「色を聞く」アーティストのニール・ハービソンさんをご存知でしょうか? 彼は生まれつき色覚異常で、世界が白黒に見えています。しかし、「アイボーグ」というヘッドマウントデバイスを装着することで、色を周波数に変換させて聞いているのです。そんな彼が、政府公認にサイボーグになったと、io9が伝えています。
それでは以下から、Dezeenに掲載されたインタビュー記事の抜粋と詳細をご紹介します。
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政府公認のサイボーグになったというのは、「アイボーグ」を装着したままで写った証明写真を使ったイギリスのパスポートを発行してもらったということ。それが意味するのは、万が一、誰かがこの「アイボーグ」を強制的に外そうとした場合、その人はハービソンさんの顔を損傷する暴力行為を働いたとして、罪に問われることになるそうです。
次に、ニール・ハービソンさんの体の一部として認められた「アイボーグ」について触れます。彼が目にする景色は、全て白黒なのですが、それは、信号の色を識別出来ないというような安全性にも支障をきたしますし、何より、彼は美的感覚を失っていると感じていたそうです。
アーティストとして、美学が人々のムードや行動に大きく影響すると実感していた彼は、10年近く前に、他の人が見ている景色を独自の方法で知る補強器を装着することにしたとのこと。
結果として、彼は他の人には見ることの出来ない景色を得ることとなりました。「アイボーグ」は彼の周囲の色を音波に変換し、頭蓋骨の背面から振動を内耳に伝達します。つまり、ハービソンさんは、「色を聞いて感じる」ことが出来ます。
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個々の色は、特定の周波数を持っています。赤外線は最も低い音で、紫外線は最も高い音です。私は、それらを骨導振で聞くのです。基本的に、音は頭部の背面から内耳に行き、異なる周波数を聞いています。
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ハービソンさんは、自分を取り巻く環境の音を感じ始めたとき、自分の感覚が完全に統合されたと感じ、また、彼は色の「夢」も見るのだそうです。
特定の顔や建物は、素晴らしい音楽を奏で、そのコンビネーションに快感を覚えると話しています。そんな、人とは違う美的感覚を得たハービソンさんの次の目標は、デバイスの充電を自らの体が生むエネルギーで行えるようにすることだそうです。
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私は、後頭部にUSBのようなコネクターを付けて、コンセントにさして充電しています。充電には、3時間かかり、通常3~4日間使用可能です。しかし、将来的には電力ではなく、血液循環や脳のエネルギー等、私自身の体の運動エネルギーでチップを充電するようにしたいと考えています。チップを外部のエネルギーに依存することなく、充電したいのです。
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骨入力は、感覚を増強させる上での将来のトレンドになるかもしれません。io9のアナリー・ニューウィッツ記者も言うように、すでに人工内耳は同じようなインターフェイスを使っています。そして、ハービソンさんは、次にどのようなサイボーグが作られるのかに興味を持っているそうです。
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骨入力は他の感覚を邪魔すること無く純粋な感覚を与えてくれる為、多くのオプションを提供してくれると考えています。体の後ろにセンサーを付けるだけなので、とても単純な技術を簡単に得ることが出来ます。
これにより、貴方の後ろに何があるか? などを感じることが可能です。振動を伝える小型の赤外線センサーで、背後に誰かがいれば振動を送るといった使い方も出来るでしょう。他にも、コンパスを埋め込み、北を向けば振動するようにすれば、便利かもしれません。
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ハービソンさんは、彼と同じようにデバイスを装着する必要のあるサイボーグの権利を守る為に、Cyborg Foundationを設立し、活動しています。
より詳しい内容と写真は、Dezeenでどうぞ。
写真:Dan Wilton.
[via io9]
(中川真知子)
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