レザ


クエンティン・タランティーノプレゼンツのカンフー・バイオレンス映画『アイアン・フィスト』が8月3日(土)に公開されます。そこで今回は、ヒップホップグループ「ウータン・クラン」のリーダーであり、本作の監督・主演・音楽を務めたRZAのインタビューをお届けします。

カンフー映画を撮るという長年の夢を実現し、素晴らしい作品を完成させたRZA監督に、カンフー映画にはまったきっかけ、日本の映画・アニメからの影響、さらには夢を実現するためのアドバイスなどを伺ってまいりました!
 


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RZAは伝説的ヒップホップグループ「ウータン・クラン」のリーダーで、プロデューサーとしても活躍しつつ、映画音楽も手がけ、高い評価を集めています。そして、今回『アイアン・フィスト』で念願の映画監督デビューを果たしました。

熱心なカンフーファンとしても知られ、ウータン・クランの「ウータン」もカンフー映画『少林拳対武当拳』からの引用。ウータン・クランのファースト・アルバムのタイトルも『燃えよドラゴン』と『少寺林三十六房』を元ネタにした『燃えよウータン(英語タイトルEnter the Wu-Tang(36 Chambers)』と名付けるほど、RZAはカンフーに熱い男です。もしかすると、ウータン・クランのメンバーが登場するプレイステーション向けのカンフー格闘ゲーム『ウータン』で、知っている方もいるかもしれません。

2003年、『キル・ビル』の音楽を手がける際にクエンティン・タランティーノと知り合い、自ら撮影現場へついていき、タランティーノの映画の撮り方を研究。そこから『アイアン・フィスト』の製作を開始し、紆余曲折を経ながら、約8年の歳月をかけて『アイアン・フィスト』を完成させました。

本作では、先ほど紹介した『少寺林三十六房』で主人公を演じ、『少林拳対武当拳』にも出演した、リュー・チャーフィーとも夢の共演を果たしたRZA。なんとなく、先日ジャッキー・チェンとCMで共演した石田さんと重なる部分があります。

『アイアン・フィスト』では、すべてのシーンからRZAのカンフー愛が溢れ出ています。アクションが素晴らしいだけでなく、筋肉マン的な物理で戦う謎の武術ナイフが飛び出しまくる素敵な鎧なども登場。『片腕カンフー対空とぶギロチン』テイストの、すべてが凄まじい、オーバーキル気味な映画となっています。

そんな作品を完成させたRZA監督の熱い言葉は以下。

――カンフー映画を好きになったきっかけはなんですか?

RZA:俺が小さい時、叔父が毎週末映画館に連れて行ってくれて、そこで3本立てのカンフー映画を毎週のように見てたんだ。10代になってからは、学校をサボって映画館でカンフー映画と日本の時代劇を見るようになった。子供の時に好きになり、インスピレーションを受け、それが今でも残ってるね。

――一番好きなカンフースターは誰ですか?

RZA:ハハハ、そりゃブルース・リーだよ!  ブルース・リーは本物のカンフースターだ。素晴らしい映画俳優でもあり、武道家でもある。しかも、彼の残されている記述から、彼が優れた思想の持ち主だったこともわかる。だから、彼は俺にとって凄く特別なカンフースターなんだ。ナンバーワンだよ。

――子供の頃、日本映画も見ていたとのことですが、その時に一番好きだった作品はなんですか?

RZA:ブルース・リーの映画を見た後、サニー千葉(千葉真一)の『激突! 殺人拳』を見たんだ。サニー千葉の映画は全部見てるよ。『少林寺拳法』、『里見八犬伝』......サニー千葉の映画はどれも素晴らしい。でも、日本映画で一番好きなのは『子連れ狼』シリーズかな。大好きなんだ。

――その時に見ていた時代劇は『アイアン・フィスト』にも影響を与えていますか?

RZA:もちろん。本作に登場する『ジャック・ナイフ』はサムライ的なキャラクターだ。町に一人でやってきて、実は誰かに仕えていて、人を斬る。彼に刀のような武器も与えたのも、サムライのイメージからなんだよ。

俺は沢山のカンフー映画と時代劇を見てきたけど、『アイアン・フィスト』ではその2つのジャンルのイメージを融合させた。時代劇だと、刀の一太刀で相手を倒す。カンフー映画では、何度も殴って蹴って相手を倒す。『アイアン・フィスト』の俺のキャラクター「アイアン・フィスト」は、敵を殴って一撃で倒す、といった具合にね。

――本作からは、『北斗の拳』の影響も強く感じられました。日本のアニメを好きになった理由はなんですか?

RZA:アニメではカンフーよりももっと凄いアクションが可能だ。『北斗の拳』だと、指の一突きで身体が爆発するだろ? 例えあれをカンフー映画でやろうとしても、アニメのようにはできない。

俺が思うに、アニメは『サイボーグ009』などのように......子供の頃、あれはチャンネルの奪い合いをしなきゃならなくて見るのが大変だったんだけど......想像力が凄く一点に集中している。それは、サムライと同じ。一太刀に気が集中しているわけだ。アメリカ人の映画監督である俺は、大好きな日本のアニメから、アクションとストーリーを伝える手段として、それを受け取っているよ。


レザ

RZA演じる「アイアン・フィスト」

――ヒップホップとカンフー映画は、緩急のつき方が似ていると感じるのですが、監督は何かつながりがあると感じていますか?

RZA:70年代にヒップホップを始めた奴らは、カンフー映画を映画館で観てたと思う。グランドマスター・フラッシュ(スクラッチを広めたDJ)のグランドマスター(師範)って名前は、明らかにカンフー映画から取ってるだろう? カンフー映画の音が頭の中に残っていたんだと思う。ブレイクダンスもカンフー映画から動きを取り入れてるしね。

若い時には色んな物から影響を受けるけど、ニューヨークにはヒップホップだけでなく色んな音楽があって、映画といえばマーシャルアーツ映画だったんだよ。だから、あの頃活動を始めたヒップホッパーには、自然とカンフー映画のリズムが刻み込まれているんじゃないかな。

――今回、作品冒頭に流れる曲として、ウータン・クランのデビュー・アルバム『燃えよウータン』から、『Shame on a Nigga』を使っていますが、そこには何か理由があるのでしょうか?

RZA:あれは、オール・ダーティー・バスタード(2004年に他界、以下ODB)の曲なんだ。若い頃、俺はいつもODBと一緒に映画を観に行ってたんだよね。奴はもういないけど、あの曲を映画の最初に使うことで、奴の魂を映画に参加させたかった。自分勝手なことかもしれないけど、俺はODBを愛してるからね。どうしても参加させたかったんだよ。


RZA

ニュージランドの歌う暴れん坊、ラッセル・クロウが演じる「ジャック・ナイフ」

――本作では、監督だけでなく主演も務めていますが、演じる側として一番面白かったシーンはどこですか?

RZA:実は最初、主人公のブラックスミス(アイアン・フィスト)は他の俳優にやらせる予定だったんだ。でも、一番ストーリーを理解してるからということで、プロデューサー達が俺に演じるように主張したから、主演もすることになったんだよ。

演じて一番面白かったシーンは、ブラックスミスが包帯の巻かれた自分の腕を火に入れ、アイアン・フィストを装着するところだね。

実はこのシーン、小道具担当と揉めたんだよ。彼はCGでこのシーンを撮ろうとしたんだけど、俺は腕にフラッシュペーパー(手品に使われる、よく燃える紙)を巻きつけて、目の前で本物の大きな火を作りたかったんだ。かっこ良く見える、いいアイディアだと思ったんだよね(笑)。

――監督と俳優の両方を経験して、どちらがより楽しいと感じていますか?

RZA:一つ言えるのは、出演するほうが楽だということ。役者は大変な仕事だけど、監督はもっと大変だ。本当にね。監督は頭の中の想像を形にしなければならない。そこには大きな達成感があるけど......そうだな......沢山の気が必要になるんだ。だから監督の方が大変だよ。

――今回出演するにあたって、特別なトレーニングは行ったのでしょうか?

RZA:武術指導のコーリー・ユンが、洪家拳の使い手を連れてきてくれたんだ。俺は彼を『師傅(師匠)』とだけ呼んでた(笑)。彼は『少寺林三十六房』のラウ・カーリョン監督と同門で、俺は虎鶴双形拳のトレーニングを受けたよ。


リック・ユーン

リック・ユーン演じる「Xブレイド」

――次の監督作品はもう考えていますか?

RZA:沢山映画を撮ろうと思ってる。なるべく毎回違う映画にすべきだと考えてるんだ。もちろんアクション映画が大好きだし、今はアクションなテンションだから、アクション映画はもっと作るだろうけどね。でも、全く別のものも考えていて、例えばコメディとか感動モノもいいかもしれない。映画監督になるために、沢山の偉大な映画監督から学んだしね。

俺はいろんなジャンルの映画が好きなんだ。もちろんカンフー映画が最高に好きだけど、その次に好きなのはゴジラ映画で、西部劇やコメディ、ラブ・ストーリーも好きだ。俺は映画好きなミュージシャンだから、自分の映画作品で、その特性を発揮する機会を常に探してる。これは、自分の想像を実現する芸術的な挑戦とも言えるね。

――それでは最後に、今回の映画で長年の夢を実現し、カンフー映画の監督となったRZAさんから、夢を追いかける人達へむけて、アドバイスをお願いします!

RZA夢があるなら、まず決断力を持つべきだ。そして、夢は頭の中ではすぐに生まれるが、現実に産み出されるには時間がかかるということを忘れてはいけない。ずっと夢を持ち続けながら、種が花になるように、夢が成長するまで忍耐強く待つんだ


自分の夢について改めて考えたくなる、素敵な言葉をいただけました(しかも、英語だとこの部分は韻踏んでたんですよ!)。そして、『Shame on a Nigga』を使った理由が、亡くなったオール・ダーティ・バスタードのためだったなんて......。これが本当の男の友情ですね。

RZA監督の次回作も非常に楽しみ。彼のカンフー映画をもっと見たいという気持ちはあるものの、別ジャンルの物も見たい、ということで、ぜひ新ハリウッド版『ゴジラ』の続編は彼に監督してほしいです!

『アイアン・フィスト』は8月3日(土)、渋谷シネクイントほか全国ロードショー。

(C)2012 Universal Pictures


映画『アイアン・フィスト』公式サイト

(傭兵ペンギン)

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