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【考察】なぜロック音楽は「悪魔」を題材にし、それを良しとするのか?

2014/12/05 22:30 投稿

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ロックンロール 悪魔 テーマ 考察


全国666万人のロック・ファンの皆さまは、この理由を言えますでしょうか? 

古今東西、ロック音楽には悪魔的でダークなイメージがセットとして捉えられており、かつての記事「【考察】ファンタジーとホラーとヘヴィメタルの深く濃い関係とは?」でも、イギリスのスクリーミング・ロード・サッチさんをはじめ、ジミー・ペイジさんは黒魔術に傾倒していたという噂が流れた話や、「ブラック・サバス」のコンセプトが「人を怖がらせる音楽を作る」というものだったという話題が出ていましたように、何かとロックは悪魔的な要素と高い親和性を持って進化していったジャンルでもあります。


【大きな画像や動画はこちら】

今回は「io9」で取り挙げられていた、とある本を題材に「なぜロック音楽は「悪魔」を題材にし、それを良しとするのか?」について考えてみたいと思います。それではレッツ・ロックンロール! 




■ 現在でも続くロックとオカルトの好相性

まずはこちらの本と作家さんをご紹介します。

ロックンロール 悪魔 テーマ 考察

魔女の季節


ピーター・ビバーガル氏が書いた本『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ:オカルトがどのようにロックンロールを救ったか』という本では、ロック音楽だけでなく悪魔や魔法使い、伝説の冒険などといったファンタジー要素が好きな人々なら必読の一冊。

この著者はメタラーにして、ハーバード大学の神学校で勉強された方で、キリスト教やユダヤ教の教えにも詳しいだけでなく、ロック音楽史やロック系のトリビアにも造詣が深い方なのだそうです。

「io9」のシェリル・エディー記者は、このビバーガル氏と対談する機会を得て、人々を魅了する音楽のダークサイドについて語っています。以下はその会話の中から今回のテーマを考察してみたものとしてお届けします。

カバー・アートは70年代風のサイケデリックなネオンカラーで彩られ、300ページに満たないボリュームとあって、全部のハンドを網羅しているわけではないそうです。

決してロック辞典のようにしたくはなかったという思いがあったそうですが、各章には3つの柱となる物語を据え置き、これらが大きなテーマを支えたと言っています。

たとえば「ブラック・サバス」が、ポップ・カルチャーへ悪魔のイメージを広める取っ掛かりになったことに触れ、そこからヘヴィ・メタル音楽や世間一般での悪魔の扱いについても言及したとのことです。

こうした象徴的なバンドやストーリーから、徐々に話を狭めていき「モーターヘッド」のレミー・キルミスターさんがかつて在籍した「ホークウインド」や、後にアリス・クーパーさんに影響を与えたアーサー・ブラウンさんなど、ロックに詳しくない人たちにも伝説的バンド/ミュージシャンを紹介することができた、と語られています。

ちなみに下の動画が、彼のバンド「クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン」の『ファイアー』(1975年)のライブ・パフォーマンス。ドクロのようなメイクで歌うこともあったブラウンさんですが、こちらは金属的なマスクと炎が燃え盛るツノを被った、強烈なインパクトです。



そして著書の中では『レッド・ツェッペリンlll』と『〜IV』についても書かれています。一般的に『天国への階段』が収録されている『~IV』のほうが知名度が高いかもしれませんが、コアなファンならやっぱり『~lll』でしょ! ということだそうで。


ロックンロール 悪魔 テーマ 考察 レッド・ツェッペリン

『アアア~アァ!』でお馴染みの「移民の歌」も収録


ビバーガル氏は古いバンドやミュージシャンだけでなく、最近のモノもリサーチされています。中でも1970年代のオカルト魂を体現しているバンドが、カナダのトロント出身のドゥーム・メタル・バンド「ブラッド・セレモニー(Blood Ceremony)」。女性ヴォーカルと男性3人によるバンドですが、着ている衣服もサウンドも、PVのヴィジュアルですらも70年代風です。

時にはかなり「ブラック・サバス」を意識した曲も有りますが、とりあえずはこちらの公式動画をどうぞ。



ロック音楽で好まれるサタニズム要素も受け継がれているようですが、2014年の現代では、これが一周回ってクールなバンドなのでしょうか? それともやっぱり異端な扱いでしょうか? 

続いては、2009年にイギリスのケンブリッジで結成されたサイケデリック・ハードロック・バンドの「アンクル・アシッド&ザ・デッドビーツ(Uncle Acid & the Deadbeats)」。彼らは1960年代の初期ヘヴィ・メタルから影響を受けているとのことですが、フツーにカッコ良いので下の動画以外にも探してみることを激しくオススメします。



そしてアメリカ合衆国ヴァーモント出身のパワー・ポップ・バンド「キング・タフ(King Tuff)」にも、70年代辺りの影響が見受けられるとしています。



他にもシアトルのドローン・ドゥーム「earth」や、同じくシアトルのドゥーム・メタル「SUNN O)))」、そしてフィンランドのバンド「ヘックスヴェセル(Hexvessel)」も70年代サウンドで、こちらは魔女狩りのあったセイラム村の女をテーマにした曲を歌ったりしていますし、「ブラッド・セレモニー」のヴォーカル、アリアさんがゲストで歌う曲があったりもするんです。3バンド続けて動画をどうぞ。





というように、今でもオカルティックな血脈を受け継いでいるロック・バンドは多くいることが解りますね。どれもがクラシックではなく、2000年代になってからのバンドと言うから、驚く方々もいらっしゃるかもしれません。




■ 悪魔的テーマのロック音楽がファンに与える影響

本の中では、アーカンソー州ウェスト・メンフィスで3人の男児が惨殺された猟奇殺人事件の容疑者3人「ウェスト・メンフィス3」(容疑者はブラック・メタル愛好家で悪魔崇拝をしており、生贄の儀式をしていたと決めつけられた)を筆頭に、こうしたファンたちやミュージシャンたちでさえも、悪魔および非キリスト教の創造神を崇拝しているわけではないと書かれているそうです。

デンマークやノルウェイなど北欧のブラック・メタル愛好家たちには、本気で悪魔崇拝をしている人たちもいるそうですが...ビバーガル氏曰く、「一般的なロック・ファン/ミュージシャンたちは、悪魔という象徴を現代社会の悪に対して比喩的に利用しているに過ぎない」としています。

「五芒星を逆さまにしたら、なんかアナーキーじゃね?」っていう中二病的なノリとでも言いましょうか。しかし実際には、実在する悪魔教会は非常に真面目で、人間らしく生きることをモットーとした健全なカルト宗教だったりするのは以前にお伝えした通り。

司祭の衣装にドクロのメイクが物凄いインパクトを与える、ヴォーカルのパパ・エメリトゥス2世率いる「ゴースト」というスウェーデンのメタル・バンドがいます。彼らの音楽は重さがなく聴きやすいポップな感じなのですが、「ヘイル・サタン(悪魔万歳)」なんて言葉も飛び出すほど。公式サイトではオッパイねーちゃんが登場する『Year Zero』動画も掲載されていますが、ここでは代表的な曲『Secular Haze』を観てみるとしましょう。



それでも、このバンドに感化されて殺人事件を起こすようなファンはいないでしょうね(多分)。

ビバーガル氏は、この本を書いていることを周りの友人たちに話したところ、みんな彼が悪魔や何か暗黒的な事について書いているものだと考え違いをし、「ロック=悪魔の音楽」だと勝手に解釈したそうです。それほどまでに「ロック=悪魔の音楽」のイメージが独り歩きしていると感じたそうです。

そのイメージ定着の原動となったバンドのひとつが「ブラック・サバス」であり、ヴォーカルのオジー・オズボーンさんもソロになってから、悪魔的なイメージで売っていきました。ですがオジーさんご自身は、劇場的なパフォーマンス用であり、それは「面白いからやっている」と公言しているのです。

では『ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説』に収録されている『ミスター・クロウリー』を聴いてみるとしましょう。これはイングランドのオカルティストにして儀式魔術師だった、世界最悪の変人アレイスター・クロウリー氏について書かれた曲です。蛇足ですがウィキペディアによると、ジミー・ペイジさんやデヴィッド・ボウイさんも彼を信奉しているそうです。



音楽というのはリズムや歌詞やメロディーがあって、ミュージシャンから視聴者へ原始的な方法でメッセージを伝えられる方法です。ロック音楽特有の爆音+身体を揺らす効果などと相俟って、ある種のトランス状態を作り出せば、そこに宗教的なメッセージなんかを乗せると熱狂的な信者が一丁上がりってな事になり得るのです。

ロックがイコール宗教ではありませんが、ファンたちがひとつの集団を形成して、バンド及び彼らが訴求するテーマなどを崇拝するのに様々な役目を果たしてきたことは否めないかと思います(程度の差は別として)。

音楽を聴く視聴者たちは自らを音楽に心酔させ、何らかの自己催眠をかけることが出来ます。ですが熱が冷めればいつでもそのサークルを離れることもできます。しかしその聴いていた音楽が、どれほど自分の心に訴えかけてきたか、そのパワーは忘れることはないでしょう。

今回の話題のロック・ファンたちは、たまたま悪魔をテーマにしたロック音楽に心打たれた、というだけなのだと思います。




■ ポップ・スターでもオカルトにハマることもある

ビバーガル氏がこの本を執筆中、最も驚いた事実が「ダリル・ホール&ジョン・オーツ」のダリル・ホールさんもまた、オカルトに傾倒しアレイスター・クロウリーをテーマにした、賛美歌という意味のアルバム『セイクリッド・ソングス』を制作、発表してしまったことなのだそうです。

それは「キング・クリムゾン」のギタリスト、ロバート・フリップさんと手を組んだプロジェクトで、ホールさんの清廉なイメージと経歴が損なわれるから止めておけと、さんざん周囲からもRCAレコードからも反対されたのにも関わらず、突っ走ったものだったんですって。

リリースされた結果、何も損なわれることもなかった上に、割と好調なセールスを記録したそうです。

実はオカルトがテーマだとしても、さすがダリル・ホール&ロバート・フリップのコンビとあって、ポップで美しい楽曲に仕上がっています。ポップ・スターでさえも、オカルトに魅了され夢中にさせられることもあるのだなぁ、という例がこれなのです。





長々と考察してきましたが、結局は前記事でも「独特の攻撃性と反逆性を持ったディストーション・サウンドがどういうワケか、ダークなイメージと親和性を深め続けて行った」と言及したり、今回の記事でもオジーさんが公言した通り、爆音でパフォーマンスをするのに格好の題材だから、ロック音楽は悪魔的な曲を書くバンドが多いということになるのですね。

もうそれがファッションとなって長いので、演る方も聴く方もわざわざ口に出してそんなヤボなことは言いませんし、腹の底では大体みんな承知の上だと思うんですけどね。一部北欧のブラック・メタラー以外は...!!


How Rock and Roll Found Satan -- And Why That Was a Good Thing[io9]

岡本玄介

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