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ボードゲームを500タイトル以上作り出したデザイナーが、アイデアを生む秘訣を語る! ライナー・クニツィアにインタビュー【後編】

2013/04/21 21:06 投稿

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クニツィアインタビュー後編1


今回は、傑作ボードゲームを生み出し続けているドイツの天才ボードゲームデザイナーライナー・クニツィアさんへのインタビューの後編。

後編では、クニツィアさんに、ゲームデザインのプロセスから、アイデアを生む秘訣を語ってもらい、さらには日本のファンに向けてのメッセージまで頂きました。それでは早速ご覧ください。
 


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■ライナー・クニツィア

先ず最初に、ライナー・クニツィアさんをご存じない方のために簡単な解説を。ライナー・クニツィアさんは、数学で博士号を持つドイツ出身のボードゲームデザイナー。1990年にデビューして以来、500タイトル以上のボードゲームを世に送り出した多作なデザイナーとして知られています(詳しくはインタビュー前編を御覧ください)。


■ゲームデザインのプロセス

――ゲームデザインのプロセスについてお伺いします。デザインで最初にとりかかるのはどの部分ですか?

クニツィア:良い質問ですね。私は全てのゲームが何か新しいものを持つようにしています。デザイナーとして、既に存在するものは作りたくはありません。そして私は自らの経験から、ゲームデザインは科学ではないということを知りました。

チェックリストのようなものに従ってゲームを作れば、ヒット作が生まれるなんてことは無いんです。同じ曲がり角から始めて、同じ道を越えながら進むと、そこには全く同じ終着点があり、新しいものは無いでしょう。ゲームデザインを始める最高のスタート地点は"新しいもの"なのです。

新しいアイデア、テクノロジー、製造方法、映画、キャラクター、メカニズム...例えば競りをするゲーム『ラー』では、ただ数字を競るのではなくて、未来での力を競るといったように"新しいもの"がありました。

そういった"新しいもの"からスタートして、革新的なゲームを創り出すのです。ヘミングウェイの言葉を借りると『人生について書きたいなら、まず生きなくてはならない』ということです。

それは、ゲームにも言えることで、良いゲームを作りたいのであれば、周りで起こっていることに気を配る必要があります。なぜなら、ゲームは人々が興味をもつ事柄と関連性を持つ必要があります。そして、時代が変わればゲームも共に変わらなければなりません。ゲームは我々の時代を写す鏡なのです

――ゲームには常に新しいものが必要だとのことですが、別のデザイナーの作品と比べることはあるのですか?

クニツィア:比べませんね。まず、私は他の人のゲームで遊ぶ時間が殆どありません。しかし、それは大きな利点でもあります。なぜなら、ゲームをデザインする時には、引き分けになった時はどう解決しようかとか、順番をどうしようかとか、沢山の決断を要求されるのですが、それらはすべて、良いものであると同時に新しいものである必要があるからです。

もし我々の脳が答えを知っていたら、『これが正しいに違いない』と、1つの答えから抜け出せなくなってしまします。答えを知らなければ、完全に自由になり、新しい答えにたどり着くことができるでしょう。私は他の人のゲームを知らず、答えも知らないので、影響を受けずに新しい答えを見つけられるのです。

もちろん、私の身近にいる15人のテストプレイヤー達は全てのゲームを知っています。ですから、たまたま他のゲームを意図せずしてアイデアが重なってしまった場合は、修正します。他人の作ったものに似たものを出版してから「知らなかった」では済まされませんからね。

――ゲームのデザインの過程で最も時間のかかる部分はどこですか?

クニツィア:それはテストプレイですね。私の経験からすれば、ゲームデザイナーはどれだけ遊ぶ楽しさを机に座って計算することはできません。頭のなかではうまくいっていても、現実にはそうはいかないということもあるのです。

だからこそ、子供と遊んで彼らが楽しめるかどうか見て、彼らもう一度遊びたいかを聞いて、そこで『ノー』と言われたら、それは良いゲームではないということになります。ちなみに、大人の場合は、同じ質問をして『うーん、もう一回遊んでみようかな』と言われたらダメですね(笑)

テストプレイは経験を与えてくれます。そしてデザイナーは、誰かにテストプレイを頼むのではなく ゲームの良い部分を知るために、なるべく自身が参加したほうがいいと思います。そのため我々は毎日テストプレイをしています。



■アイデアを生む秘訣

――既に500を超える数のゲームをデザインされていますが、それらゲームのアイデアはどこから生まれてきたのですか?

クニツィア:常に新しいものとインスピレーションを探しています。何も書かれていない紙切れに向かって座り、何かを作らなきゃと作業を始めるのは非常に難しいです。私は1つのゲームを作っている中で、そのゲームでは使えないけれども、別のゲームでは使えそうなアイデアが思い浮かぶことが多いです。そしてそれをノートに書いておきます。

それが別の新しいゲームの始まりになったりするのです。ゲームデザインの1つのアイデアがまた別のアイデアを生み、雪崩のように続いていきます。だからアイデアが尽きることは無いのです

目を開けてしっかり回りを見ていれば、ゲームのためのアイデアを思いつくのはそんなに時間がかかりません。しかし、それらのアイデアを製品化して、市場に適した形にする部分には非常に時間がかかり、多くの場合、何ヶ月にも及びます。

そのため、アイデアを持っていることが時には重荷になることもあります。そこから沢山の仕事が始まりますからね(笑)。



クニツィアインタビュー後編2


■ボードゲームの魅力

――ちょっと話題を変えてお伺いします。テレビ、映画、映画、デジタルゲームなどなど、世の中には沢山のエンターテイメントがありますが、その中でもボードゲームが優れている点はなんだと思いますか?

クニツィア:ボードゲームを含むゲームというもの全体が、他の余暇の過ごし方と競い合っている状態だと思います。主な余暇の過ごし方として、旅行、スポーツ、読書などがあります。もちろんゲームもそのうちの1つです。我々はそうした人々の余暇の時間とそこにかけるお金の両方を取り合っています。その中でボードゲームが有利な点は、人々が集まって一緒に行動的になれるというところですね。

例えば映画はスクリーンを眺め、その後に映画について語り合うくらいですが、ボードゲームでは、新しい世界を経験し、新しいことに挑戦します。そして、異なる世代が一堂に会して、一緒に様々なことを試したり、失敗を避けようとしたりしていきます。私はこれら要素は、ボードゲーム特有のものだと思います。

そして我々はこれからの世代のために、面白いゲームを作り、成功させて行かなければなりません。なぜなら人々は一緒にテーブルを囲むことが好きですからね。一緒にごはんを食べるように、パーティーゲームも遊ぶのです。



■日本のファンに向けて

――それでは最後に、日本のファンに向けて一言お願い致します。

クニツィア:日本のボードゲーム・プレイヤーの皆さんが私のゲームを好きでいてくれているのは大変ありがたいことです。ファンの皆さんに沢山の幸せが訪れることを願っています。我々のゲームで、遊んでいる間、幸運に恵まれ、そこにいる全員が勝てますように。よいゲームは、そこで1番になった人だけが勝者なのではなく、参加したすべての人が勝者なのです。遊ぶ事自体が勝利なのです。

そして最後に一言、このインタビューが出来たのもメビウスゲームズが私を日本に招いてくれたからだということを改めて伝えておきたいです。こうしたインタビューを受け、多くのファンに会うことが出来たのは大変素晴らしいことです。そしてそれは、すべてメビウスゲームズが20周年記念のイベントに呼んでくれたからこそなので、彼らにはとても感謝しています。

メビウスゲームズが日本のボードゲーム産業にもたらした功績は大きく、ボードゲームに関わる全ての人を助けてくれています。遊ぶ人が増えれば、ゲーム会社はお金を持てるようになり、その結果、遊ぶ人は良いゲームで遊べるようになります。大変素晴らしいことですよ。

――素晴らしいお話、ありがとうございました。

クニツィア:ありがとうございました。興味を持ってくれて光栄です。



クニツィアさんがアイデアを生み出す秘訣がわかりましたが...方法はわかっても、真似できそうはありません。やっぱりクニツィアさんはスゴイ人だ! そして、「良いゲームは遊ぶ事自体が勝利」という言葉は非常に心に響きました。確かに、面白いゲームは勝てなくったって、面白いですよね。ゲームで遊ぶ時は、勝てなくても楽しめるように遊ぶことを改めて肝に銘じました。

クニツィアさんは、非常に気さくで、優しさのオーラが全身から溢れ出ているかのうような人物でした。ボードゲームファンとして、クニツィアさんと直接お話できるのは大変名誉なことでした。クニツィアさんはもちろん、インタビューのきっかけを作ってくれた、メビウスゲームズの関係者の皆様、ありがとうございました。

このインタビューの翌日、クニツィアさんは京都での観光を楽しまれたとのこと。日本の観光で刺激を受けて、そこから新しいゲームのアイデアが生まれたりしたかもしれませんね...! とにかく、ライナー・クニツィアさんの今後の活躍に期待しています!


メビウスゲームズ
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(傭兵ペンギン)

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