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ドイツの天才ゲームデザイナーがボードゲームの未来を語る! ライナー・クニツィアにインタビュー【前編】

2013/04/14 21:04 投稿

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クニツィアインタビュー前編1


最近グッと人口が増え、ついに漫画喫茶でも遊べる場所が出てきたボードゲーム。今回は、昨年に引き続き、ボードゲームをデザインしている人にインタビューをしてみました。今回のインタビューの相手は、数々の名作を作り出したドイツの天才ボードゲームデザイナーライナー・クニツィアさん。

まずその前編となる今回は、クニツィアさんに、デザイナーになったきっかけから、ボードゲーム産業の現状、そして未来を語って頂きました。それでは早速ご覧ください。
 


【大きな画像や動画はこちら】

 
■ライナー・クニツィア

先ず最初に、ライナー・クニツィアさんをご存じない方のために簡単な解説を。ライナー・クニツィアさんは、数学で博士号を持つドイツ出身のボードゲームデザイナー。1990年にデビューして以来、500タイトル以上のボードゲームを世に送り出した多作なデザイナーとして知られています。

代表作は、『ラー』、『モダンアート』、『指輪物語』など。2008年には『ケルト(ケルティス)』でドイツゲーム大賞を受賞。『ラー』や『サムライ』などは、スマートフォン向けのアプリとしても発売されており、そちらの方でご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

その作品の多くは、プレイヤーが競りをするゲームで、そこでは「クニツィア・ジレンマ」とも呼ばれる、どこをとってもメリット・デメリットがあるたくさんの悩ましい選択肢が発生するようなデザインになっていることが、ボードゲーマーの間では有名です。

今回クニツィアさんは、東京・水道橋にあるボードゲーム専門店のメビウスゲームズの創業20周年記念パーティに参加するために来日。サイン会・講演会といったイベントの翌日、お忙しいにもかかわらず、快くインタビューに応じて頂きました(講演会の映像はこちらこちらで)。


■イベントについて

――昨日のお話をお伺いします。昨日の20周年記念のイベントはいかがでしたが?

ライナー・クニツィア(以下クニツィア):「人々の熱意に圧倒されましたね。とても多くの人がメビウスゲームズのお店に来ていて、サイン会は2時間半やりました。日本の方が私に大きな興味を持ってくれて、メビウスゲームズの20周年記念のイベントが成功したのは非常に嬉しかったです

――お店に長蛇の列ができているとTwitterで見かけたのですが、実際は何人くらい来ていたんですか?

クニツィア:だいたい200人ですね。200の人のボードゲームにサインをしました。

――200人...! それは大変でしたね。

クニツィア:人に会うのは面白いので、いいことですよ。



■最初に作ったボードゲームとデザイナーになったきっかけ

――それでは続けて、クニツィアさんについてお伺いします。ゲームのデザインを始めたのはいつでしたか?

クニツィア6歳の時に始めました。ゲームが大好きだけど、小さな町で生まれたのでゲーム屋さんは1つしかなく、ゲームの種類も沢山はなくて、お金も持っていたわけではないので、ゲームを自分で作ったのです。

――最初に作ったゲームはなんでしたか?

クニツィア:その時に作ったゲームには名前はなく、発売もされていません。道、橋、川がある大きなボードに、2人のプレイヤーがそれぞれ城と騎士を持ち、沢山のダイスを振って騎士を戦わせ、相手の城を奪うことを目指すゲームです。

――そのゲームは友達と遊んだのですか?

クニツィア:そうですね。楽しく遊ぶことができましたが、非常に曖昧で、思いやりを持つことが必要なゲームだったので、出版はされていません(笑)。

――プロのゲームデザイナーになろうと思ったきっかけはなんですか?

クニツィア:私には3種類の人生がありました。1つは大学。私は教壇に立つことも研究することも楽しみました。その後は、銀行で働き始めたんですよ。大きなプロジェクトに関わり、多くの人と共にビジネスを成功させるのは楽しかったですね。

しかし、私の愛は常にゲームに向かっていました。そして何本かのゲームを出版した後、『モダンアート』などのゲームが成功して、ボードゲームをビジネスとして知ることができました。そしてプロになるのですが、本当に時間が無かったということが最大の理由ですね。

その頃は300人の従業員がいる大きな会社の経営もしていたので、沢山仕事がありました。だから時間がなかったんです。私は物事を半分ずつではなく、1つに集中して取り組みたいタイプなので、仕事をゲームデザインに絞ることにしました。そうして、今もまだ忙しいわけです(笑)。



インタビュー


■ゲームデザイナーの休日

――昨日の講演で、休日は無いとおっしゃっていましたが、それではいつ休むのですか?

クニツィア:ゲームデザイナーは机に座って、ゲームのことを考えるだけではなく、様々なことをします。例えば今のように日本に来て、インタビューを受けたりしていますが、これは仕事というよりは休日ですね。

人は休日に人に会ったり、新しいものを見に行ったりしますよね。ゲームのビジネスは非常に国際的で、私は世界中に知り合いがいます。そのため外国に行くと、人に会って、その国の文化や人々を知ることができます。私の休日は私の職業の中に組み込まれているというわけです。

普通の人は沢山働くのが嫌で、休日を楽しみにしているかもしれませんが、私は仕事が大好きで、もっと働きたいので休日は要りません。もちろん、クリスマスの時期には仕事をしないで数日休みますが、私の人生は豊かで、休日は仕事の中にあるので、大きな休みは取らないのです。

普通の人と同じように、本を読んだり、スポーツをしたりしてリラックスする時はあります。でも、3週間休みをとって海岸に遊びに行ったりはしません。ゲームもしたいですしね(笑)。

――なるほど。私もアナログゲームの翻訳を仕事にしていますが、ゲームを遊ぶのが大好きで、もはやそれは休日なのかもしれませんね(笑)

クニツィア:そのとおりですよ。



■ボードゲームの現在と未来

――それでは今度はちょっと話題を変えて...最近のボードゲーム産業をどう思われますか?

クニツィア非常に国際的になって来ましたね。非常に大きな会社が、世界中にむけて製品を作っています。その一方で、非常に少ない生産数でニッチなプレイヤーに向けて製品を作る会社も現れてきています

そうして、凄まじい数の新製品が登場しています。例えばドイツでは毎年500もの新タイトルが発表されていますが、その中で際立った成功を収めるのはかなりの難関です。

しかし、我々ボードゲーム業界は、音楽業界や出版業界のようにダウンロード販売の登場によってに大きな変化がもたらされたりはしていないので、幸運な状況にあるとも言えます。特に出版業界ではこの革命が、以前の音楽業界のように、非常に大きな挑戦を企業に強いています。

このような変化がボードゲーム業界にすぐに訪れることは無いと思いますが、きっといつかやって来ることでしょう。既に電子機器がボードゲームに入り込み始めています。物としての形は失ってはいませんが、電子機器と繋がるようなものもあります。

これは大きな会社にとっては、非常に大きな挑戦となることでしょう。しかし、小さな会社は常にニッチな需要を見つけられることでしょう。これら変化は素早く、沢山の競争を生みます。出版する側は、簡単に失敗してしまう状況なので、常に現状の把握に努め、市場を見極める必要があるでしょう

――続けて未来について聞きたいと思います。次の世代のボードゲームはどうなると思われますか?

クニツィアそれは見通しの良い道ではありません。なぜなら今、沢山の小さなメーカーが、少ない生産数で、ゲームを生み出すことが出来るようになり多様性が生まれてきていきます。しかし、大きな世界市場に目を向けると、電子機器がより一層重要になっています。

とはいえ、電子機器がボードゲームを飲み込んではいません。物体としてのダイスが完全に消えて、スクリーン上でダイスを振ることになるとは思えません。スクリーン上でダイスを振っても楽しく無いですからね。

おそらくダイスは消えないでしょう。しかしながら、電子機器と繋がったダイスが振られ、その出た目の合計がスクリーンに表示されるなんていう事はあるかもしれません。ボードゲームに使うの多くの物は、それ自体としての形を失わないけれども、電子機器と繋がりをもつということになると思います。

これは洗濯機と同じです。昔の洗濯機は使うのが大変でしたが、今のものは内蔵された様々な電子機器で使いやすくなっています。しかし、それが洗うということに変化はありません。時計にだって電子機器が入っていますが、時間を指し示すという主な機能は変わっていませんよね。

それはボードゲームにも言えることでしょう。しかし、電子機器が入ってきても、それらがメインになることは無いと思います。スクリーンの前に座るのではなく、ボードがあってその周りに座って遊ぶことでしょう。でも、そこにはスピーカーが置かれているかもしれませんね。

本当に沢山の可能性があります。電子機器はボードゲームをより豊かにすると思いますが、だからといって、ゲームの基本的な部分を奪ったりはしないと思います。これが私の思うボードゲームの未来です。

そして、この未来が、今のある2つの世代をボードゲームという1つの場所に集めるかもしれません。今は、古い人達はボードゲームで遊ぶ一方で、若い人たちはデジタルゲームで遊ぶことが多いと思います。

私のゲーム『誰だったでしょう?(Whoowasit)』で例えると、あれはスピーカーつきの箱を使うゲームで、アナログな部分もあるし電子機器を使うところもあるので、先ほど上げたような異なる世代が一緒に楽しむことができるようになっています。これが私の思う未来です。この方向だけだとは思ってはいませんが、こういった形になっていく可能性が高いと思います。



クニツィアさんは、ボードやダイスと電子機器が組み合わさったボードゲームを未来像として挙げていました。確かに現在、タッチパネルで操作するボードゲームや、Bluetoothで接続された電子ダイスなどが登場しています。

これからはアナログとデジタルのいいところを両方兼ね備えた面白いゲームがこれからもっと登場していくのかも。是非とも、クニツィアさんにもそういったゲームをたくさんデザインしていただきたいですね!

個人的には、ミニチュアゲーマーとして、クニツィアさんが最初にデザインしたゲームがかなりミニチュアゲームっぽかったのも大変興味深かったですね。いつか発展版を発売してくれたりしないかなぁ...?

クニツィアさんへのインタビューはまだまだ続きます。後編では、ゲームデザインのプロセスやアイデアを生む方法などについて語ってくれています。お楽しみに!


メビウスゲームズ
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(傭兵ペンギン)

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