WiredとエフェクトスタジオのWETAが、『ホビット 決戦のゆくえ』の戦闘シーンとスマウグのシーケンスのVFXの裏側を紹介した動画をアップしました。
それによると、スマウグの翼は驚くほどリアルにモデリングされているだけでなく、吐いた炎がどう建物に影響し、翼の動きによってどう動いているように見えるのかまで計算されているのだとか。アカデミー賞の視覚効果賞ノミネートを逃したのが不思議に思えてくるかもしれません。
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WETAが創設されたのは約20年前のこと。以来、40以上の作品を手がけてきました。その中にはアカデミー賞にノミネートされた『猿の惑星: 新世紀』も含まれています。
しかし、今日注目するのは、同じくWETAが手がけた『ホビット 決戦のゆくえ』。同作には非常に複雑なキャラクターのシミュレーションが使われており、背景は息を飲む美しさです。
『ロード・オブ・ザ・リング』の見せ場と言えば、「マッシブ」というクラウドシミュレーションソフトウェアを使ったバトルシーンでした。ニュージーランドで開発されたこのソフトウェアは本作でも当然のように使用されていますが、今回活躍したのは「アーミーマネージャープロダクションツール」です。
「マッシブ」は所謂ファイナルで使われるツールです。一方のアーミーマネージャーは、プロダクションでも初期の方で使うことができ、プレビズとファイナルショットの間を埋めることが可能なので、ピータ・ジャクソン監督に「どような戦闘を撮るか」ということを決断させる手助けとなるソフトウェアでした。
また、本作ではWETAの新しいレンダラーである「マヌカ」がメインで使われています。このマヌカが初めて使われたのは『猿の惑星: 新世紀』。35万(fxguideによると75万以上も可能とのこと)もの新しいコードをレンダーし、流動的な動きやディテールに拘ったキャラクターの再現を助けしています。
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの最初の作品で最も記憶に残ったものは戦闘シーンや、登場して以来常にアカデミー賞の競争相手として名を連ねるWETAのゴラムのようなデジタルキャラクターです。
『ホビット』シリーズでは、手の込んだコンピューターシミュレーションの中に組み込まれた「クロージングボリューム(肺気量)にあるエアーシミュレーションを駆動させる煙や翼の技術」がそれにあたると言えるでしょう。
この「エアーフロー流体」はファイアシミュレーションに影響を与え、建物破壊の詳細な表現を可能にさせました。崩壊した建物はボディシミュレーションで流体シミュレーションと相互作用します。
そして、順に煙や湯気を浮上させ、ドラゴンの羽の動きによって渦を巻いているように見せるのです。煙はドラゴンが吐いている設定で、この容量計量された供給がボディに働きかけて気流を起こしているように見えるのです。
シリーズものということで初期からのビジュアルイメージを壊すことなく、そのパイプラインの中で最先端で非常に複雑なアニメーションとレンダリングをプロデュースするというのは並大抵のことではありません。
アカデミー賞にノミネートされていなくとも、『ホビット 決戦のゆくえ』は紛れもなく良作と言えるでしょう。
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[via Kotaku]
(中川真知子)
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