時代や空間が変わっても、人がいるところには事件がある―。そんな事件を解決し、社会、そして時には宇宙の治安を守ってくれるのが、SF作品に登場する警官・刑事たちです。
今回は「io9」に掲載された、拳銃だけでは取り締まれない暴走ロボットや宇宙海賊にも立ち向かう、SF史上最高の10人をご紹介します。
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1 .ロボコップ(映画『ロボコップ』シリーズ)
任務中に銃でメチャクチャに撃たれ、一度は死亡したところを、巨大企業オムニ社の手でサイボーグとして蘇らされたアレックス・マーフィー巡査。
「法の遵守」、「犯罪者の逮捕」、「弱者の保護」という3つの基本命令に従って機械的に行動しますが、だからといって信号無視の歩行者を撃ち殺して歩いたりはしません。そこはわずかに残るマーフィー巡査の良心か、脳に組み込まれたより複雑なプログラムのためでしょうか。
ロボコップは強盗や強姦といった凶悪犯罪の場面に素晴らしいタイミングで現れます。犯罪を感知するセンサーが備わっている可能性もありますが、物語の舞台は何と言ってもデトロイト。アメリカでも有名なくらい治安の悪い街なので、そのあたりをパトロールしているだけで凶悪犯罪に出くわしても不思議はないのかもしれません。
さてこの『ロボコップ』、2014年新春にリメイク版が公開されます。予告編では豪華な出演陣とより洗練されたビジュアル・エフェクト、オリジナルとは違いマーフィーの心を残したロボコップの葛藤などが見て取れます。今から楽しみですね。
2 & 3 .マシュー・サイクス & サム・フランシスコ(映画『エイリアン・ネイション』)
1988年のロサンゼルスにはニューカマーと呼ばれるエイリアンたちが移住し、人間社会に溶け込もうとしていました。人間の刑事、マシュー・サイクスはニューカマーの刑事であるサム・フランシスコとコンビを組み、ある殺人事件の捜査を開始します。
マシューは元々ニューカマー嫌いだったため、最初は衝突する2人ですが、次第に協力するようになり、ついにはニューカマーを奴隷にしようとしていた麻薬組織に共に立ち向かいます。バディ物の定番の展開と言ってしまえばそれまでですが、人間とエイリアンがここまで協力できたというのは凄いことです。
4 .後藤喜一(マンガ『機動警察パトレイバー』)
警視庁警備部特車二課第二小隊の隊長。いつも飄々として何事にも動じず、何を考えているのか、実際何かを考えているのかどうかもわかりません。しかし特車二課に配属されるまでは、公安部で「カミソリ後藤」の異名を取った切れ者なのです。
変わり者ばかりの第二小隊の隊員をうまく使いつつ、自分はさほど動かずに問題を解決する手腕は才能としか言いようがありません。しかもここぞという時には、上官や政府の役人ともきっちり渡り合います。
こういう上司はどこでも好かれるでしょうね。敵にしたくない、と言うよりは、ぜひ味方に欲しいタイプです。
5 .8マン(マンガ『8マン』)
ロボコップよりもずっと前に、死亡した刑事がアンドロイドとして蘇ったのが8マンです。日本の刑事、東八郎は凶悪犯に射殺され、谷方位博士の手によって優れた性能を持つアンドロイド刑事として蘇りました。
実はロボットとしての8マンはロボコップよりもずっと優れています。最高時速3000kmで走り、人間をはるかに超越した聴力や透視できる力を持ち、体や顔を変形してどんな姿にもなれるのです。
唯一の難点は体内の小型原子炉を動力とし、そのオーバーヒートを防ぐためにタバコ型の冷却材を使用しなければならないこと。原子力やタバコに対して風あたりの厳しい今の世の中では、仕様の変更が必要かもしれません。
6 .キムボール・キニスン(SF小説『レンズマン』)
レンズマンの「レンズ」とは、宇宙を守る銀河パトロール隊の一員として相応しい者だけが持つことを許される認識票。そのためレンズマンはキムボール・キニスン以外にもたくさんいますが、彼ほど宇宙の平和に貢献したレンズマンは他にいません。
彼は銀河間で悪事をはたらく宇宙海賊をほとんど1人で壊滅させ、第二銀河系を支配する敵・ボスコーンの制圧に尽力し、宇宙唯一の女性レンズマンと結婚して、儲けた5人の子ども(生まれつきレンズの資格を持つ)は宇宙全体を救ってしまいました。
アメコミの『グリーン・ランタン』はよく『レンズマン』と似ていると指摘されますが、レンズマンはいわゆるスーパーヒーローではなく、あくまでも銀河の治安を守る番人として描かれていて、そこがカッコイイのです。
7 .ジャック・カーター(海外ドラマ『ユーリカ~地図にない街~』)
常識は持ち合わせていなくても、ずば抜けた知識を持つ科学者ばかりが住む街、ユーリカ。この街の保安官を務めるのは決して楽な仕事ではありませんが、ジャック・カーターは何とかそれをこなしています。
彼の仕事は犯罪の捜査よりも、住民の科学者たちが引き起こす騒動を丸く収めること。ジャックは持ち前のひらめきと「単純な」脳みそのおかげで物事を深く考えすぎずに済み、それが仕事に役立っているのかもしれません。
しかし、彼が街の事件を解決する度に実は世界も救っていることを考えると、単純な脳みそも悪くない気がします。
8 .ジャッジ・ドレッド(英コミック『ジャッジ・ドレッド』)
「俺が法だ!」の一言でなんとなくキャラがわかってしまうジャッジ・ドレッド。
核戦争後に残った都市、メガシティ・ワンで組織された「ジャッジ」は、犯罪者の逮捕から裁判、判決、刑の執行まで、すべてを任された究極の法執行集団。なかでもジャッジ・ドレッドは、仲間からも恐れられるほどの凄腕ジャッジなのでした。
犯罪者は彼の独断で「死刑!」となるため、一歩間違うと彼自身が無法者のような気もしますが、ドレッドは自分に非があると認めた時はきちんと反省する公正さも持ち合わせています。実際に、それが理由で彼は2度も「ジャッジ」を辞めたことがあり、辞める寸前までいったことも1度ありました。
チーフ・ジャッジに昇進する機会を与えられたとき、ドレッドは現場で働くことを優先し、そのオファーを辞退しました。「事件は会議室で起きてるんじゃない!」と言ったとか言わないとか(※言ってません)。
9 & 10 .イライジャ・ベイリ & R・ダニール・オリヴォー(小説「ロボット」および「ファウンデーション」シリーズ)
SF界の巨匠アイザック・アシモフの小説に登場するイライジャ・ベイリとR・ダニール・オリヴォーは、SF界の元祖刑事コンビ。『鋼鉄都市』、『裸の太陽』、『夜明けのロボット』などで数々の殺人事件の捜査に当たりました。
ベイリは元々ロボット嫌いだったため、ロボットのオリヴォーと最初は衝突しますが、次第に協力するようになり...と、最初の展開は典型的なバディ物ですが、1950年代に書かれたベイリとオリヴォーの話は、後続のSF作品にむしろ影響を与えた側と言えるでしょう。
オリヴォーは単なる刑事にとどまらず、後にロボット三原則の補則となる「第零法則」の発案に至ったり、心理歴史学(アシモフ作品に登場する架空の学問)の誕生に貢献したりと、人類とロボットの歴史に多大な功績を残しました。
オリヴォーほどの存在になると、「SF作品に登場する刑事」として語るには大きすぎますかね...。まあ、だからこそSFなのですが。
[via io9]
(さんみやゆうな)
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