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吉良上野介に込めた悪人演技論とは? 映画『47RONIN』浅野忠信さんにインタビュー

2013/12/04 21:30 投稿

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浅野忠信


忠臣蔵』をモチーフにしたファンタジー・アクション映画『47RONIN』。先日は主演のキアヌ・リーブスさんにインタビューさせていただきましたが、今回は敵役の「吉良上野介」を演じた浅野忠信さんにインタビューして参りました。
 


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――今作のストーリーやテーマの第一印象を教えて下さい。

浅野忠信(以下、浅野):もしかしたら、僕はキャストの中で一番最初にこの映画の話を聞いた人間かもしれないんですよね。『マイティ・ソー』でアメリカに行った時に、ユニバーサル・ピクチャーズのプロデューサーに会って、忠臣蔵の映画をやろうと思ってると言われたんです。

それを聞いて、凄いな、アメリカで日本の歴史ものやるんだと。それで、機会があったら君も参加してほしいと言われていて、面接をしてもらったんです。その後に出演した『バトルシップ』と『47RONIN』は同じユニバーサルの作品で、プロデューサーも同じ人だったので、『バトルシップ』の撮影の間も常に話を聞いてましたし、撮影中プロデューサーたちはずっと僕のことを見ていたので、オーディション無しで『47RONIN』の出演が決まりました。その後、『バトルシップ』の再撮影の時にカール・リンシュ監督に会って、話を聞いたという流れです。

なので、最初に台本を見た時もそんなに驚きはなかったですね。アメリカの人がやるんだから、とんでもない事が起こるんだろうとは思っていました。逆に、日本人がウエスタンを撮ったら間違いだらけになるでしょうし。ですから、脚本を見てモンスターが出てきたり、(菊地)凛子がやった妖女が出てきたりしても、あまり気にせず、プラスに考えて自分の役に集中しましたね。


――カール・リンシュ監督には早い段階で会われていたようですが、撮影に参加して監督にどのような印象を持ちましたか?

浅野:監督にとっては今作が初めての長編映画なんですが、(この映画を撮るために)自分の家を引き払って来たとまで言っていましたし、凄い意欲を感じました。

彼の手がけたCMを見ればわかるように、元々ビジュアル面では素晴らしい才能を持っている人です。でも、この映画はビジュアル面だけでは許されないサムライの心情だったりとか、人々の心の移り変わりも描かれているので、何度も何度もリハーサルして、僕らから出る感情、情熱とかをどうやったら切り取れるのか? というのをすごく考えていたと思います。


――今回の撮影で大変だったところはなんですか?

浅野:僕はすごく吉良に集中してたので、大変なことはなかったですね。もちろん英語も全部覚えなきゃいけないし、馬も乗らなきゃいけないし、アクションもありましたから、大変は大変だったんですが、現場では自然な振る舞いとして出て欲しかったので、自分の中に全て落とし込もうとしました


――ちなみに今回の映画は、一度日本語で撮ってから英語で撮り直したと聞いたのですが、いかがでしたか?

浅野:例えば、アメリカの俳優さんが日本語で芝居をするとしたら、やっぱり気になっちゃうと思うんですよ。いくら上手くても恐らく違和感はあるわけで、だから英語が完璧ではない日本人の僕らが英語でやっても、うまく気持ちが入らないんですよね。

セリフを覚えたはいいけど、普段言い慣れてないから気持ちが入っていかない。それを日本語でやってみるといきなり顔つきも変わるし、気持ちも入るんですよね。なので、一回日本語でやって、自分でもそのセリフを言う時の気持ちを理解して、それを英語のセリフに入れて演技をしました。


――今回の映画のアクションシーンをやる上で特別なトレーニングを受けたりしましたか?

浅野:チャンバラに関しては、日本で何本か時代劇に出させていただいた事もあったので、それを生かしました。でも、一番ありがたかったのは、現場に真田(広之)さんがいてくれたことです。真田さんを見てれば真似できることはたくさんありますからね。もちろん、日本から来たアクション指導の方もいたので、学ぶことはたくさんありましたが、やっぱり真田さんがいるのは心強かったです。真田さんは傷だらけになりながらやってましたから。


――真田さんから何か直接アドバイスを受けたりはしましたか?

浅野:最後の対決シーンでは、「こうやったらカメラがここにあるからこう映るよ」みたいな感じで、いろんなことを教えてもらいました。実は劇場で公開される尺より、もっといっぱい撮ってるんですよ。監督は入れたがってたので、DVDなどの特典で見られるようになるといいなと思います。


――吉良を演じる上で、心がけたことはなんですか?

浅野:僕は90年代にヘンテコな役を沢山演じてきたんですけど、さらに幅を広げたいなと思ってたんですね。30代でいろんなチャレンジもさせていただいたんですけど、やっぱり自分はクセのある人間の役が向いてるんじゃないか、と感じていました。

それで悪役をやりたいなと思っていたら、この役をいただけたので、今まで自分が受け取ってきたものをここにぶつけたいし、更に奥行きを持たせるにはどうしたらいいんだって考えた時に、悪人は何も悪くなろうとして生きてないな、むしろ、良い人間だと思われたいと考えてるんじゃないか? と考えたんですよね。

吉良は自分にトラウマがあったり、欠けている部分、気づかないことがあって、どうしても上手く生きられないってこともあるんじゃないかな、って思った時に、演じる上で自由になりました。だから、吉良は良い人間になりたいと考えてるんだと思って演じましたね。


――演じるにあたって、過去の『忠臣蔵』作品は見直しましたか?

浅野:全く見なかったですね。全く別の世界観なので、そのアイデアすらなかったです。とにかく自分のイメージする吉良を崩したくありませんでした。僕の中でどんどん出来上がっていた吉良が全てだと思っていたので。


――『マイティ・ソー』も原作のある作品で、今作も原作ありの作品ですが、原作のあるキャラクターを演じるにあたって、研究はされますか?

浅野:今回の吉良もそうですが、なるべく自分の好きにやりたいですね。原作があって、それが自分にすごく似てたらいいんですけど、似てないじゃん! 僕は赤塚不二夫じゃないじゃん! みたいになった時に、でも先生は大好きだし......やるしか無いわけです。自分の中から引っ張りだしていかないとなかなか演じきれません。なので、なるべく自由にやりたいですね。


――『忠臣蔵』は有名な伝説、逸話なわけですが、他に出てみたいそういった話はありますか?

浅野:僕の浅野姓は母方の名字で、本姓は佐藤なんですが、同じ名前の佐藤忠信という源義経の側近がいるんですよ。歌舞伎の『義経千本桜』に出てくる狐忠信は彼のことで、やっぱり彼の役はやってみたいですね。

あと、今回『忠臣蔵』をやって思ったのは、皆考えることかもしれませんが、完全に浅野側が悪に描かれるバージョンをやってみたいです。それをヤクザに置き換えたりしてもいいかもしれません。『忠臣蔵』はどう考えても吉良を悪く描きすぎだし、逆から見ることも出来るんじゃないか? と。


――時代劇自体はお好きですか? 好きな時代劇の映画を一本挙げるとしたらなんですか?

浅野:好きです。やっぱり他に日本が世界に向けてアピールできるものはないとも思っているので、作り続けていって欲しいです。好きな作品はやっぱり『座頭市』。勝新太郎さんの『座頭市』には全てが詰まってると思ってます。やっぱりああいう作品を世界に向けてやるべきではないかと。


――今作のように時代劇と何かが合わさったような映画がまた作られるとしたら、出演したいですか?

浅野:出たいですし、僕が主人公の作品をやってほしいですね。結構アイデアは持ってるので。


――時代劇の要素を持つSF/ファンタジー映画といえば、『スターウォーズ』なんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか? 現在、新作のオーディション中という話もあります。

浅野:僕に声をかけてくれたら二つ返事で出ますよ。吉良を見て、こいつだ! と思ってくれるかもしれませんし(笑)。そういった意味でも『47RONIN』はいろんな人に見てもらいたいです。


――今後はどんな役を演じてみたいですか?

浅野:自分も40歳になりましたので、今までだったら理解ができなかった矛盾が、なんとなく理解できるようになってきたんです。そういうのもあってか、人間が微妙な問題に向き合う時の瞬間を描くような作品には出たいと思ってます。

どんな作品の中でも、ちょっとした芝居の中で顔色一つだったり、ちょっとした何かで感じて貰えるようにしたいんです。日本でもアメリカでも、自分のそういう部分をアピールできるようにしたいなと思っています。


――今まで演じてきて一番好きな役は誰ですか?

浅野:いくつかあるんですけど、『風花』で演じたような普通の人の役は、さっき言った「微妙な何か」を出せてたと思うんです。監督の自由な撮影スタイルで撮ってもらえたので、そういったものが出しやすかったのかもしれません。あとは、ドラマの『私立探偵濱マイク』でやった殺し屋も好きですね。あとは『フォーカス』の主人公とかもそうでした。

どの役も自分のやりたいことができたり、自分が思う自分の良さが出せるキャラクターだったと思います。そういういろんな側面を全部合わせて生かせるような現場があったら最高ですね。


――今まで俳優をやってきて一番大変だったことは何ですか?

浅野:肉体的なことで言えば、『劔岳 点の記』では「これって俳優の仕事に関係あるのかな...」って思うほど毎日山登りしましたね。

キャリアの面で言えば、30代は精神的に大変でした。90年代のような映画の作られ方はしてないですし、自分ももう若くなくて、求められるものもそれまでとは違ってきましたし、自分でも克服したい面がたくさんありましたから、それに向き合うのはなかなか簡単ではなかったですね。

でも、10年くらいやったら明確になるものがあって、20代で得たものとかも合わせて、いろんなビジョンが思い浮かんでるので、またオラオラとやっていきたいですね。


――逆に俳優を演ってて一番楽しいと思ったことは何ですか?

浅野:『風花』の時のように、自分の理想とする撮影スタイルでとってくれたり、映画に向かう姿勢が同じだったりとか、いいなと思える瞬間を過ごしてくれる人とやれた時は嬉しいですね。

「こういうことがやりたかった」と同感できること、「こういうことも出来るんだ」という驚き、撮影中にやってる側にそういう瞬間がないと、映画を見るお客さんも絶対喜ばないと思うんです。しらけて映画撮ってたら、見る人たちも面白く無いはずだと。そういう喜びを共有できるスタッフと出会えた時は最高ですね。


――ハリウッドと日本の映画の作り方は大きく異なると思うのですが、一番違いを感じるところはどこですか?

浅野:あんまり美しい話ではないかもしれないですが、やっぱりお金のかけ方が全然違います。それって全てに影響するんですよね。例えば、僕らの衣裳なども徹底的に準備できますし。

アメリカの映画は世界中の人に見られるもので、しかも使ったお金の分とんでもない額を回収しなきゃいけないわけで、もうみんなが必死です。エキストラの1人にしても文句を言わずに、チャンスを活かして次に行きたいって気持ちをもってやってますよね。結果を出すのが全てなんです。もちろんそれは僕にも要求されますし、いい緊張感があると思います。


――すでに複数のハリウッド映画に出演されていますが、慣れてきたという感覚はありますか?

浅野:慣れた自分もいるんですけど、やっぱり一番の問題は英語です。でも、いつかアメリカの映画に出たいというのは常にあったので、これで3作目になるんですけど、(アメリカの映画に出るのを)続けていきたいと思ってますね。


――浅野さんはすでに監督の経験もありますが、ハリウッドで監督をやってみたいという気持ちはありますか?

浅野:さっき言ったような、ファンタジーとサムライものが合わさったようなアイデアを一緒にやってくれる人がいたら、大々的にやりたいです。

今、僕らにこれだけチャンスがあるということは、アメリカでもアジア人はたくさん住んでいますし、世界も日本人を含めてアジア人に目を向けてるということだと思うんです。なので、もっとそういった和洋折衷な作品が必要になってくる気がします。

それを実現できるのはやっぱりハリウッドだし、これから我々がどんどん主役になってやれる映画はあると思うんで、一緒にアイデアを練ってくれる人がいたらいいですね。実際、もうそういう動きは始まってると思いますし。


――浅野さんには海外のファンもたくさんいますが、彼らの印象はいかがですか?

浅野:『マイティ・ソー』のファンの方々からよく手紙をもらいます。トレーディングカードが一緒に入ってて、「サインを書いて送り返してくれ」みたいなのが結構来るんですよ。あとは熱狂的な『殺し屋1』ファンがたくさんいてくれて嬉しいですね。


――今後、一緒に撮りたいなと思う監督はいますか?

浅野:海外の監督で自由な発想を持ってる人とやれたら嬉しいですね。そういった意味では、『風花』の相米慎二監督はかなり独特で、俳優を信じて自由な発想を持たせてくれました。そういったところに時間をかけてくれる人と仕事がしたいですね。


いままで様々なキャラクターを演じてきた浅野さんの演技に対する柔軟さを、改めて感じることができました。

今作でも、浅野さんの自由な役作りで生まれた新たな吉良上野介が、同じく自由な発想の今作とマッチして、100%悪じゃなくてどこか可哀想だけど、やっぱり憎らしい悪役としていい味を出しています。中でも、真田さんとのアクションシーンはまさに見どころ。もっと撮ったのなら、全部見たかった...。ソフト化の際は特典映像として入れてください!

映画『47RONIN』は、12月6日(金)より超拡大ロードショー。


『47RONIN』公式サイト

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