【No.34】加速する汚染水の増加で、海洋放出が現実味を帯びる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
木野龍逸の「ニッポン・リークス」
2015/9/30(No.034)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[目次]
1.東電福島第一原発事故トピック
加速する汚染水の増加に打つ手はあるのか?
2.編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.トピック
加速する汚染水の増加に打つ手はあるのか?
状況説明を拒否する東電
<日量520m3も汚染水が増える>
東電は、福島第一原発の建屋地下に、毎日300~350m3の地下水が流れ込み、汚染水の量を増やしていると、長い間説明してきた。ところが、東電が毎週公表している汚染水週報に記載されている汚染水の総量から計算すると、まったく違う数字が出てきた。
2014年9月23日から15年9月26日までに、汚染水の総量は19万3100m3増えている。これを369日で割ると、なんと日量520m3も、汚染水が増えていることになるのだ。東電の説明と、200m3近くも違う。この増加量は、事故直後から地下水が日量400m3ほど建屋に流入していたことと比べても、3割ほど多い。
なぜこのような増え方をするのか、東電は520m3についてどのように認識しているのかについて東電会見で質問すると、呆れた答えが帰ってきた。白井功原子力立地本部長代理はまず、520m3増えているかどうかについて「そちらは私のほうで計算しているわけではありませんのでお答えしかねます」と、回答を拒否した。
東電は9月28日の会見で、汚染水タンクの建設状況を示すため、過去の実績をベースにした汚染水の保有量推移を示した資料を配付した(http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/l150928_13-j.pdf ▽69ページ)。当然のことだけども、グラフは日々の増加量をもとに計算をしている。それを確認しただけなのに「確認する」として回答しなかったのである。
日量350m3という地下水についてはすらすら説明するのである。グラフにもなっている重要な増加量を知らないわけがない。会見中に確認して回答するよう要求したが、結局、回答はなかった。同じ質問は2週間前にもしている。こうなると、回答拒否としか思えなかった。
ではなぜ、日々520m3もの増加になっているのだろうか。これについても、東電は具体的な理由を把握しているのに、説明を拒否した。
増えている原因は、原子力規制庁が把握していた。規制庁福島第一原発事故対策室の金城室長は電話取材に対し、ウエルポイントからのくみ上げ量が、雨が多いときには380m3にもなっていると話したのだ。毎日の量は違うが、規制庁は現場の担当職員が直接、くみ上げ量を確認しているのだという。金城室長は、なぜ東電が公表しないのかわからないと述べた。
ウエルポイントは、建屋と護岸との間に作った地下水くみ上げ用の井戸だ。全部で28本が設置されている(http://www.tepco.co.jp/cc/press/2013/1229962_5117.html)。2013年7月に東電が、汚染地下水が海に流出していることを認めたとき、流出を抑えるために護岸の土壌改良工事をした。その後は鋼管矢板による流出防止策を進めている。
とはいえ、地下水を止めると、貯まった地下水が地上にあふれてくることになる。実際、流れを止めた後は地下水位が上昇し、ほとんど地表面まできていた。このため東電はウエルポイントを設置して地下水をくみ上げ、あふれるのを防ごうとしたのだった。くみ上げた地下水は汚染されているため、そのまま建屋に戻すようにした。
このくみ上げ量を、東電はずっと、日量約50m3だと説明してきた。前述の資料にも50m3と記載されている(護岸エリアの地下水の建屋への移送量)。ところが実際には、変動はあるものの、多い日には400m3近くもくみ上げていたのだった。海への流出を防ぐための代償が、汚染水の急激な増加となって表面化していたのだった。
この記事の続きを読む
ポイントで購入して読む
※ご購入後のキャンセルはできません。 支払い時期と提供時期はこちら
- ログインしてください
購入に関するご注意
- ニコニコの動作環境を満たした端末でご視聴ください。
- ニコニコチャンネル利用規約に同意の上ご購入ください。
2015/07/31(金) 06:38 中長期ロードマップ改訂で、福島第一の将来像はさらに不透明に
2015/11/02(月) 03:08 【No.35】汚染水情報始末記〜「信用できないから情報を出せというのか」という東電の勘違い
コメント
コメントを書く