「3分間待ってやる!」
スペクタクル映画に大都市の破壊はつきもの。今まで見た映画をちょっと思い出しただけでも、あの街でバルス! この街でバルス! と、もうバルス祭り状態です。
でもちょっと待って。シータのおばあさんだって、滅びのまじないは「決して使うな」と言っていたはず。それをこんなにも乱発していいのでしょうか?
街が破壊される映画を見る私たちの目も慣れきって、作りの甘さが目につくこともしばしば。そこで今回は、映画にそんな破壊シーンを入れる前に、ぜひ確認してほしい9つのことを3分間以内に考えてみたいと思います。
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1. 破壊される都市はちゃんとストーリーに登場しているか?
たとえば主人公がその街に住んでいるとか、何か大切な思い入れがあるとか、見ている人が感情移入できる設定があるでしょうか? ストーリーに関係なく、誰もが知っている大都市でもないなら要注意。CGでそれらしく作られた、どこだかわからない都市が破壊されたところで、見ている人は「あー壊れてる壊れてる」ぐらいにしか思ってくれません。
2. シナリオ上、その都市がターゲットになる意味はあるのか?
ストーリーに関係があったとしても、攻撃する側がなぜその街を選ぶのかに説得力がないと興ざめです。たとえばその場所に、主人公側の重要な戦略拠点があるとか、敵が狙う何かが隠されているとか。宇宙人がやって来て、たまたま狙ったのが主人公の住む地方都市だった! では観客は納得してくれません。まあ、ツッコみたくなるくらい無理矢理だと、それも面白いんですけどね。
3. 一般市民が避難するシーンがあるか?
街の破壊シーンに欠かせないのが、逃げ惑う一般市民。映画『クローバーフィールド』の冒頭の緊迫感は圧巻でした。
エキストラを何百人も使わなくても、破壊シーンにリアリティを与えることはできます。映画『パシフィック・リム』の非難シェルターのシーンはその良い例。すべては演出次第です。
4. 犠牲者の姿をどう描くか?
破壊の犠牲になった人々の姿を映せば、これ以上のリアリティはありません。でも度の過ぎたリアリティは、人々をそれ以上映画の世界に入り込めなくさせてしまいます。
映画『ウォッチメン』には、原作コミックで9ページに渡って描かれた、ニューヨークを埋め尽くす遺体の山のシーンがありません。それは2001年の同時多発テロ事件で、現実に似たような光景があったことへの配慮からでした。
5. ヒーローは破壊されるその都市を守ろうとしているか?
必死で戦っているのに、敵の圧倒的な攻撃力には歯が立たず、無残に破壊されていく街。自分の非力に打ちのめされる主人公。これぞヒーロー萌えの最重要ポイントです。その挫折から立ち直るからこそ、「頑張れ!」と応援したくなる。さらに次の要素が加わると、その萌え度はマックスに...。
6. 破壊が起きたのは誰かが間違った選択をした結果か?
たとえば主人公が苦しい選択を迫られ、一方を救う決断をする。もう一方はきっと大丈夫だ、何とかもってくれと願いながら...。ところが終わってみると、それは間違った判断だったのです。救えたはずなのに救えなかった何か。主人公の後悔が私たちの共感を誘います。
ただし、これも次のポイントがしっかりできていないと、非常にもったいないことに...。
7. 主人公が苦悩する姿がきちんと描かれているか?
どれほどCGにお金をかけて、インパクトのある破壊シーンを演出しても、その後をグッと引き締める俳優の名演技がなければ台無しです。「ハイ、つぎつぎ~」とばかりに次の展開に移られては、観客が興奮冷めやらぬ気持ちを持っていく場所がありません。
超大作だったはずなのに、何も心に残っていない―そんな映画を思い出してみると、ココが上手にできていないケースはありませんか?
8. 破壊のあと、スケールの大きな希望が描かれているか?
映画の中で街を破壊するのは何のためでしょう? その後、大きな希望に向かって立ち上がる人々を描くためです。ただハデなシーンをつなげて、見た目のいい予告編を作るためではありません...よね?
スーパーヒーローものではこのポイントが特に重要です。一度敗れた彼らが、地球や人類や正義のために力強く立ち上がることで、映画は壮大なフィナーレを迎えます。ただし...
9. その映画は壮大な内容に見合っているか?
CG技術の進歩でどんなに大規模な破壊シーンも可能になったために、最近は人類を救う映画がやたらと増えています。上に書いたプロットの要素はどれもアクション映画の基本中の基本で、それをいかに予定調和にならずに見せられるかが、製作側の腕の見せどころです。
スクリーンで数ヶ月に1回は繰り広げられる人類の危機に観衆が飽きているなら、たまには小さな田舎町の危機とか、1人の人間を救うために街が犠牲になる、なんて話があっても面白いかもしれません。
もちろん、私たちは人類の危機をテーマにした映画も大好きです。だからこそ、その壮大なスケールに合った素晴らしい映画を作ってほしいと、願ってしまうんですよね。
というわけで...
「時間だ。答えを聞こう。」
[io9]
(さんみやゆうな)
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