人気ゲームの映画化というのは、ヒット映画のゲーム化と同じくらい避けられない出来事で、多くの場合、失敗に終わります。 先日、コナミが『メタルギアソリッド』を映画化することを発表しました。まだまだ製作初期段階のようなので、善し悪しを語るには早過ぎます。しかし、こうもゲーム原作の映画が失敗続きなので、ハリウッド映画化の話を聞く度に私たちが構えてしまうのは事実です。 では、ゲームの映画化が何故失敗に陥り易いのか、そして『メタルギアソリッド』はどうすれば失敗を回避できるのかを以下で分析してみましょう。
 
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ゲームの映画化は、果てしない量の課題をクリアすることから始まります。まして『メタルギアソリッド』シリーズの場合、作品の内容と伝説を熟知しなくてはならず苦労は一入。加え、『MGS4』では同シリーズの設定が細かく記された「METAL GEAR SOLID4 DATABASE」がプレイステーションストアでダウンロード配信されましたが、キャラクターの関係性や歴史に矛盾が生じており、すんなりと理解できるものではありませんでした。加え、同シリーズは解説的なカットシーンの多さでも知られており、それだけでも映画数本分に相当しそうな物量です。 ゲームを映画化するにおける最大の問題は、クリエーターが文字通りに解釈しがちだという点でしょう。ここで、ハリウッドがゲームを映画化する際に最も懸念されるべき3つの障害を紹介したいと思います。 ---------------------------------------
尺の問題 8~10時間という時間はゲームにとっては短いと考えられますが、平均的な映画に当てはめてみると4~5倍の長さがあります。ストーリーが愛されるゲームは、何時間もかけてその内容をプレイヤーに伝えようとしています。最短でクリアできるプレイヤーだとしても、『マスエフェクト』シリーズをクリアする為に6時間も要するようです。その中で語られた内容を、2時間のフィルムに凝縮して視聴者に伝えることが出来るのでしょうか?
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感情移入の問題 プレイヤーがキャラクターと感情的に噛み合うのは、プレイヤーが想定するゲームの世界観とストーリーにキャラクターを代行させることが出来るのも大きな要因でしょう。プレイヤーは、主人公の代理として様々な選択をすることで、その選択の集大成がキャラクターであると考えるようになるのです。つまり、私が『The Walking Dead』をプレイする時、リーはクレメンティンを気にかける良い人であり、秘密の過去は彼の未来に無関係ですが、他の人がプレイした場合、リーは唯我独尊タイプの嫌なヤツかもしれない、ということになります。これが映画となれば、キャラクターは脚本家と監督が望んだ行動しかせず、原作のゲームを愛している人達から受け入れられないことがあります。
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目的の問題 幾つかのゲームは、そのストーリーを伝える為に作られます。また、裏切りや権力、強欲などの広域テーマのゲームも存在します。しかし、多くのゲームがそのメカニクスに重きを置いています。映画ではジャンプや銃撃戦、マップ探索、レベルアップに多くの時間を作必要性はありませんが、これらのプレイヤーとキャラクターの噛み合わせプロセスを無くしては、多くのゲームがアイデンティティを失ってしまうことは想像に難くなく、単なる退屈な物語が叉1つ生み出されるだけの結果になってしまいます。
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とは言え、全ての希望を捨ててしまうのは早計です。ゲームにも言えることですが、原作に取って代わる内容にするのではなく、ゲームの世界観を新しく明らかな方法で冒険するというように、正しく補えば成功出来るのです。 大凡100万時間に渡るFOXHOUNDのストーリーと、その前後の出来事を、整合性の取れた1本の映画にしようとしても到底無理な話であり、例え3部作にしたとしても可能だとは思えません。しかし、『メタルギアソリッド』シリーズは、自由思想から遺伝子工学から核軍備制限から人間の魂の強さに至るまで触れている作品であり、その中には裏切りや秘密、ステルス、嘘、愛、忠誠、任務、名誉、そして嫉妬等の広域テーマが散りばめられています。これらに的を絞ったのなら実現出来るでしょう。 約2時間しかない映画では、スネークの奇妙な家系のことを語り尽くせませんが、戦争や真実を追い求める敵のストーリーなら語れます。リキッド・スネークの右腕の運命を詳しく伝えることは出来ずとも、運命に翻弄されるスネーク兄弟の物語ならこれ以上無い程良い内容になりそうです。 本の映画化と同じように、ゲームの映画化は、原作に捕われ過ぎること無く、純粋に良い映画を作ろうと努力することで生まれます。『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』が映画として成功した一方で、『ハリー・ポッターと賢者の石』がそこまでの成功を得られなかったのは、前者は映画言語で物語を伝えようとしたからで、後者は小説を忠実に再現しようとしたあまり、視聴者が既に読んで知っている内容を映像化してしまったからに他なりません。 映画版『メタルギアソリッド』でも、製作陣は同シリーズが映画としてどうすれば成功するのかに集中し、新しく、ストーリーがしっかりと描かれているものを作成するべきです。シャドーモセス島の話やゲームのミッションを繰り返すのでは意味がありません。しかし、ゲームで語られていることだけで終わらせること無く、より深く、複雑なストーリーを映画でしか伝えることの出来ない内容にするのなら話は変わって来ます。ファンが多いゲームの映画化はハリウッドにとっても大きなチャレンジです。私たちの期待を裏切らず、製作側の自己満足にならないことを切に祈りたいですね。
[via kotaku] (中川真知子)
RSS情報:http://www.kotaku.jp/2012/09/i_hope_a_metal_gear_solid_movie.html