俺たちのピープルズチャンピオン、ロック様ことドウェイン・ジョンソン主演の古代ギリシャ筋肉スペクタクル映画『ヘラクレス』。
今回は本作でこれまでとは違う、新しいヘラクレス映画を作り上げたブレット・ラトナー監督へ、インタビューして参りました。
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ブレット・ラトナー監督
――今回の『ヘラクレス』では、苦悩を抱えた人間という描き方をしていたところが新鮮でした。監督ご自身『ヘラクレス』の映画をずっと作りたかったとのことですが、最初に感じたヘラクレスとはどういう存在でしたか? 年齢を重ねたことでヘラクレス感は変化したでしょうか? どのようにして本作にたどり着いたのでしょうか?
ブレット・ラトナー(以下、ラトナー):子供に頃からヘラクレスには親しんでいたので、伝説、神話、ゼウスの子供であること、12の難業などは小さい時から知っていました。しかし、本作の元になっているグラフィックノベルを見た時に、ヘラクレスの神話が自分の中で脱神話化したんです。
それまでは、人間としてヘラクレスがどんな人物なのかはわかりませんでした。しかし、グラフィックノベルを読んで、こういう人だったのかもしれないなと思い、ヘラクレスを人間的に、加えて黒澤明監督の『七人の侍』のような傭兵が登場させることで、これまでのイメージとは全く違う描き方をするのが面白いと思ったんです。
彼は基本的に自分のことを信じていないんですね。ゼウスの子供だということを信じていないし、スーパーパワーのようなものも信じていません。しかし、自分の中に力を見つけることで周りが期待するヒーローになっていくという人なんです。
また、彼は家族の死を自分の責任だと感じていて悩んでいるところもあります。彼が鎖を破るシーンが非常に象徴的というか比喩的だと思うのですが、仲間の一人であるアムピアラオス(イアン・マックシェーン)は「自分のことを信じろ!」と叫びますよね。
それを聞いて初めてヘラクレスは鎖を破り、自分の今までの悩みから解放されるわけです。そして同時に「自分は伝説のゼウスの子供、ヘラクレスである」ということを確信するんだと思います。
――グラフィックノベルの映画化ですが、何か特別気をつけた点はありますか?
ラトナー:それほど気を付けてはいないです。X-MENではものすごく気を遣いましたけどね。
X-MENは何年も続く人気コミックで大ファンがいます。聖書のように端から端まで読み込んでいる人もいるので、細部にまでこだわらないと怒られることがあります。
一方で、ヘラクレスは比較的新しいグラフィックノベルで、新しい解釈ですからね。もちろん原作にインスピレーションは受けましたが、それほど内容的には縛られなかったと思います。
――『ヘラクレス』は実写、アニメーション、TVシリーズを含め、これまでにも何度か映像作品化されています。何か参考にした作品、好きな作品はありますか?
ラトナー:映画版にはあまり影響を受けていないのですが、アニメ版は好きでした。自分の伝説を利用して傭兵として稼ぐというストーリーのコンセプトが面白かったんです。
子供の頃は『ヘラクレス』の壮大なスケール感に憧れました。何千人もの人が出てきて、何百頭もの馬が出てくる。自分もこんな壮大な映画を作ってみたいと思っていました。
実はスタジオからはCGIを使うように説得されたのですが私は、この映画はもっとリアルで地に足がついた、生々しいものにしたほうがいいと思い、絶対セットを作ると主張してブタペストでセットを作ったんです。ブタペストは物価や労働賃金が安いということもあり、土地もいっぱいあるので、大きなセットを立てられましたが、かなりお金はかかりましたね。
――監督の撮るアクション映画はどれもワクワクさせるのが上手いと感じるのですが、そういった画作りのコツは何でしょうか?
ラトナー:多分、それは私が心から観客に映画を楽しんでほしいと思っているからです。観客が手を叩いて喜んでくれることを私は求めています。観客には本当に楽しんでもらいたいし、共感してほしいんです。あるいはのキャラクターと一緒になって感じてほしいと思っています。
仲間と劇場に行って皆で映画を見て笑ったり、泣いたりすることは素敵な経験です。なので、自分が売っているのは「興奮」だと思っています。アクション映画の中でも娯楽性、ドキドキしたり楽しんだりすることを大切にしたいんです。もしかしたら僕が未だに心が子供だからかもしれませんね(笑)。
私はアクションの為のアクションシーンは面白くないと思っていて、例えば誰かが映画の中で死んだ時に、観客にそれをどうでもいいと思われるは最悪ですよね。ただ50人を殺してしまうよりは一人、観客が共感したキャラクターが死ぬ方がよっぽどインパクトが強い。
そういった観客との共感の部分を大切にしたいと思っています。
――今回の作品ではドウェイン"ザ・ロック"ジョンソンのプロレス的要素は演出に反映したのでしょうか?
ラトナー:レスリングというよりは彼の人間としての部分です。彼は非常にカリスマ的で、人にやる気を起こさせる男なんです。今回の撮影時も俳優たちが大いにやる気を起こしました。
彼は深夜2時とか明け方4時とか日が昇る前に起きて何度もワークアウトをします。もちろん体を鍛え上げ、ベストな体型に仕上げてきただけでなく、ドウェインはものすごく職業倫理の上での倫理観が発達しているというか、働き者なんです。
周りもそれに影響を受けて一生懸命働いたわけです。そういう人間としてのドウェインの魅力を取り入れていると思います。
――本作のドウェインの演技で何か特筆すべきところはあったでしょうか?
ラトナー:自分の作品だからということではないですが、今回ドウェインは今まで見せなかった才能を見せていると思います。
これまで彼が演じてきた映画はわりと典型的なタフガイ、クールでタフで、一番大きくてという役が多かったように思うのですが、彼の役者としての才能の一つは繊細さです。自分の弱さだったり、脆さだったりをスクリーンで見せることができる類まれな才能があると思います。
人間は弱さを見せることで共感を呼べるので、そういうことのできる俳優というのは非常に賢いです。しかもドウェインは自分の弱さを見せるだけでなく、他の役者さんを輝かせることも厭わない男です。
誰とは言いませんが、ハリウッドスターの中にはアンサンブル映画で他の役者の輝く瞬間を盗み、自分のものにしてしまう人もいます。彼はその逆で、他の役者も輝かせることができる。それはドウェインの素晴らしい才能です。たぶん彼には恐れがないということなんだと思います。
――最後に日本のファンに一言お願いします。
ラトナー:私は小さい頃から黒澤映画、そして日本映画が大好きです。日本の映画や文化に対して、尊敬と賞賛の心を持って育ってきました。私は日本の映画監督たちのような素晴らしいマスターにはなり得ないと思っていますが、私は私なりに違うタイプの映画を作って、皆さんに楽しんでいただきたいと思っています。
本作はギリシャ文化やギリシャ神話を知らなくても、ファンでなくても楽しめる、共感できるヒーローものになっていると思うので、是非劇場でご覧ください。
監督はあまりドウェイン・ジョンソンが「プロレスラー」であることにはこだわりがなかったようですが、鎖を引きちぎるシーンは完全にカウント2.9で返すロック様の姿を思わせるなど、『ヘラクレス』にはプロレス要素もちらほら見られます(深読みしすぎというツッコミは受け付けない)。
監督の語るドウェイン・ジョンソンがいかにヘラクレスに適役だったかについては、以下のインタビュー動画もご覧ください。
映画『ヘラクレス』は10月24日(金)、TOHOシネマズ日劇他全国ロードショー。
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
(c)2014 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
(スタナー松井)
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