どれもおそらくオリジナルは、旧約聖書『創世記』第4章に登場する兄弟カインとアベルからなのでしょうが、人類初の殺人を犯したとされる兄カインのインパクトが強いせいか、何かにつけてカイン、またはケインと名の付くキャラクターが多い欧米の映画やテレビ番組。
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英語ですと頭文字が「C」からだったり「K」からだったりと、一応バリエーションはアレコレありますが、それでもやっぱりカインかケインなんです。
そんなワケで今回は、「io9」がピックアップした「カイン/ケインの名が付くキャラクター14選」をご覧いただきたいと思います。
ヒーローもヴィランも、キャラ濃過ぎですヨ!
『ソロモン・ケーン』
『コナン・ザ・グレート』の元にもなった、『英雄コナン』の作者ロバート・E・ハワード氏による冒険活劇シリーズ『ソロモン・ケーン』。16世紀の清教徒で、レイピアと二丁拳銃を操るこのソロモンというキャラクターは、なんと1928年に生み出されたのです。
厳格な信仰心を持ったピューリタンでありながらも、神の名のもとに殺されたことがあるので、ダーク・ヒーローとしてもほぼ元祖といえるカイン系キャラです。ポップ・カルチャーにおけるカインの流れを作ったのは、おそらくこのソロモンが一番最初ではないかと言われています。
ちなみにですが、上の動画は日本未公開でDVDのみの発売となった、2009年の映画トレイラーです。かなり面白そうですけど、公開されなかったのは残念ですね。
『ケイン号の叛乱』
元々は1951年、ハーマン・ウォーク氏によって書かれた小説が原作で、発売翌年にピューリッツァー賞を受賞したことで1954年に映画化もされました。
物語は第二次世界大戦中の1943年が舞台で、主役はハンフリー・ボガードさん他、アメリカ海軍の駆逐艦ケイン号の乗組員たちです。ケイン号が嵐に巻き込まれた時、性格のネジ曲がった自己チュー新艦長のアタマがオカシクなってしまったため、緊急手段として彼を解任して副官が指揮を執ることになります。
しかし無事に帰還したというのに、そのせいで軍法会議にかけられてしまう...というストーリー。やっぱりカイン/ケインというのは、あまり縁起の良くない名前だからでしょうかねぇ?
ジャガーノート:『X-MEN』
古代インドの破壊神ジャガンナートが名前の元で、「止めることの出来ない巨大な力」を意味するジャガーノート。ドーム型のヘルメットをかぶった怪力自慢の彼は、本名をケイン・マルコという犯罪のプロフェッショナルなのです。
『X-MEN』に登場したのは1965年、プロフェッサーXの兄として描かれました。ソーやハルクですら倒すことが出来ない、強烈なフォースフィールドを身にまとっているため不死身。唯一の弱点は、精神攻撃防御ヘルメットを脱いだ時に受けるプロフェッサーXからのテレパシー攻撃なのです。
ケイン提督:『バトルスター・ギャラクティカ』
1978年のテレビ・シリーズでは、ウィリアム・アダマ艦長が一番偉くなる前に、上官のケイン提督がいました。こちらのケイン提督は悪い人物像ではなく、宇宙空母ペガサスの指揮を執っていましたが、敵であるサイロンを撃退するべく出動したものの...特攻し過ぎたせいか行方不明に。
2004年にリメイクされたシリーズには、女性のヘレナ・ケイン提督が登場します。こちらも無茶が好きなタイプで、反抗的な部下に向かって銃撃したり、彼女に手を貸さない人種には徹底して放ったらかしにするような、ドライな性格なのだそうです。そして最期は、艦内に監禁していた人型サイロンに射殺されてしまいます。とちらも不幸なケインさんたちです。
クワイ・チャン・ケイン:『燃えよ! カンフー』
1972年から3年間放送された、カンフーものの西部劇がこちら。主人公は白人の父と中国人の母の間に生まれたクワイ・チャン・ケインで、少林寺の僧侶でした。こちらのケインは善人キャラなのですが、皇帝の甥に師匠を銃殺されたため、条件反射的にすぐそばにあった槍でその甥を殺してしまいます。人を殺めて罪を背負ってしまう点では、聖書のカインと同じですね。
追われる身となったクワイ・チャン・ケインは、父の故郷であるアメリカへ渡り、よくある流れ者のガンマンよろしく、行く先々で巻き込まれるトラブルを仏教の教えと武術をもって解決して行くことになります。
『燃えよ! カンフー』は、『キル・ビル』でビルを演じたデヴィッド・キャラダインさんの出世作として有名なテレビ・シリーズなのですが、実は原案はあの故ブルース・リー氏。ちなみに番組のゲストには子供時代のジョディ・フォスターさんや、若き日のハリソン・フォードさん、そしてカーク船長役でお馴染みのウィリアム・シャトナーさんや『裸の銃を持つ男』のレスリー・ニールセンさん、『特捜刑事マイアミ・バイス』のドン・ジョンソンさんなども出演されていたのだそうです。豪華!
副長ケイン:『エイリアン』
エイリアンのエッグチェンバーに近づいたためにフェイスハガーに顔面飛び付かれ、食事中に苦しみながらチェストバスターを輩出してしまったノストロモ号副長のケイン。
このケインは、これと言って宗教がかっている訳でもなく、かと言って他人を殺してもいない、単なる宇宙生命体による被害者で、たまたまその名前がケインさんだっただけの話です。
とは言え、SFホラー映画はこのシーン無くしては語れませんので、ある意味エポック・メイキングな役割りを果たした重要なケインでもあるのです。
カイン・ザ・ウォーリアー:『ザ・ウォーリアー・アンド・ザ・ソーサレス』
『燃えよ! カンフー』でもカインを演じられたデヴィッド・キャラダインさんですが、1984年にもまた別の作品でカインを演じられているんです。それがこの、日本映画『用心棒』のSFファンタジーとしてリメイクされた『ザ・ウォーリアー・アンド・ザ・ソーサレス』。
銀河の遥か彼方の星ウーラ。2つの太陽をもつこの星では、ゼグとバル・カズという2大勢力のボスたちによる抗争が絶えず勃発していました。そこの登場した剣術の達人カインは、より多い報酬を出したほうに雇われる...という提案を出します。とまぁストーリーは黒澤明監督の『用心棒』まんまなのですが、剣と魔法とオッパイ姉ちゃんたちがたくさん出てくるのが、この映画の良い所なのです。
ケイン:『ロボコップ2』
ヌークと呼ばれる麻薬を密売する組織のボスであるケイン。デトロイトに住む貧しい人々にヌークを売りさばく、街一番のワルがこの人物なのです。
初代ロボコップであるマーフィーにより、一度は死にかけたケインだったのですが...「麻薬で釣れば安上がりだし、犯罪者の持つ強い生存欲求をもってすれば、脳ミソをロボットに移植してもこれまでの試作機より失敗はしなかろう」という安直な理由のもと、ケインの頭脳はロボコップ2号機に移植され、やっぱり破壊の限りを尽くす殺戮マシーンになったのでした。
『ロボコップ2』でも色々と罪深いのは、やはりケインという名前が付けられたからなのでしょうかね。
カイン・ハイウインド:『ファイナルファンタジーIV』
こちらは1991年にリリースされた、テレビゲームに登場したカインです。バロン王国竜騎士団隊長である彼は、主人公セシルの友人で、その彼女でもありカインの幼馴染みでもあるローザに恋心を抱く、三角関係で悩む21歳。そしてその嫉妬心につけこまれ、黒騎士ゴルベーザから精神支配を受けたため敵として出てきます。
最後の最後では、そんな自分を鍛え直すべく試練の山へと向かうとあって、他のカイン/ケインよりも救いがあるカインです。
ケイン:『ハイランダー3/超戦士大決戦』
16世紀のこと、遥々ニッポンまでハイランダーのコナーと師匠の魔術師ナカノを倒しにやってきた魔術師ケイン。ナカノは首を斬って仕留めましたが、コナーに逃げられたところでナカノの魔術により対決の場となった地下洞窟が崩落させられ、その後1994年までずっと埋められっぱなしでいました。
埋まってしまったのは、ニリという霊山でしたが、日本の大企業がその近所に工場を建てたことによりケインは復活。ニューヨークにいたコナーを求めて戦い、一度はコナーの剣を砕くのですが...新たな剣によって、ケインは敗れるのです。
ここでもやはり、悪役の名前がケインとして描かれていますね。甲冑にチクビが生えているだけでなく、輪っかのピアスが通されたデザインが印象的です。
ケイン:『スパイダーマン』
主人公ピーターが通っていた、エンパイア・ステート大学の生物学教授だったマイルズ・ウォレンがジャッカルとなり、ピーターのDNAをもとに作り出したクローンがこのケインです。
パワーはスパイダーマンを凌ぐだけでなく、予知能力すら持っている強敵。ケインが殺した相手の身体には自分が持つ顔の傷と同じ「ケインの印」が残されます。ピーターのクローンであるものの、そのクローン生成の過程で失敗したためパワーもいびつで、性格もまた自分がニセモノだといびつに思うようにりました。
一時期はピーターがベン・ライリーという人物のクローンだった...という設定があったので、ケインは打倒ベンを目論みますが、最終的に真実を聞かされ、これまでの悪事を悔いて自首。その後脱獄して一旦死んでしまいますが、ジャッカルによってその身体を掘り起こされ、復活&半人半蜘蛛化し「タランチュラ」と名付けられます。
スパイダーマンとの戦いの中で、アンチヴェノムの抗体のプールに落ちたタランチュラは、すっかりその毒が消え去り、ピーターから譲り受けたスーツを着て2代目の「スカーレット・スパイダー」として第3の人生を過ごすのです。
単なるヴィランではなく、紆余曲折の末にスピン・オフ作品の主人公に登り詰めたケイン。一度はバケモノになってしまいましたが、結果オーライですね。
ジェリコ・ケイン:『エンド・オブ・デイズ』
こちらのケインは、シュワちゃん扮する主人公です。1999年の大晦日にサタンと交わり、その子供を宿す運命を持つクリスティーンを護るべく、ケインはバチカンが送り込んだ刺客からも、サタンが乗り移った銀行家からも肉体アクションを駆使して戦うのです。
聖書と関係したストーリーなので、人類初の殺人を犯したケインの名を使うのは理にかなっているかもしれないこの一作。ですが信仰心がなかったはずのジェリコが、最後は神にすがり強大な力を持つサタンを倒す件はどうなんでしょう...いかにもハリウッド的かもしれませんね。
ケイン:『マトリックス・リローデッド』
こちらのケインは全くもって目立たないキャラなので、皆さんそんなキャラが居たことすらご存知ないかと思います。
メロビンジアン一味の手下で、ヴァンパイアのプログラムを持つケイン。上の動画の中でパーセフォニーに殺されなかったほうが彼で、メロビンジアンの元へ仲間が撃ち殺されたことを報告しに行くよう、脅されるのです。
この映画では、色々と凝った名前が登場するので、ケインとセットでちゃんとアベル(こちらはウェアウルフ)というキャラも存在します。上の動画でパーセフォニーに銀の弾丸でオデコを撃ち抜かれ、死んでしまうのがアベルなのですが。
ついでに、もうひとつケインの登場シーンをどうぞ。向かって左から3番目に立ってマシンガンを撃ちまくっているのが、我らのケインですね。そして続く格闘戦では、蹴っ飛ばされた勢いで石膏像に突っ込み、そこであえなく出番が終了となりました。
可哀想ですが、ケイン/カイン史上もっともザコいキャラなのかもしれません。
マーカス・ケイン:『ドゥームズデイ』
2008年のイギリス映画で、せっかく『マッドマックス』と『バイオハザード』を掛け合わせたのに、結局やらかしちゃった感じの『ドゥームズデイ』。
ストーリーは、ロンドンで大発生した殺人ウィルスの抗体を求め、25年前に殺人ウィルスのせいで封鎖されたスコットランドへ、女優ローナ・ミトラさん扮するエデン・シンクレアと調査隊が乗り込む話です。壁に囲まれ、誰も寄せ付けないスコットランドには、暴徒と化した生き残りの人間たちが暮らしているのですが、果たして彼らから目的の抗体はゲットできるのでしょうか?
そしてこの映画に登場するケイン博士は、『時計じかけのオレンジ』でアレックスを演じた、マルコム・マクダウェルさんが演じています。キャラ設定としましては、あたかも『リア王』か『地獄の黙示録』カーツかのように、自分が住む城の中で独裁的な王様のように振る舞う、しかも根性の悪い役柄とあって、立派にカイン/ケインの伝統を守っています。
ちなみに映画撮影前のキャスティングの段階では、名優ショーン・コネリーさんに白羽の矢が立ったそうなのですが、俳優業を引退した後だったので実現しませんでした。
という事で以上、「悪者やワケ有りキャラと言えばこれ、カイン/ケインの名が付くキャラクター14選」はいかがでしたでしょうか? こうやってズラズラっと出てきて初めて、この名前がポピュラーだと知った方々は多いんじゃないかと思います。
これら上記でご紹介しました映画やドラマは、まだ知名度が高いほうですのですが、マイナー作品にはもっともっと山のようにカイン/ケインがいるでしょうね。
他にも「io9」のコメント欄では、三代目バットガールがカサンドラ・ケインだったり、DCコミックの『ニュー・アース』に登場するバットウーマンがキャスリーン・ケインといった女性キャラもいると投稿が上がっています。さらに現実世界(?)では覆面プロレスラーのケインがジ・アンダーテイカーの異父弟という存在で居ました。
そんなこんなで、探してみると結構いるみたいですね。読者の皆さんは、他のカイン/ケインはご存知でしょうか?
14 Characters Who Prove There Are Way Too Many Cains, Kanes, Etc.[io9]
(岡本玄介)
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