約7.7×10の19乗円。7700京円くらい?)も掛かるということなんです。
しかし、その建造費用の見積もりにはミスが有るとの指摘もあり、見積に関わった人たちの中に航空宇宙工学を学んだ人はたったの一人だけという有様(それに彼だって「航空宇宙工学の予算見積もり」を学んだわけじゃないんでしょうし)。
まず最初にデス・スターを、単純に戦艦をスケールアップして計算してるところからして間違ってますよね。戦艦みたいに鋼鉄でできてるわけでもないですし、宇宙戦艦ヤマトを建てるわけでもありません。デス・スターは水の上に「浮かぶ」ものではなく、どちらかと言えば「軌道に乗る」ものです。戦艦は厚みのある鋼鉄により、魚雷や炸裂弾などの爆発性の攻撃に耐えられますし、海に浮かぶように作られています。
しかし、ロケットや衛星(デス・スターとか)は鋼鉄からは作られません。なぜなら対重量の強度比率がとても低いからです。鋼鉄製のロケットをもし軌道に乗せられたとしても、そのロケット内の最大搭載量はとても低いでしょう。鋼鉄製の衛星だって、重すぎるせいで打ち上げるのに無駄にお金ばかりがかかってしまいます。ロケットや衛星には主にアルミニウムが構造素材として使用されていますが、個々数十年はアルミニウムより優れているカーボン複合材が人気となっています。
敵が海軍の使うような兵器を使って攻撃してくると想定すれば(レーザー兵器とかの方が現実味がありそうですが)デス・スターの外殻に鋼鉄を使用するのも悪くはないかもしれません。それでも、構造質量は全部鋼鉄にしない分、大きく変わってくるわけです。鋼鉄の使用はデス・スターの表面に留めて、内部はもっと軽量な素材を使いましょう。
対重砲用の装甲の厚さは、厚いものだと100ミリにもなります。直径160キロメートルのちょっと小ぶりなデス・スターで考えてみると、大体表面が8万平方キロメートル。それに100ミリメートルの厚さを掛けると、80億立方メートルの鋼鉄が必要です。1立方フィート(約0.028立方メートル)あたりの鋼鉄の重さは500ポンド(約227キログラム)とのことなので、2000兆ポンドにちょっと足りないくらい、大体9070億トンくらいでしょうか。先の建造費用見積もりではこれが1000兆トンになっていたので、大幅削減です。
鋼鉄の価格は1トンあたり500から800ドルとのことなので、少なく見積もって(でっかいプロジェクトなのできっとまとめ買い割引が効きます)500ドルで計算すると454兆ドル、約4.5万円で計算すると4京円となります。元々の見積もりではここまでで80京ドルを越していて、世界のGDPの1万3000倍なんて数字になっていましたが、それに比べると世界のGDPのたったの数倍、微々たるものです。
とはいってもここまでの計算では、アルミニウムとか内装とかレーザー兵器も未搭載の、外殻だけのハリボテ・デス・スターです。それでは、人工衛星をスケールアップしてみましょう(ただ戦艦をスケールアップするよりもずっと適切です)。今のところ最大の人工衛星である、国際宇宙ステーションでやってみます。ただ、デス・スターの内装のボリュームや密度は十分な情報がないので、想像力で補うしかありません。それに、それを想像で補ったとしても実際の建設コストを推測するのは難しいでしょう。
元々の予算ではこんな事が書かれています。
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デス・スターのサイズにするには1.08x1015トンの鋼鉄が必要です。つまり1にゼロが15個付く数。
膨大な量に感じられますが、地球に眠っている鉄の量からすれば、200万個以上のデス・スターが作れます。地球の表面からとれる鉄は限られているかもしれませんが、地球のコアにはすごい量ですごい密度の鉄があるんです。デス・スター建造用の鉄はそこからとりましょう。
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『ザ・コア』みたいに色々無理してコアまで行かなくても、いい方法があります。見積もりが掲載されているサイトのコメント欄には、地球から宇宙までモノを打ち上げるには現状では1ポンドあたり1万ドル、約90万円の費用(スペースXのファルコン・ヘヴィーが成功すれば数千ドル程度になるかも)がかかるとされていますが、その費用もかけずにやっちゃいましょう。そう、材料を宇宙で集めるんです。
石鉄隕石とか鉄隕石の小惑星から鉄を掘削します。炭素系の小惑星であればカーボンが取れるだろうし、合わせてやればジャジャーン、鋼の出来上がり。石鉄隕石は(月もそうだけど)アルミニウムとチタニウムも含んでいます、カーボンを合わせればカーボン複合材も作れますね。ディープ・スペース・インダストリーズという新しい会社は、つい先週それを実際にやる予定だと発表していますから、そう非現実的な案でもないかもしれません。
元々の見積もりはもちろん冗談で出されているんでしょうが、その隅をつついて現存の技術で未来のナニカを作るのに掛かるコストを考えると、色々と面白い点が見えて来ましたね。デス・スターのようなモノを作るには地球外の産業文明の必要性があるであろうこと、そしてそこには太陽系の持つ資源を大いに活用しなければならないだろうこと(我らが母星への環境負荷も考慮して宇宙で建造するという点も含む)。
実現するためにはオートメーション技術も進歩させなければならないでしょうし、宇宙で採掘された資源の価格のほうが、地球で採掘して重力場を飛び出させるのに掛かるコストよりも(例えローコストな宇宙行きシステムやスペースエレベーターができても)安くなるんだろうな......なんて考えに至ったりもします。それに、世界のGDPの何倍にもなるコストのことを考えれば、デス・スターを作るような文明は地球とは比べ物にならないくらい裕福(他の星を搾取して集めた金という見方もできますが)であろうことも...そしてそんなものたてて何に使うんだ、という根本的問題も浮かび上がってきます。
しかし、そんなにのんびりしてると圧倒的な戦力で攻めてきた火星人とかに支配されちゃうかもしれませんね。デス・スターが無理ならちゃっちゃと宇宙空母ギャラクティカとか宇宙戦艦ヤマトみたいなのを建造して「マーズワン」プロジェクトからの助けを求める声に応えられる体制を作っておきましょう。誰かお金持ちの人よろしくお願いしまーす。
ランド・シンバーグさんのTransterrestrial Musingsより転載
Top image via Lucasfilms; middle image by Ralph McQuarrie; bottom via
[via io9]
(abcxyz)
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