身長50メートルに始まり、インフレーションの止まらないゴジラの巨大化を、海外サイト「Deep Sea News」が科学的に分析していました。
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それによると、ゴジラの巨大化には生物学的に一定の説明がつくらしいのです。
映画的アプローチとは異なる空想上の生物と生物学の邂逅は、どのような結果を導き出したのでしょうか? 詳細を以下からご確認ください。
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■コープの法則による説明
古生物学者エドワード・ドリンカー・コープが提唱した定向進化説「コープの法則」によると、同一系統の生物の進化においては、時代の推移とともに、より巨大なサイズの種が出現する傾向があるとされています。
コープの法則の一例を挙げると、哺乳類であるクジラは2.5メートルの大きさから30メートルの大きさへと進化しました。しかしクジラがこれほど巨大化するためには、5500万年という長大な時間を必要としています。
一方、1954年に初めて登場した時のゴジラの身長は50メートル。わかりやすくするために、最新のゴジラの身長を150メートルと仮定して、1931年に完成したニューヨークのランドマーク、エンパイア・ステート・ビルディングとゴジラの身長を比較してみます。
エンパイア・ステート・ビルの屋上高が381メートルですから、ゴジラの身長は60年という短期間のあいだに、エンパイア・ステート・ビルの13パーセントから40パーセントの高さへと巨大化を遂げていることがわかります。
この結果は、コープの法則で説明するには極めて性急な進化であるといわざるをえません。
もちろん、哺乳類のような1つのグループでも一方では巨大化し、また一方ではげっ歯類のようにほとんど変化を示さないグループ、あるいはウマ科のように大型化と小型化の両方の特徴を示すグループなどが存在しますから、この法則がゴジラにそのまま適応されるとは言い切れません。
画像:スタンフォード大学
■ドクターMの計算
海外サイト「Wired」では、独自の計算式に基づいて2050年のゴジラは170メートルにまで巨大化しているという結果を算出しているのですが、「Deep Sea News」の記事を書いたDr. M氏は、その結論に懐疑的です。
事実、身長50メートルのゴジラは1954年の『ゴジラ』から1975年の『メカゴジラの逆襲』まで共通して登場しているのですが、その後『ゴジラ(1984)』で80メートルへと巨大化して襲来したことをきっかけに、1991年の『ゴジラ対キングギドラ』では100メートルに再度巨大化。
ところが、1999年の『ゴジラ2000 ミレニアム』に始まるミレニアムシリーズでは、再び55メートルという初期ゴジラに近い身長へとダウンサイジングされています(『ゴジラ FINAL WARS』で再び100メートルに巨大化するのですが)。
そこで計算をやりなおした、Dr.Mさん。その結果を示すチャートでは、色分けされた●印が各時代のゴジラのサイズの推移を示し、*印が今後のゴジラの、想定される巨大化の値を示しています。
彼が導き出した関係式がこちらです。
高さ 10 = -13.94 + 0.008 年
この式によると、2050年のゴジラの身長は170メートルではなく、288.4メートルだと考えられるそうです。
しかし、このチャートの中で、ひとつ寂しくボッチっているのが、紫の●印。これは時代の推移と巨大化から取り残された、ミレニアムシリーズのゴジラを示しています。時代の変化に伴う推計的なゴジラの巨大化を、1999年に唐突に小型化して出現した「ミレニアムシリーズ」のゴジラが、果敢に阻んでいるという結果になっています(寂しく阻んでいるような感じもしますが......)。
Dr.Mさんは「ゴジラの製作者がなぜ紫のゴジラを配置させたのかについてはわからない」としつつも、もしミレニアムシリーズのゴジラを分析の外に置くと仮定するならば、ゴジラの巨大化を示す式を得ることができると述べています。
■性淘汰による巨大化
ではなぜゴジラには、生物としては急激ともいえる巨大化が必要なのでしょうか?
Dr.Mさんはもっとも単純な根拠として、ゴジラにとって、より巨大な個体が選択的に生き残っていくことが、種の存続にとって重要なのではないかと考えています。
そこで主要な中心都市の摩天楼が巨大化していくことに着目し、以下のチャートを作成しました。
グラフが示すように、超高層ビル群の高さは前世紀にわたって劇的に変化しており、あたかもゴジラの巨大化が、ビルの高層化と競合するかのように進んでいる印象を抱かせます。
このことから、ゴジラが常に高層化したビル(タワー)群を破壊せしめようとする行動は、性淘汰の一環として行われているのではないかとDr.Mさんは考えました。
性淘汰には様々のタイプがあるのですが、そのうちの1つ「指標説」について、ウィキペディアではこう説明しています。
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オスが持つある形質がそのオスの質を表す指標になっており、メスがその形質を選ぶのはそれが子孫にとって結果的に適応的だからであるという説。選好のきっかけが何でも構わない。メスの好みが千差万別であっても、たまたま指標となる形質に反応したメスが適応的だからである。
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ゴジラがより巨大な標的=高層ビルを次々と破壊して回るのは、自らの大きさを誇示すると同時に、より強い子孫を残すため、性淘汰を生き残るためのアピールではないかと考えられるのです。
拡大を続けるゴジラの破壊行為は、ヒトのテリトリーを阻むこと(ゴジラにとっては、人間はアリのような存在でしょう)や捕食のための行動では説明できず、むしろ「人が生み出す構造物が巨大化すること」によって、その対象を破壊することが生物学的な優位性を示す誇示行為ではないかとする、一つの仮説が成立しているわけです。
ゴジラはやっぱり、人が生み出す文明に対するアンチテーゼだったのですね。
■ゴジラの尿生産
面白いことに、Dr.Mさんはゴジラが産生するオシッコの量まで計算しています。
それによると、ゴジラは1日に1292万1400ガロンのオシッコをするのだそうで、リットルに換算すれば約4891万リットル。バレル換算で約30万7700バレルとなりますから、スエズマックス級の石油タンカーのおよそ4分の1の量の尿を排出する計算になるそうです。
ちなみにDr.Mさんの本名はクレイグ・マクレイン博士といって、National Evolutionary Synthesis Center:NESCentのアシスタント・ディレクターをしている、れっきとした研究者の方。
こういう人が大真面目にゴジラの巨大化や排出される尿の量を考えてくれるというのは、軍事専門家が戦争でゴジラを有効活用する方法などを彷彿とさせて、なんだかいろんな意味で面白いです。
The Ever Increasing Size of Godzilla: Implications for Sexual Selection and Urine Production [Deep Sea News]
(キネコ)
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