スーパーマリオ64 チャレンジ 可能 ボタン


もしかしたら、開発者よりもこのゲームを熟知しているかもしれませんね。

配管工のオッサンことマリオは、開発段階では「ジャンプマン」と呼ばれていたことを知る人も多いかと思います。初代『ドンキーコング』でも『マリオブラザーズ』でも、その名の通りピョンピョンと華麗に跳躍するのが彼の持ち味なのですが...。


【大きな画像や動画はこちら】

今回ご紹介しますゲーマーは、『スーパーマリオ 64』でそのジャンプを使わずにプレイする猛者です。ありえないほど戦略的に、考えに考え抜いてステージをクリアしていったその様子やメモ書き、動画などをあれこれ観ながらお伝えしたいと思います。




日本も北米も、『NINTENDO64』に『スーパーマリオ64』がリリースされたのは1996年ですが、ハードコアなファンたちは、一度や二度クリアしたくらいでは飽き足らず、今でも「チャレンジ」と称して様々な条件のもとでゲームをプレイしているのだそうです。

たとえば「Aボタン・チャンレンジ」。これはステージをクリアするにあたりゼロ回、または必要最低限の回数しかAボタンを押さないといったもの。Aボタンはつまり、ジャンプのボタンですね。

マリオにとってジャンプが出来ないのは、翼をもがれた鳥と同じ。ですがブキャナンさんは、ジャンプの回数がなるべくゼロに近い数字になるようプレイしているだけでなく、実際にゼロ回でクリアしたステージも多くあるそうです。

敵を倒すのも、ステージをクリアするためのスターを獲るのだってノー・ジャンプでゲットする方法が存在するというから驚きです。まずはどうやっているのか、最初の動画でチェックしてみてください。



これでAボタンは1回のみの使用なのだそうです。ブキャナンさんの解説によりますと、操作は(その1回を除き)レバー操作Bボタンによるスライディングを多用し、マリオが浮いている床の端っこから落ちそうになると、勝手に進む特性を活かしているのだとか。

ほかにも、敵キャラの上に落っこちた直後にボインと跳ねるアクションも利用していますね。1:14でおわかりの通り、中空を浮いているジュゲムは格好の餌食です。しかし欲しいタイミングでちょうど良い位置まで誘導させるのがまた至難の業なのです。

ちなみにブキャナンさんは、コンピューター・サイエンスを専攻しているハタチの学生さんなのだそうですが、物心がついてからずーっと『スーパーマリオ64』をプレイしているんですって。

以前の記事「苦節18年、回収不能だった『スーパーマリオ64』のコインをゲット!」「インポッシブル・コイン」を獲ることと、「絶対に倒せない『スーパーマリオ64』のクリボーの謎」にて、「インポッシブル・クリボー」を倒すことに成功したあの人、と言えばピンと来ますでしょうか? 

そのブキャナンさんさんの情熱は、このようなコメントに表れています。

---------------------------------------

わたしは、あたかも子供が『スーパーマリオ64』をクリアするような遊び方では満足できないんです。たとえば各コースでコインの得点を最大限まで稼ぐなど、とにかくカンペキに制覇したいんです。


なので、全てのコインが在る場所が記されたウェブサイト を見つけ出し、「インポッシブル・コイン」でさえも全てのコインを獲得する方法を注意深く学んでいったりもしました。
---------------------------------------

完璧主義者の執念が、ふたつの不可能を可能にしたというのがわかるような気がしますね。では次のテクニックをご紹介しましょう。



こちらは、「コース6・やみにとけるどうくつ」にて、「ケムリめいろ」でジャンプ無しでスターを獲るシーンです。15分待たないとカンペキなタイミングが訪れないのですが、このチャレンジがブキャナンさんの初めての挑戦だったそうで、エミュレーターを使って何度も挑戦したそうです。

では次は、「コース7・ファイアバブルランド」でのノー・ジャンプにしておそらく最短コースでのクリア方法です。



一旦、溶岩に飛び降りてマリオを高くジャンプさせるのがミソなのですね。まだ動画をふたつしか観ていませんが、確かにAボタンを押さずとも勝手にジャンプ・アクションが起こるやり方がいくつもあり、本当にノー・ジャンプによるクリアというのも、眉唾ものではなくなってきたように思えます。

---------------------------------------

エミュレーターを使えば、従来の方法より楽に実験が行えるようになります。現状をセーブして、自分自身を記録しておけば良いのです。


エミュレーターを使い出した時が、動画を作ることになったきっかけなんです。エミュレーターの力を借りれば、失敗した所からやり直せるからです。


---------------------------------------


中には「エミュレーターを使うのはズルだ」と考える方々もいらっしゃるかと思います。「根気と根性による純粋な攻略ではない」と考えるかもしれませんし、それも良く理解できます。

しかしながら、「効率的に攻略方法を見出すのに必要なツールだ」と考える方々もおられるでしょう。使用の是非は一旦置いておくとしても、ブキャナンさんのようなプレイヤーは、想像を絶するほどの回数でゲームをやり込んでおり、ノンプレイヤーキャラクターの行動パターンまで熟知するほどの方なのです。

---------------------------------------

チャレンジに取り掛かるまで、頭の中で何度もたくさん見通しを立てるんですよ。
---------------------------------------

というブキャナンさん。次は「やみのせかいのクッパ」で赤コインとスターを集めてクリアする動画です。もちろんジャンプはゼロ回です。



このように、たった2分半もないゲームプレイであっても、コントローラーを持つまでに2時間ほど攻略方法を考えていたのだそうです。場合によっては、2週間かけて考え出したステージもあったのだとか...!!

---------------------------------------

どれくらいの時間を考えることに充てるのかは、どれくらい効率的に最適化されたプレイをするかに比例するんです。


---------------------------------------

思い通りにカンペキなクリアができるまで角度が違えば別の角度からさっきと同じ動作を繰り返し、何十回もすることになるのです。時として、そのチャレンジは非常に複雑なステップを踏むことすらあり、ブキャナンさんは数学的な計算をして攻略する場合もあるのだそうです。

そんな時に書かれたメモがこちらの3つ枚です。


スーパーマリオ64 チャレンジ 可能 ボタン

こちらは行動チャート表でしょうか?


スーパーマリオ64 チャレンジ 可能 ボタン

何かが62パターンも導き出されているようです


スーパーマリオ64 チャレンジ 可能 ボタン

ゴールに辿り着くまでの16パターンをテストしたみたいですね


普通にAボタンでジャンプすれば遥かに簡単なものの、ブキャナンさんはこのように実験や計算をしながら最適な方法を見つけ出すのです。時には攻略の途中でちょっとしたバグ要素を見つけ出し、見ただけでは分からないような隙間へ侵入することもまた、無きにしも非ずです。

そしてその時に、「どうやったら一度もジャンプ無しでこのゲームを制覇できるのだろうか?」と自問自答したのだとおっしゃいます。考え抜いたプラン想像性が欠かせないという、『スーパーマリオ64』ノー・ジャンプ・クリア...次の動画をどうぞ。



こちらは「みずびたシティー」でまるで忍者のように壁伝いを進み、金網の向こう側へ行った後、水中のトンネルを行ったり来たりで11時間(!?)待ち、「ダウンタウン」でスターを獲ってクリアする様子です。正当な方法ではなく、欠陥(ポリゴンの隙間)を見つけ出さなければ行けない場所なんですね。


---------------------------------------

もしも水位を上下させることが、ゼロ・A・ボタンの挑戦でスターを獲る助けにならないものかと、ずっと考えていたんですよ。そこで突然閃いたのが、「もしも水位を可能な限り最高値まで高めることができたなら?」ってことだったんです。


もしもこれが出来たら、水位が最も低い位置にまで溢れるんじゃないかって説を唱えてみたんですよ。そしてハッキングしてみて、これが正しいことを見つけました。TAS(ツール・アシスト・スピードラン)を使って特殊な水位になるまで水を上昇させ、最下位から最上位までの間を往復するこの状態を「overflow water level(氾濫水位)」と名付けたのです。なのでこの水位の上下を利用して、ゼロ・Aボタンでスターを集めることが出来るようになったんです。


水位を上昇させるには、ゲーム上で異常な箇所を利用します。それは街の水位が定期的に上昇と下降するのですが、街の画面が登場する時に水位がちょうど真ん中になるように街から離れます。つまり水位が頂点に達するであろう間は離れておくと、水位は徐々に上昇するのです。水位は16ビットの整数で演算されているので、最高位の時には...


「7FFF (hex) = 0111111111111111 (binary) = 32767 (decimal) 」


となり、水位がもう1ユニット分増えると水位が最下位になります。それがこれ。


「8000 (hex) = 1000000000000000 (binary) = -32768 (decimal) 」


---------------------------------------


ブキャナンさんがゲームをハッキングするのは、ただズルがしたいだけではなく思い通りにクリアするための研究でもあり、動画で視聴者に楽しんでもらうためでもあり、何より彼自身への挑戦でもあるのです。

しがないゲーム・プレイヤーなのに、プレイを極限まで突き詰めた先がディベロッパーみたいなことになってしまうのですね。訳者が思ったのは、たとえばエンジンの構造を理解するためには分解をしなくてはならず、そのために工具が必要になり、この場合のハッキングに関しては良し悪しでは語れないような気がしました。

お次はこちらの動画。もうAボタンどころか、どのボタンも押さずレバー操作のみで「コース10・スノーマンズランド」10-4「つめたい いけをこえて」をクリアします。



実は6時間半という大変な時間がかかっているよこのノー・ボタン攻略法。これはがまぐちくんをスターが収められているブロックまで誘導していき、大量に増殖させてからマリオをバウンスさせてブロックに導いています。

ブキャナンさんいわく、誘導が超絶に大変な作業だったようで、マリオをわざとがまぐちくんにぶつけて体力を削りながら徐々に追い詰めていき、この成功動画を撮るまでにやり直したリテイクはなんと6368回にも及んだのだそうです。

それでも成功するまでは、本当に成功するかどうか自信が無かったとのこと。にしてもそれだけのやり直しをしたとは、もはや執念としか言い表せませんね。

そんな執念は、「インポッシブル・クリボー」を攻略した時にも熱心な研究成果がありました。それこちらのエクセルを使用したスプレッドシートです。


スーパーマリオ64 チャレンジ 可能 ボタン

増殖させたクリボーごと細かな数値が記されています


実はブキャナンさん、「ノー・Aボタン」チャレンジ同様に「ノー・Bボタン」チャレンジもかなりの回数をこなしています。ジャンプで敵を踏んづけることもなくクリアする場合もあり、ゲームの脆弱性を利用せずともやってのけることもしばしば。

次はボタン操作ゼロで8枚の赤コインを集める動画を3種類どうぞ。



壁際の甲羅サーフィンがイカしてますね。お次もボタン操作ゼロ。



「コース8・あっちっちさばく」でもやっぱり、ボタン操作ゼロでクリア。



空を飛ぶだけでクリアしてしまいました。これは楽しそうですね。そして次は上の動画と反対に、ジョイスティックの操作ゼロで、ボタン類のみでのクリアです。



進み方が地味なだけでなく、方向転換すら自分で出来ないというドMな制約の中で見事なクリア。

---------------------------------------

わたしはこのジャンルのゲームが生まれたことを呪いますよ。ノー・ボタン攻略動画を観た視聴者によるコメントで、「凄いね! じゃぁ次はノー・ジョイスティックにも挑戦だ!」なんてジョークを飛ばしてくるんですからね。


でもジョークだって言うのに、考えれば考えるほどそれが可能かもしれない...なんて気付いてしまうんですから。


---------------------------------------

少しでも『スーパーマリオ64』で遊んだ経験のある方でも、まさかここまでマリオを操ることができただなんて、誰も思わなかったのではないでしょうか? ブキャナンさんの『スーパーマリオ64』への愛は、我々の目からウロコを落とさせてくれるものばかりです。

次もゼロ・Aボタンですが、ゴール寸前の動きに注目です。



速くてよくわからないかもしれませんが、これは地底湖のドッシーを乗り越えてスライディングした先には扉、ガサゴソ、スターが一直線に並んでおり、加速がついて上手いこと床の穴を跳ねながら避けてゴールしているのです。

次は珍しく、1回だけAボタンを押してクリアした動画です。



「コース14・チックタックロック」でボム兵を抱えたまま金網の隙間を通り抜けています。このステージはコントロールがエクストリーム級に難しいのだそうな。

これが最後の動画になりますが、こちらも1回だけAボタンを押してクリアした動画です。



ひとつ前の動画もですが、敵をやっつけるためではなく、コースの構造上どうしてもAボタンを押さないと移動できないようです。

それでもレバー操作のみで、アトミックテレサに押される形で鋭角な屋根伝いを登るマリオ。ブキャナンさんはこの攻略法で数え切れないほど失敗したそうですが、最後にはなんとか誘導したアトミックテレサを倒すことに成功しています。




他にもまだまだブキャナンさんによるチャレンジ動画は大量に公開されているのですが、キリが無いので今回はこの辺にしたいと思います。また彼のウルトラ・プレイが発表されたら、ご紹介しますのでどうぞお楽しみに! 


画像:Sam Woolley.

The Man Who Does The Impossible in Super Mario 64[Kotaku]

岡本玄介

関連記事

RSS情報:http://www.kotaku.jp/2014/11/the-master-of-super-mario-64.html