マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が、ドクター・オクトパスを彷彿とさせる規格外のロボットアームを開発しています。Supernumerary Robotic Limbs(SRLs)と呼ばれるロボットアームは、これまでにも開発されてきたような失われた手足を補う義肢とは全く異なる、新たな機械の腕を増設するという概念によるもの。
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まさにSF到来を思わせる外腕型ロボットアームの詳細を、ご確認ください。
一般的に義肢として思い浮かぶのは、事故などで失われた手足を外見的に、あるいは実用的に使用可能な人工物へと取り替えることです。要するに補うものとしての義肢が一般的なわけですが、SRLsはまったく異なるコンセプトから一対の新しい腕として開発されています。
研究を行っているのは、MITのダーベロフ研究室。香港で行われたロボティクスとオートメーションに関するIEEE国際会議で公開されたもので、動画に収録されているのはプロトタイプのSRLsです。
では、ダーベロフ研究室による、次の動画をご覧ください。
肩に取り付けられたロボットアームが、装用者の腕の動きに連動し、次の行動を予測しながら天井のプレートを保持しています。
SRLsの重量は約4.5キロ。各アームは交換も可能で、カスタマイズ可能なエンドエフェクタと5ヶ所の間接をもっています。しかし、このSRLsを装着することでユーザは本来人体には存在しない、新たな腕をコントロールするという課題を与えられることになります。
この難しいポジションを、SRLsの研究者はユーザの手首に装着された2つの慣性予測装置(Inertial Measurement Units:IMUs)をモニターすることで克服しました。
例えば、ユーザが頭よりも高く腕を持ち上げた場合は「何かを取ろうとしている」あるいは「何かを持ち上げようとしている」などの行動が予測されます(日常的にはストレッチをしているだけかもしれませんが、想定しているのは装用中の作業です)。
こうしたデータを予測モデルとして構築することで、SRLsは自らユーザの次の動作を予測し、その作業を補助する「拡張された腕」として機能するわけです。
確かに、本来の人間には備わっていない器官を脳波などで動かすのは、至難の業ですよね。ましてや一極集中ではなく、作業中の能動的な動作となればなおさらです。しかしSRLsの場合、ロボットアームがユーザの動きを自動的にモニタリングしてくれるので、そうしたストレスは発生しません。
また、ダーベロフ研究室のハリー・アサダ博士は肩に装着するタイプではなく、腰に装着するタイプのSRLsを研究しています。このタイプの場合、SRLsはユーザの作業を補うと同時に体を保持するなどの役目を補うことができます。
ではなぜ、通常の義肢や外骨格ではなく、人体にアームを追加する研究をはじめたのでしょうか?
研究者は、それが装用者の既存の肉体を逸脱しないことの制約を、理由の1つに挙げています。つまり通常の肉体機能を補完したり増大するのではなく、さらにその次の、最も有利な手足の活用や方向性を探るところから研究が始められたらしいのです。また、SRLsで完全に独立して電力が供給される手足を持つことによって、より多くのオプションを想定することも可能となります
ある意味、人体を再構築するところにまで踏み込んでしまいそうな研究ですが、確かにこれまでの義肢や外骨格では、その可能性のすべてを取り入れているわけではないといえそうです。
近未来では、人体も第三第四の手足を持つ存在へと進化していくのでしょうか? 現実的な意味では、こういう増設型のロボットアームって宇宙空間の作業などでは強みを発揮しそうな気がします。
でもタコ博士のようにロボットアームが暴走することのないよう、安全面もしっかり研究してほしいところですね。
Here's That Extra Pair of Robot Arms You've Always Wanted[IEEE Spectrum]
(キネコ)
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