ゲーム感覚で戦争してるって批判されてもしょうがない? でも実は...
上の画像は、現在西アフリカのマリ共和国で任務に付いているフランス兵の姿。FPSファンならお判りのように、彼のかぶっているマスクは『コール・オブ・デューティ』シリーズに登場する、あるキャラクターのトレードマークともなっているマスクにそっくりです。
このことがどうやら怒りを買い、フランス軍と政府はこの「許され難い」行為に対する調査を開始したとのこと。しかしこのマスク、実は......
詳細は以下より。
そんなマスクひとつでそんな大げさな...と思われるかもしれませんが、こちらのマスクは『コール・オブ・デューティ』のサブシリーズである『モダン・ウォーフェア』シリーズに登場するゴーストというキャラクター(下の画像)のマスクに実に似ています。
フランス軍の兵士と、この「超暴力的なゲーム」といった形容もされることのあるゲームに人々(やフランスのメディア)が見出した共通点はとてもポジティブに受け取ることの出来るものではなく、ツイッターでも話題になっています。
AFP通信によれば、先週はじめのプレスカンファレンスでフランス軍のティエリー・ブルクハルト大佐はこのマスクの着用は「許しがたい行為」であり、それは「フランスがマリへの行なっている支援活動を表しているものではない」と語っていたようです。フランス当局はこの兵士を特定しようとしている模様。
しかし、実際にはこのマスク、「ゴースト」だけのものでも、例の写真のフランス兵のだけのものでもありません。このスカル柄のマスク(もしくはバラクラバ、ゴーストが実際にかぶっているのがこれ)は、世界中の軍隊でよく見かけられるものなんです。特にアメリカの軍隊の中でよく見られるこれは、実際に、長年にわたって、ちょくちょく写真に写されてきています。つまり、これはこのフランス兵ひとりが勝手にやっているというわけではなく、世界中の兵士の間で「ファッション」として成立しているものなのです。
すなわち、このマスクは『コール・オブ・デューティ』が生み出したものでも、その開発会社インフィニティ・ワードが生み出したものでもないということ。実在する兵士たちが被るそのマスクにインスパイアされてゲームに登場したというわけです。元々米軍兵が通常装備の代用品として使用したのが始まり(元々はスキーマスクだった)のようで、イラク戦争初期から使用されてきたようです。つまり約10年前、『モダン・ウォーフェア』シリーズが産声を上げた2007年よりも前の話になります。
そして『コール・オブ・デューティ』がこのマスクを使用するよりも以前に、ハリウッドもこのマスクを使っていました。クリスチャン・ベールさん主演の映画『バッドタイム』です。上の動画では、ベールさんが「ゴースト」とほとんど同じ、フランス兵のモノとも殆ど変わらないスカルマスクを被り戦闘を繰り広げています。
つまり、マスクは『コール・オブ・デューティ』が実在の兵士たちからインスパイアされたもので、実在の兵士たちが『コール・オブ・デューティ』からインスパイアされたと考えるのは的外れだということ。ダサいトラックパンツが世に出回っているのは『グランド・セフト・オートIV』のせいだ、なんて言っているようなものなんです。もし、人が殺し殺される戦争のさなかに装飾のついたマスクを着用するという行為に対して憤慨しているというのであれば、現在のこの報道を見る限りは、広報が大失態を犯しているという風にしか見えません。
2007年のリリースされた『モダン・ウォーフェア』以降、このようなスカルマスクを見る機会はだいぶ増えてきた気がします。もしかしたらこのフランス兵がゲームから影響を受けてこのマスクを被ったのかもしれません。しかしフランス当局が、このマスクを被る姿を写真に写された兵士が誰で、何故このマスクを被っているのか知らない状況で今回のようなコメントをしたというのは少々馬鹿げている気もします。
このフランス兵を撮影したAFPのイソウフ・サノゴさんは、写真に対するメディアの過剰な反応に「驚いた」と語っています。
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ヘリコプターが一機着陸しようという時で、そこら中に砂埃が舞っていたんです。兵士たちは皆、直感的にスカーフを取り出し砂が口の中に入らないようにしていました。夕方で陽の光が木々の間から砂埃を通して射してきて、とても美しい光でした。
変わったスカーフをしていた兵士が目に留まったので、写真を撮ったんです。その時には、その光景は奇妙にもショッキングにも移りませんでした。兵士はポーズをしていたわけでもなく、写真にもやらせ要素はありません。彼はその場所に立っており、顔を砂埃から防護して、ヘリコプターが着陸するのを待っていた、それだけなんです。誰にも写真を撮るのを止められはしませんでしたしね。
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米Kotaku記事のライターはコメント欄に「兵士たちは戦争で戦っており、殺すことを仕事にして(もしくはその威嚇を与える存在として)戦場にいるんだ。こんなマスクひとつがなんだって言うんだ」といったコメントを残していますが、それに対しての読者のコメントの中にはこんなものも。
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RainbowTeeth:このマスクがおおごとなんだよ。この仕事ではプロフェッショナルに徹しないといけない。僕は海兵隊の歩兵分隊長(0311)として、東ティモールのワーデン作戦、不朽の自由作戦、イラクの自由作戦に参加した。ファッションを見せるようなことをすれば、それが威嚇を意図したものであった場合は特に、即座に正されたよ。米本土の訓練中でもそうだった、少なくとも僕の隊(L Co.3/1)ではね。僕の隊でそんなモノを付けることは許されなかったし、もしそういった者がいたら、それを指摘した海兵以下の隊員は、指摘された兵の指揮系統に居るもの全員が処罰を受けるんだ、僕を含めてね。
UCMJ(軍事司法統一法典)の中にもこれに関する記載があるし、そうでなくともこの行為はUCMJの総則(General Article 134)にも違反する。フランス軍の規定は知らないし、支給品の中に入っていない必需品としてマスクを買おうとした時に、このマスクよりも控えめなものが無いというのであれば僕も許そうという気になるけど。
スカルマスクに関する僕の個人的な見解はこうだ。着けて殺す行為は、着けずに殺すよりも悪い:これは周囲が戦闘とその正当化をどう受け取るかということなんだ。多くの人、特に軍事行動によって直接影響を受ける人々には、これはあからさまな攻撃性および/もしくは尊敬の欠如に写るんだ。こういった無知な行動からは、その行動自体に悪い意図がなくても、反感を与えたり間違ったプロパガンダとしてとられる可能性も持っているし、一度そう見られたら抑制がききづらいんだ。
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他にも「『メタルギア』のゾンビフェイスペイントか」、「兵士と軍服は、兵の仕える国を認識するためのものだからこれは許し難い行為。学校でこのマスク被ったら校長室に呼ばれて『許し難い』っていわれるのと同じ。また、国外で彼の国を代表して活動している兵であることも忘れてはならない」、「『ベストキッド』にいたよなこんなヤツ、80年代のリバイバルじゃない」、「一般市民に対してフレンドリーに接することも『戦争』の一部。死神のようなマスクを付けるなんて話にならない」、「まじかフランスって軍隊持ってたのかよ...」といったコメントがありましたが、読者の皆様はどう思われますでしょうか。
Unmasking a controversy in Mali[AFP via Kotaku]
(abcxyz)
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